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『静江と同級生…』
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11月17日 15:03
静江「なんだか今日は暑いわね~」
11月も中旬だというのに、ここ数日暑さがぶり返していた。
『笑店街 ジャイアント高田馬場』この一画にある「磯八鮮魚店」に静江の姿があった。今日の晩のおかずを探しているようだ。
静江「えーっと…やっぱり秋刀魚…んーサワラも美味しいし…ブリにハマチに…」
全く決まらない静江は、もういっそのこと魚はやめて『冷やし中華』でいいか⁉︎…と半ば投げやりになっていた。その時、何氣なく道路の反対側を見たら…
静江「あら?あれって…」
どうやら見知った顔を見つけたようで、横断歩道を渡りその女性に近寄って行った。
静江「すーみちゃん」…
同日 14:46
「もう好子ったら急なんだから…」
武藤好子の幼馴染の『真中すみれ』が、不満そうな顔で珈琲を飲んでいた。
十数分前に好子から「ごめん!今日川田選手の握手会って忘れてた!今から向かわないと間に合いなからまたね」と連絡が入った。
すみれ「ほんとあの子のプロレス好きにも、まいっちゃうわよね」
15時にここ『珈琲小日向』でお茶をする為に待ち合わせをしていた。
すみれ「せっかく笑店街まで来たんだし、夕飯の買い物でもして帰るかな…」
珈琲と一緒に頼んだマロンモンブランを食べ終わると、すぐさま店を後にした。
すみれは迷うことなくある店を目指していた。
珈琲店から歩くこと数分で『肉屋十兵衛』着いた。
すみれのお目当てはここの名物『ジャイアントコロッケ』
そのコロッケは16文キックにちなんで、大きさが40センチ弱あった。
すみれ「ラッキー!今日はそんなにならんでないわね」
そう言って10人ほどの列の最後尾に並んだ。
4、5分で2人ほど減り少し前に進んだ時、後ろから肩を叩かれた。
??「すーみちゃん」
振り返ると、同じ年代の女性が1人居た」
??「私のこと覚えてる?同じ3組だった静江」
すみれ(誰⁉︎誰よ…静江って確か数人居たわよね…顔が全く出てこないわ…小?中?高?どの静江よ。同じ3組って選択肢が12年あるじゃない)
すみれ「…あ…お、お久しぶりね…ど、どれくらいぶりかしら」
静江「同窓会以来だから…15年くらいかしら。すみちゃん変わらないわね~」
当初「ごめんなさい、どちらのシズエさんだったかしら?」と訊ねるつもりだったが、あまりにも相手が親しそうに話し掛けて来るので、切り出せないでいた。
すみれ(こうなったら当たり障りのない話しでこの場をやり切るわ)
すみれ「…静江さんも変わらないわね」
静江「ちょっと、静江でいいわよ。で、なんの列に並んでるわけ?」
すみれ「え、知らないの?ここのジャイアントコロッケ。有名よ」
静江「あら、ちょうどいいわね。晩御飯はそれにしよっと」
すみれ「普通のコロッケの6、7個分あるけど大丈夫?あと、ここのオリジナルソースもお勧めよ」
静江「今日のおかずが全然決まらなくて困ってたのよのね。テレビとかで、旦那に何食べたい?って訊くと、なんでもいいよ…とかってあるじゃない?でもね、うちの旦那ってちょっと変わってるから、インドネシアの郷土料理の『ルンダン』とか言って来るのよ。だから訊かなきゃよかったって思うわけ…」
すみれは並んでる間、当たり障りの無い話しに誘導する為に、自らも積極的に話しをした。時間が経過しても記憶は蘇らず、どの静江なのか謎のままである。
静江が列に加わってから、25分ほどでコロッケを買えた。
お勧めのオリジナルソースも2人で購入していた。
すみれは、思い出せてない事を悟られてないことに安堵していた。
静江「6、7個分って言ってたけど、実際に見るととんでもないわねこれ」
すみれ「味は保証するわよ。もちろんここのお肉も美味しいから食べてみてね。それじゃあわたしはこ…」
静江「この後時間ある?連絡先も交換したいし、ちょっとお茶しましょうよ?…ちょうどあそこに喫茶店あるし」
すみれ(魚魚!これで逃げ切れると思ったのに⁉︎うそーん!)
すみれ「え、あ、さっきそこの店で珈琲飲んじゃったし…」
静江「じゃあ紅茶にしましょ。ね、ね、決まり」
すみれ(もう泣きたいわ)
静江の圧力に屈するすみれであった。
『珈琲小日向』で1時間ほど話しても、奇跡的になんの不都合も起きなかった。
すみれ本人も「女ってこんな状況でも普通に話しって出来るのね」と不思議に感じていた。
静江「じゃあすみちゃんまた今度ね」
すみれ「こっちからも連絡するわね。じゃあ」
次にまた会う約束をし2人はそこで別れた。
それから月に2、3度の頻度で、買い物やお茶をするようになっていった。
しかし一月…二月とどれだけ時間が経とうとも、一向に記憶は戻らない。
静江の不思議な魅力に、すみれ自身「わからなくても別にもういいか」とあまり考えもしなくなっていた。
…あっという間に月日は流れ、静江と再開してから半年ほど経ったある日…一本のメールから事態は急変するのであった。
静江
こんにちは。高田小の同窓会の案内来てる?私は行くけど、すみちゃんどうする?」
すみれ「……」
慌てたように携帯を探すすみれ。『よく使う項目』から静江をタップする。
プルルルル🎵プルルルル🎵プル…
静江「もしもしすみちゃん?同窓会どうする?」
すみれ「その事なんだけど…落ち着いて聴いてね」
静江「え?どうしたの?」
すみれ「私って高田小卒じゃないのよ」
静江「だってすみちゃんよね?隅田香織さんでしょ?」
すみれ「確かにあだ名は『すみ』だけど、名前のすみれの『すみ』よ。わたし真中す・み・れ」
静江「え?すみじゃなくて、真ん中?」
すみれ「それはよくわからないけどとにかく人違いなのよ」
静江「…よく考えたらそうかもって時はあったわね」
すみれ「まー私も否めないけども」
静江「まーそれはいいんじゃない。それより同窓会どうする?」
すみれ(こちとらびつくりぎょうてんなのに、ずいぶんさらっと流すわね)
すみれ「卒業生じゃないのに行くわけないでしょ?」
静江「なんか予定より参加人数少ないらしくて。人数合わせで来てよ」
すみれ「本氣で言ってんの?」
静江「知ってるようで知らない2人がここまで話して来たんだからなんとかなるわよ。適当に喋ってればいいわよ。費用はこっち持ちでいいから」
すみれ「確かにそうかもしれないけど…でもやっぱりね~」
静江「ね、ね。決まりで」
またもや圧力に屈するすみれであった。
それから数週間後の同窓会当日
すみれが自己紹介した時に、ここに来るまでの経緯を話したところ、
周りが一斉に「やっぱりザ・静江だね!」と大爆笑となった。
学生時代からそのような片鱗があったようである。
「すみれさんと香緒って似てないよな…」と話してたところに、
遅れていた隅田香織氏本人が登場。2度目の大爆笑となった。
同級生「やっぱり全然にてねーよ」
同級生「静江テキトー」
香織「なになにどしたの?」
状況を把握出来ずに目をぱち栗させていた。
同級生「静江がさー…」
香織「なにそれ~…」
話しを聴いた香織とすみれが顔を見合わせた瞬間、お互いに口を塞いで笑いを堪えた。
すみれ「静江、変わらないわねーって言ってたんですよ。私も言ったけど」
お酒も入りすみれ本人も大いに楽しんだ。会は大いに盛り上がったとのことだっだ。
あれから(再会?)1年以上経った今でも、お互いに連絡を取り合っている。
静江
すみちゃん明日笑店街どう?
すみれ
じゃいつものとこで12:00ね。
静江「なんだか今日は暑いわね~」
11月も中旬だというのに、ここ数日暑さがぶり返していた。
『笑店街 ジャイアント高田馬場』この一画にある「磯八鮮魚店」に静江の姿があった。今日の晩のおかずを探しているようだ。
静江「えーっと…やっぱり秋刀魚…んーサワラも美味しいし…ブリにハマチに…」
全く決まらない静江は、もういっそのこと魚はやめて『冷やし中華』でいいか⁉︎…と半ば投げやりになっていた。その時、何氣なく道路の反対側を見たら…
静江「あら?あれって…」
どうやら見知った顔を見つけたようで、横断歩道を渡りその女性に近寄って行った。
静江「すーみちゃん」…
同日 14:46
「もう好子ったら急なんだから…」
武藤好子の幼馴染の『真中すみれ』が、不満そうな顔で珈琲を飲んでいた。
十数分前に好子から「ごめん!今日川田選手の握手会って忘れてた!今から向かわないと間に合いなからまたね」と連絡が入った。
すみれ「ほんとあの子のプロレス好きにも、まいっちゃうわよね」
15時にここ『珈琲小日向』でお茶をする為に待ち合わせをしていた。
すみれ「せっかく笑店街まで来たんだし、夕飯の買い物でもして帰るかな…」
珈琲と一緒に頼んだマロンモンブランを食べ終わると、すぐさま店を後にした。
すみれは迷うことなくある店を目指していた。
珈琲店から歩くこと数分で『肉屋十兵衛』着いた。
すみれのお目当てはここの名物『ジャイアントコロッケ』
そのコロッケは16文キックにちなんで、大きさが40センチ弱あった。
すみれ「ラッキー!今日はそんなにならんでないわね」
そう言って10人ほどの列の最後尾に並んだ。
4、5分で2人ほど減り少し前に進んだ時、後ろから肩を叩かれた。
??「すーみちゃん」
振り返ると、同じ年代の女性が1人居た」
??「私のこと覚えてる?同じ3組だった静江」
すみれ(誰⁉︎誰よ…静江って確か数人居たわよね…顔が全く出てこないわ…小?中?高?どの静江よ。同じ3組って選択肢が12年あるじゃない)
すみれ「…あ…お、お久しぶりね…ど、どれくらいぶりかしら」
静江「同窓会以来だから…15年くらいかしら。すみちゃん変わらないわね~」
当初「ごめんなさい、どちらのシズエさんだったかしら?」と訊ねるつもりだったが、あまりにも相手が親しそうに話し掛けて来るので、切り出せないでいた。
すみれ(こうなったら当たり障りのない話しでこの場をやり切るわ)
すみれ「…静江さんも変わらないわね」
静江「ちょっと、静江でいいわよ。で、なんの列に並んでるわけ?」
すみれ「え、知らないの?ここのジャイアントコロッケ。有名よ」
静江「あら、ちょうどいいわね。晩御飯はそれにしよっと」
すみれ「普通のコロッケの6、7個分あるけど大丈夫?あと、ここのオリジナルソースもお勧めよ」
静江「今日のおかずが全然決まらなくて困ってたのよのね。テレビとかで、旦那に何食べたい?って訊くと、なんでもいいよ…とかってあるじゃない?でもね、うちの旦那ってちょっと変わってるから、インドネシアの郷土料理の『ルンダン』とか言って来るのよ。だから訊かなきゃよかったって思うわけ…」
すみれは並んでる間、当たり障りの無い話しに誘導する為に、自らも積極的に話しをした。時間が経過しても記憶は蘇らず、どの静江なのか謎のままである。
静江が列に加わってから、25分ほどでコロッケを買えた。
お勧めのオリジナルソースも2人で購入していた。
すみれは、思い出せてない事を悟られてないことに安堵していた。
静江「6、7個分って言ってたけど、実際に見るととんでもないわねこれ」
すみれ「味は保証するわよ。もちろんここのお肉も美味しいから食べてみてね。それじゃあわたしはこ…」
静江「この後時間ある?連絡先も交換したいし、ちょっとお茶しましょうよ?…ちょうどあそこに喫茶店あるし」
すみれ(魚魚!これで逃げ切れると思ったのに⁉︎うそーん!)
すみれ「え、あ、さっきそこの店で珈琲飲んじゃったし…」
静江「じゃあ紅茶にしましょ。ね、ね、決まり」
すみれ(もう泣きたいわ)
静江の圧力に屈するすみれであった。
『珈琲小日向』で1時間ほど話しても、奇跡的になんの不都合も起きなかった。
すみれ本人も「女ってこんな状況でも普通に話しって出来るのね」と不思議に感じていた。
静江「じゃあすみちゃんまた今度ね」
すみれ「こっちからも連絡するわね。じゃあ」
次にまた会う約束をし2人はそこで別れた。
それから月に2、3度の頻度で、買い物やお茶をするようになっていった。
しかし一月…二月とどれだけ時間が経とうとも、一向に記憶は戻らない。
静江の不思議な魅力に、すみれ自身「わからなくても別にもういいか」とあまり考えもしなくなっていた。
…あっという間に月日は流れ、静江と再開してから半年ほど経ったある日…一本のメールから事態は急変するのであった。
静江
こんにちは。高田小の同窓会の案内来てる?私は行くけど、すみちゃんどうする?」
すみれ「……」
慌てたように携帯を探すすみれ。『よく使う項目』から静江をタップする。
プルルルル🎵プルルルル🎵プル…
静江「もしもしすみちゃん?同窓会どうする?」
すみれ「その事なんだけど…落ち着いて聴いてね」
静江「え?どうしたの?」
すみれ「私って高田小卒じゃないのよ」
静江「だってすみちゃんよね?隅田香織さんでしょ?」
すみれ「確かにあだ名は『すみ』だけど、名前のすみれの『すみ』よ。わたし真中す・み・れ」
静江「え?すみじゃなくて、真ん中?」
すみれ「それはよくわからないけどとにかく人違いなのよ」
静江「…よく考えたらそうかもって時はあったわね」
すみれ「まー私も否めないけども」
静江「まーそれはいいんじゃない。それより同窓会どうする?」
すみれ(こちとらびつくりぎょうてんなのに、ずいぶんさらっと流すわね)
すみれ「卒業生じゃないのに行くわけないでしょ?」
静江「なんか予定より参加人数少ないらしくて。人数合わせで来てよ」
すみれ「本氣で言ってんの?」
静江「知ってるようで知らない2人がここまで話して来たんだからなんとかなるわよ。適当に喋ってればいいわよ。費用はこっち持ちでいいから」
すみれ「確かにそうかもしれないけど…でもやっぱりね~」
静江「ね、ね。決まりで」
またもや圧力に屈するすみれであった。
それから数週間後の同窓会当日
すみれが自己紹介した時に、ここに来るまでの経緯を話したところ、
周りが一斉に「やっぱりザ・静江だね!」と大爆笑となった。
学生時代からそのような片鱗があったようである。
「すみれさんと香緒って似てないよな…」と話してたところに、
遅れていた隅田香織氏本人が登場。2度目の大爆笑となった。
同級生「やっぱり全然にてねーよ」
同級生「静江テキトー」
香織「なになにどしたの?」
状況を把握出来ずに目をぱち栗させていた。
同級生「静江がさー…」
香織「なにそれ~…」
話しを聴いた香織とすみれが顔を見合わせた瞬間、お互いに口を塞いで笑いを堪えた。
すみれ「静江、変わらないわねーって言ってたんですよ。私も言ったけど」
お酒も入りすみれ本人も大いに楽しんだ。会は大いに盛り上がったとのことだっだ。
あれから(再会?)1年以上経った今でも、お互いに連絡を取り合っている。
静江
すみちゃん明日笑店街どう?
すみれ
じゃいつものとこで12:00ね。
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