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誘惑
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「当分、アリシアには近寄るな」
屋敷に戻ると、フレデリックはフレンにそう告げた。アリシアがフレンを見ると、フレンは一瞬アリシアを見て、すぐに目をそらす。そして静かに頷いた。
「ああ、わかった」
「フレン様……」
「アリシアもその方がいいだろ。俺もその方がいいと思う。フレデリックが良いと言うまでアリシアには近寄らないよ」
◇
「フレデリック様、フレン様のことはもう良いのではないですか?本人も反省していますし」
「だめだ。アリシアにあんな顔させるなんて許せない」
アリシアの言葉を遮るようにしてそう言うと、フレデリックは真顔で紅茶を一口飲む。
(美味しい紅茶のはずなのに、まるで味がしない)
アリシアも紅茶を口にするが、心地よいと思える香りも、心がほぐれるような美味しい味も、今日は何も感じられない。
フレデリックの部屋にいるのは、フレデリックとアリシアの二人だけだ。アリシアに近寄るなとフレデリックに言われたフレンは、自室に戻ったようだ。
いつもはフレデリックとフレンに挟まれているアリシアだが、そばにいるはずのフレンがいない。
(二人に挟まれていつも心が騒がしかったし困っていたけれど、いないならいないでこんなに寂しい気持ちになるなんて)
いつだって余裕そうにアリシアを揶揄い、フレデリックに怒られることさえも楽しんでいるようなフレン。アリシアが不安な時は必ずそばにいてアリシアの不安が消えるように尽力してくれる。自分たちよりも大人だからこその行動なのだろうと思っていたが、そんな大人なフレンが理性を崩しそうになるなんて、よっぽどのことだったのだろう。
(何が悪かったのかしら。ただ選んでもらったドレスを試着しただけだったのに)
確かにあのドレスはセクシーすぎると思った。でも、それだけでフレンがあんな風になってしまうものなのだろうか?むしろセクシーすぎて自分には不釣り合いだとさえ思ったのに。
紅茶を飲む手が止まり、じっとティーカップの中を神妙な顔で見つめるアリシアを見て、フレデリックはぎゅっと拳を握る。そして、静かに席を立ってアリシアの隣に座った。
急に隣に来たフレデリックに気づいてアリシアはフレデリックを見る。フレデリックの顔は、何かに怒るような、耐えるような、あまりにも複雑な表情をしていた。
「フレデリック様?」
「アリシアは今、フレンのことを考えているの?」
「えっ、それは……」
「今そばにいるのは俺だよ。どうしてあんな男のことばかり考えるの」
ティーカップを持ったままのアリシアの片手を強引に掴んで自分の方に引き寄せる。
「フレデリック様……!?」
「いつもそうだ、アリシアはあいつのことばかり考えてる。あいつの言動行動に心を奪われて揺らされて、気づくとアリシアの頭の中にいるのはあいつだ」
「そんなこと」
「ないとは言い切れないだろ。現にさっきまでフレンのことを考えていたんだから」
はあ、と重いため息をついてフレデリックは俯いた。
「あいつは未来の俺なんだよね。そう、俺なんだよ。最初は信じられなかったけど、あいつの言うことはあいつが俺だって思うしかないことばかりだった。アリシアを思う気持ちだって本物だ。だって俺だから。でも、今の俺じゃない。あいつは未来の俺だけど、今のアリシアのそばにいる俺じゃないんだ」
ぎゅっとアリシアの手を掴む力が強くなる。
「ねえ、アリシア。あの時、試着室で何があったの?」
顔を上げてアリシアを見つめるフレデリックの目は、ドロドロとした嫉妬に取り憑かれているようだ。
「何って、何も、ありません」
掠れた声でそう返事をすると、フレデリックは目を細める。
「嘘だ。あいつは未遂だって言った。何かしようとしたんだ。それに、あの時のアリシアの顔は、真っ赤で目も潤んでいた。扇状的で、まるで男を誘うような顔をしていた」
「そ、そんな……!」
(あの時はフレン様と顔があまりにも近くてどうして良いかわからなかっただけで、そんな顔したつもりはないのに!)
フレデリックは戸惑うアリシアの頬に、そっと片手を添える。そして、アリシアの顔に自分の顔を近づけて耳元でそっと囁いた。
「ねえ、どうしてあいつなの?どうしてあいつにばかりそんな顔見せるの?俺じゃだめ?今のアリシアの婚約者は俺だよ」
内臓に直に伝わるような、低く静かなその声音に、アリシアは思わずゾクっとして体がピクリと震えてしまう。そんなアリシアに、フレデリックは口の端に弧を描いた。そして耳元から顔を離してスリ、とアリシアの頬に自分の頬を擦り寄せる。
(フ、フレデリック様……!?)
アリシアは起こっていることに頭が追いつかない。ただただ心臓が激しく動き身体中の体温が一気に上昇する。
「アリシア、今、俺のことだけ考えてるよね。俺のことだけを思ってくれてるんだよね?嬉しい」
アリシアの額に自分の額を合わせ、フレデリックは嬉しそうにそう言った。
「試着室であいつにされそうだったこと、当ててあげようか」
そう言って、フレデリックは額を離すと、またアリシアに顔を近づける。そして、鼻と鼻が触れ合いそうな距離で止まった。片手でアリシアの頬をそっと優しく撫でてから、フレデリックはアリシアから離れてアリシアを見る。
「正解だ」
フレデリックの目に映るのは、顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、扇状的な顔をしたアリシアだった。
「今、その顔をさせたのは紛れもなく俺だよ。それを忘れないで、アリシア」
屋敷に戻ると、フレデリックはフレンにそう告げた。アリシアがフレンを見ると、フレンは一瞬アリシアを見て、すぐに目をそらす。そして静かに頷いた。
「ああ、わかった」
「フレン様……」
「アリシアもその方がいいだろ。俺もその方がいいと思う。フレデリックが良いと言うまでアリシアには近寄らないよ」
◇
「フレデリック様、フレン様のことはもう良いのではないですか?本人も反省していますし」
「だめだ。アリシアにあんな顔させるなんて許せない」
アリシアの言葉を遮るようにしてそう言うと、フレデリックは真顔で紅茶を一口飲む。
(美味しい紅茶のはずなのに、まるで味がしない)
アリシアも紅茶を口にするが、心地よいと思える香りも、心がほぐれるような美味しい味も、今日は何も感じられない。
フレデリックの部屋にいるのは、フレデリックとアリシアの二人だけだ。アリシアに近寄るなとフレデリックに言われたフレンは、自室に戻ったようだ。
いつもはフレデリックとフレンに挟まれているアリシアだが、そばにいるはずのフレンがいない。
(二人に挟まれていつも心が騒がしかったし困っていたけれど、いないならいないでこんなに寂しい気持ちになるなんて)
いつだって余裕そうにアリシアを揶揄い、フレデリックに怒られることさえも楽しんでいるようなフレン。アリシアが不安な時は必ずそばにいてアリシアの不安が消えるように尽力してくれる。自分たちよりも大人だからこその行動なのだろうと思っていたが、そんな大人なフレンが理性を崩しそうになるなんて、よっぽどのことだったのだろう。
(何が悪かったのかしら。ただ選んでもらったドレスを試着しただけだったのに)
確かにあのドレスはセクシーすぎると思った。でも、それだけでフレンがあんな風になってしまうものなのだろうか?むしろセクシーすぎて自分には不釣り合いだとさえ思ったのに。
紅茶を飲む手が止まり、じっとティーカップの中を神妙な顔で見つめるアリシアを見て、フレデリックはぎゅっと拳を握る。そして、静かに席を立ってアリシアの隣に座った。
急に隣に来たフレデリックに気づいてアリシアはフレデリックを見る。フレデリックの顔は、何かに怒るような、耐えるような、あまりにも複雑な表情をしていた。
「フレデリック様?」
「アリシアは今、フレンのことを考えているの?」
「えっ、それは……」
「今そばにいるのは俺だよ。どうしてあんな男のことばかり考えるの」
ティーカップを持ったままのアリシアの片手を強引に掴んで自分の方に引き寄せる。
「フレデリック様……!?」
「いつもそうだ、アリシアはあいつのことばかり考えてる。あいつの言動行動に心を奪われて揺らされて、気づくとアリシアの頭の中にいるのはあいつだ」
「そんなこと」
「ないとは言い切れないだろ。現にさっきまでフレンのことを考えていたんだから」
はあ、と重いため息をついてフレデリックは俯いた。
「あいつは未来の俺なんだよね。そう、俺なんだよ。最初は信じられなかったけど、あいつの言うことはあいつが俺だって思うしかないことばかりだった。アリシアを思う気持ちだって本物だ。だって俺だから。でも、今の俺じゃない。あいつは未来の俺だけど、今のアリシアのそばにいる俺じゃないんだ」
ぎゅっとアリシアの手を掴む力が強くなる。
「ねえ、アリシア。あの時、試着室で何があったの?」
顔を上げてアリシアを見つめるフレデリックの目は、ドロドロとした嫉妬に取り憑かれているようだ。
「何って、何も、ありません」
掠れた声でそう返事をすると、フレデリックは目を細める。
「嘘だ。あいつは未遂だって言った。何かしようとしたんだ。それに、あの時のアリシアの顔は、真っ赤で目も潤んでいた。扇状的で、まるで男を誘うような顔をしていた」
「そ、そんな……!」
(あの時はフレン様と顔があまりにも近くてどうして良いかわからなかっただけで、そんな顔したつもりはないのに!)
フレデリックは戸惑うアリシアの頬に、そっと片手を添える。そして、アリシアの顔に自分の顔を近づけて耳元でそっと囁いた。
「ねえ、どうしてあいつなの?どうしてあいつにばかりそんな顔見せるの?俺じゃだめ?今のアリシアの婚約者は俺だよ」
内臓に直に伝わるような、低く静かなその声音に、アリシアは思わずゾクっとして体がピクリと震えてしまう。そんなアリシアに、フレデリックは口の端に弧を描いた。そして耳元から顔を離してスリ、とアリシアの頬に自分の頬を擦り寄せる。
(フ、フレデリック様……!?)
アリシアは起こっていることに頭が追いつかない。ただただ心臓が激しく動き身体中の体温が一気に上昇する。
「アリシア、今、俺のことだけ考えてるよね。俺のことだけを思ってくれてるんだよね?嬉しい」
アリシアの額に自分の額を合わせ、フレデリックは嬉しそうにそう言った。
「試着室であいつにされそうだったこと、当ててあげようか」
そう言って、フレデリックは額を離すと、またアリシアに顔を近づける。そして、鼻と鼻が触れ合いそうな距離で止まった。片手でアリシアの頬をそっと優しく撫でてから、フレデリックはアリシアから離れてアリシアを見る。
「正解だ」
フレデリックの目に映るのは、顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、扇状的な顔をしたアリシアだった。
「今、その顔をさせたのは紛れもなく俺だよ。それを忘れないで、アリシア」
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