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怒り(ケインズ視点)
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それは討伐祭が終わって二日が経った午後だった。
ユーズが聖女誘拐事件についての有力な情報を得たから話がしたいと言ってきたため、騎士団本部の執務室で報告作業をしながらユーズを待っていた。
コンコン
「ユーズだ、入るぞ」
「おう、遅かったな」
扉が開かれると、ユーズだけではなく白龍ギールの姿もある。
「これはこれは白龍ギール様ではないですか。おい、ユーズ、これは一体どういうことだ?」
嫌味ったらしくそう言うと、ユーズはギールを見て頷く。
「聖女誘拐事件について君にどうしても伝えなければならないことがある」
そう言ってこちらを見るギールは相変わらず無表情だが、ユーズは部屋に入って来てからずっと辛そうな顔をしている。なんだよ、一体なんだっていうんだよ。じわじわと嫌な汗が出てくる。なんだろう、嫌な予感がするのは気のせいか。
「で、俺に伝えなきゃいけないことってのはどういうことだ」
ソファに促し腰をかけてそう聞くと、ギールは深く濃い紫の瞳で俺をじっと見つめた。あまりにも澄んだ瞳で吸い込まれそうになる。怖いな。
「ニオ、という聖女を知っているだろう」
その名前を聞いた瞬間に身体中に電撃が走る。ニオ。忘れもしないその名前。最近ではよく夢に出てくる。苦々しい思い出の夢だ。
「……俺の幼馴染だ。ニオがどうしたんだ。ニオは白龍が騎士を追放してから白龍と一緒に任務に当たっていたが、いつの間にか二人で姿を消したんじゃなかったか」
俺も聞いた話でしかないから詳しいことはわからないが、当時は聖女と白龍の駆け落ちだのなんだのと騒がれていたものだ。だが、聖女誘拐事件の事で話をしに来たというなら、まさか。
「……まさかニオも聖女誘拐事件に巻き込まれているのか?あいつも誘拐されたのか!?」
心臓がバクバクと鳴り響いてうるさい。突然姿を消したんだ、あいつももしかしたら誘拐されて聖女の力を奪われて……。
「いや、違う。むしろ彼女は今回の聖女誘拐事件に関わっている」
「……は?」
ギールの言葉に耳を疑う。ニオが誘拐事件に関わっている?意味がわからない。
「何言ってんだよ、あいつが関わっているってどういうことだよ。……おい、どういうことだって聞いてんだよ!!」
思わず立ち上がり机を蹴る。
「ケインズ!落ち着け!お前の気持ちはわかるが、ギールの話を最後まで聞いてほしい。彼女は実行者ではあるが被害者でもある」
ユーズの言葉に一瞬で頭が冷える。どういうことだ、全く話が読めない。一体あいつに何があった?あいつは今何をしているんだ?
「……悪い、頭に血が上った。詳しく話してくれ」
そう言うと、ギールは俺を見つめて静かに話し始めた。
「つまり、白龍の寿命が縮まることを嫌がったニオに、ちょうどよくサリ国の人間が近づいてそそのかし誘拐事件を起こしている、と」
聞いた話を再度確認すると、ギールもユーズも頷いた。なんだよそれ。マジであいつは何をやってんだよ。
「気にくわねぇな、その白龍はその行為が結果どうなるか知ってるんだろ。なのにニオを止めもしねぇのかよ。結局は自分も寿命が縮むのが嫌なだけじゃねえか」
「白龍リオンはニオのことを思って何も言えないと伝えてきた。我々白龍はそもそも生にそこまで執着がない。ニオのことを思って、それだけだ」
ギールの言葉を聞いて余計に虫唾が走る。なーにがニオのことを思ってだ。
「ふざけんなよ、ニオを本気で大切に思ってるならニオの行動をなんとしてでも止めるべきだろ!あいつがそんなことしてる時点でニオのためでもなんでもねーんだよ!」
イライラを抑えずに吐き捨てると、ギールは目を細めなるほど、と呟いた。何がなるほどなんだよクソが。
「我々白龍は人の感情というものがよくわからない。よくわからないからこそ、リオンはニオに対する初めての気持ちにどうしていいのかわからないのだ。リオンはニオを思って何も言えないと伝えてきたが、それが果たして正しいものかなんなのか、どうすればよかったのかわからない。自分の気持ちに戸惑い続けている」
大切に思うからこそ、どうしたらよかったのかわからない。リオンのニオに対する大切に思う気持ちは、他の白龍たちが聖女へ思う大切さとは違う、もっと大きくて複雑で愛おしいものなのだ。
それはもはや愛なのだろう。その白龍リオンはニオを愛してしまっている。でも愛するというものがどういうものか今まで知らなかった上に人間と白龍という種別を超えた状態に戸惑っているのだ。
あぁ、なんなんだよ全く。胸が苦しい。この苦しさはなんなんだ。
「近々、白龍使いの騎士団全体で会議が開かれる。そこで今回のことについて、聖女の名前は伏せるが話をしようと思っている。もちろん君の名前も出さないよ。君はニオの幼馴染だ。辛いのであれば今回の事件から君を除外することも可能だ。もし君が望むのであればそれでも構わない」
ギールは俺を気遣ってくれたんだろうが、むしろそんなの必要ない。
「俺はあいつからもその白龍からもきちんと話を聞かなきゃ気がすまない。手を引く気は毛頭ないね」
ユーズが聖女誘拐事件についての有力な情報を得たから話がしたいと言ってきたため、騎士団本部の執務室で報告作業をしながらユーズを待っていた。
コンコン
「ユーズだ、入るぞ」
「おう、遅かったな」
扉が開かれると、ユーズだけではなく白龍ギールの姿もある。
「これはこれは白龍ギール様ではないですか。おい、ユーズ、これは一体どういうことだ?」
嫌味ったらしくそう言うと、ユーズはギールを見て頷く。
「聖女誘拐事件について君にどうしても伝えなければならないことがある」
そう言ってこちらを見るギールは相変わらず無表情だが、ユーズは部屋に入って来てからずっと辛そうな顔をしている。なんだよ、一体なんだっていうんだよ。じわじわと嫌な汗が出てくる。なんだろう、嫌な予感がするのは気のせいか。
「で、俺に伝えなきゃいけないことってのはどういうことだ」
ソファに促し腰をかけてそう聞くと、ギールは深く濃い紫の瞳で俺をじっと見つめた。あまりにも澄んだ瞳で吸い込まれそうになる。怖いな。
「ニオ、という聖女を知っているだろう」
その名前を聞いた瞬間に身体中に電撃が走る。ニオ。忘れもしないその名前。最近ではよく夢に出てくる。苦々しい思い出の夢だ。
「……俺の幼馴染だ。ニオがどうしたんだ。ニオは白龍が騎士を追放してから白龍と一緒に任務に当たっていたが、いつの間にか二人で姿を消したんじゃなかったか」
俺も聞いた話でしかないから詳しいことはわからないが、当時は聖女と白龍の駆け落ちだのなんだのと騒がれていたものだ。だが、聖女誘拐事件の事で話をしに来たというなら、まさか。
「……まさかニオも聖女誘拐事件に巻き込まれているのか?あいつも誘拐されたのか!?」
心臓がバクバクと鳴り響いてうるさい。突然姿を消したんだ、あいつももしかしたら誘拐されて聖女の力を奪われて……。
「いや、違う。むしろ彼女は今回の聖女誘拐事件に関わっている」
「……は?」
ギールの言葉に耳を疑う。ニオが誘拐事件に関わっている?意味がわからない。
「何言ってんだよ、あいつが関わっているってどういうことだよ。……おい、どういうことだって聞いてんだよ!!」
思わず立ち上がり机を蹴る。
「ケインズ!落ち着け!お前の気持ちはわかるが、ギールの話を最後まで聞いてほしい。彼女は実行者ではあるが被害者でもある」
ユーズの言葉に一瞬で頭が冷える。どういうことだ、全く話が読めない。一体あいつに何があった?あいつは今何をしているんだ?
「……悪い、頭に血が上った。詳しく話してくれ」
そう言うと、ギールは俺を見つめて静かに話し始めた。
「つまり、白龍の寿命が縮まることを嫌がったニオに、ちょうどよくサリ国の人間が近づいてそそのかし誘拐事件を起こしている、と」
聞いた話を再度確認すると、ギールもユーズも頷いた。なんだよそれ。マジであいつは何をやってんだよ。
「気にくわねぇな、その白龍はその行為が結果どうなるか知ってるんだろ。なのにニオを止めもしねぇのかよ。結局は自分も寿命が縮むのが嫌なだけじゃねえか」
「白龍リオンはニオのことを思って何も言えないと伝えてきた。我々白龍はそもそも生にそこまで執着がない。ニオのことを思って、それだけだ」
ギールの言葉を聞いて余計に虫唾が走る。なーにがニオのことを思ってだ。
「ふざけんなよ、ニオを本気で大切に思ってるならニオの行動をなんとしてでも止めるべきだろ!あいつがそんなことしてる時点でニオのためでもなんでもねーんだよ!」
イライラを抑えずに吐き捨てると、ギールは目を細めなるほど、と呟いた。何がなるほどなんだよクソが。
「我々白龍は人の感情というものがよくわからない。よくわからないからこそ、リオンはニオに対する初めての気持ちにどうしていいのかわからないのだ。リオンはニオを思って何も言えないと伝えてきたが、それが果たして正しいものかなんなのか、どうすればよかったのかわからない。自分の気持ちに戸惑い続けている」
大切に思うからこそ、どうしたらよかったのかわからない。リオンのニオに対する大切に思う気持ちは、他の白龍たちが聖女へ思う大切さとは違う、もっと大きくて複雑で愛おしいものなのだ。
それはもはや愛なのだろう。その白龍リオンはニオを愛してしまっている。でも愛するというものがどういうものか今まで知らなかった上に人間と白龍という種別を超えた状態に戸惑っているのだ。
あぁ、なんなんだよ全く。胸が苦しい。この苦しさはなんなんだ。
「近々、白龍使いの騎士団全体で会議が開かれる。そこで今回のことについて、聖女の名前は伏せるが話をしようと思っている。もちろん君の名前も出さないよ。君はニオの幼馴染だ。辛いのであれば今回の事件から君を除外することも可能だ。もし君が望むのであればそれでも構わない」
ギールは俺を気遣ってくれたんだろうが、むしろそんなの必要ない。
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