転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

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1章 

23. レオン様の事が知りたい

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朝食後のサロンで、お父様が最初に言った。

「先触れがあってな、王都からの一行が昨晩ブレスの宿に着いたそうだ」

そう言えば今日が到着予定でした。
わざわざすぐ近くのブレスに宿泊したという事は、昼はブレスの街で支度を整え、ついでに観光してもらい、今晩は歓迎会という事ですね。

「昼過ぎには一度緑林館に入ってもらうわ」

お母様が言う緑林館とは、シルエット邸本館に部屋を待たない使用人たちが住まう館だ。本館裏ガーデンの向こうに小さな森があり、その中に建つ瀟洒な建物なのだ。そこに約30人のメイドたちがお客として滞在する。

「という事は、夕方には正式に出迎えるのかな?」

アレク兄様が確認します。

「そう。今晩は夜会よ。メイドとはいえ、わざわざ王都から来たのだもの。しかもフォレスト家の助っ人たちもいるのよ。少しカジュアルなものになるけど、シルエット辺境伯の家族として最大のおもてなしをするわよ」

お母様、気合いが入っています。

「もたもたしてられないな! 夜会、新しい揚げ物料理出すよ! 時間が無いのでお先に失礼」

アド兄様は新しいレシピ作りに夢中です。会議が解散するより先に調理場へと消えて行きました。
どうせなら夜会に出したい気持ちも分かります。

「ということだ。今日は会議はここまでで、各々やるべきことをやってくれ。夕方には夜会の出迎え準備を整えるように」

お父様が解散を言い渡し、使用人たちもそれぞれ慌ただしく動き出す。

「レオン様! 参りましょう」

私はいそいそとレオン様に近づくと、今日のお誘いをする。

「お! ソフィア、今日は何をするの? 俺も手伝うよ」

アレク兄様が私とレオン様の間に立ち塞がる。
ありがたい申し出なのでお兄様も一緒に、と思ったら、

「アレクはこっち」

とお父様からご指名だ。
アレクお兄様、今日もお父様のお手伝い決定ですね。

「レオン、お前、本当に良く考えて行動してくれよ! な!」

アレク兄様が何やらレオン様に言い募っています。
これで仲良しなのだから男子って面白い。
レオン様はアレク兄様をいなしてお父様と目を合わせ、ちょっと意地悪そうに笑みを浮かべたかと思うと、美しく目礼した。
長い睫毛が高貴です。

お父様とアレク兄様がサロンを出て行ってしまうと、残ったのは私とレオン様とそれぞれの従者たちだけになった。

「さすがシルエット家だね。夜会がある日も皆ギリギリまで働くんだ」

レオン様が感心しています。

「他の家はそうではないのですか?」

私は行き先を促しながらレオン様と並んでサロンを出た。
ホールには普段よりも足早に動き回る使用人たちがたくさんいる。
これから夜会用に使用する部屋やガーデンを飾り付けるのでしょう。

私は彼らの邪魔にならないように、昨日も使用したガゼボで今日もまた実験です。

「俺の家ではパーティーや夜会を主催する日は三日前から掛かりっきりで準備だけだよ。お招きの場合も当日は他に予定を入れない」

「まあ。王都のパーティーは盛大ですのね」

レオン様の言葉に素直に思ったことを言うと「ちがうちがう」と否定されました。

「シルエット邸と変わらないよ。夫人が王都に劣る事も、かといって勝る事もするわけがないしね」

「そうなのですね。ならばなぜ三日も前からパーティー準備に掛かりっきりなのです?」

我が家のパーティーは確かにかなり前から計画され綿密に手配されるが、実際それに向けて動くのは当日のみだ。
お招きのパーティーならば当日は正装するだけだから、いつものように夕方から準備すれば良い。
私はまだ外のパーティーに行ったことはないが、お母様はいつだって素早く手早く準備を終えている。

「それがシルエット家の凄いところだよね。貴族はさ、身分が高くなればばるほど、時間がゆっくり過ぎているんだ。ソフィア嬢も外部との接触が許されるようになると、その落差に驚くと思うよ」

私の知らない貴族のことを教えてくれるレオン様は、何故か少し投げやりな口調です。

「辺境伯という立場でもものすごく忙しくてやることはたくさんです。高貴なお方はもっともっとお忙しくて、手が回らないのでしょうか?」

言うとまたしてもレオン様は否定する。
どういうことでしょう?
何故レオン様は自嘲気味なのかしら?

思えばレオン様には私の事を手伝ってもらってばかりだ。
私の疑問もたくさん聞いてくれて、答えてくれた。
昨日は情報集めにまで走ってくれた。
なのに私はレオン様の事を何一つ聞いていないのだわ。

現国王の甥で侯爵家の次男。お父様は武芸にも通じた副宰相。14歳になったばかり。
それしか知らない。

レオン様の事が知りたいわ。
でも、レオン様がお話ししてくれるならまだしも、根掘り葉掘り聞くのはどうなのかしら?

ガゼボへ向かう道を並んで歩くレオン様は風に銀髪をなびかせ、凛とした瞳で前を見据えている。
その横顔は少女とも思えるほど美しく優しいのに、神秘的なシルバーアイは強い光を放っていて、少し攻撃的。
笑うとその印象ががらりと変わってふんにゃり甘くなるのを知っている。
私が知っているのはそれだけ。

レオン様はどうやって多くの知識を得たのでしょう?
やはり本がお好きなのかしら?
王都ではでのような生活をなさっているの?
ご家族はどんな方?
我が家の食事を美味しい美味しいと食べてくれていますが、レオン様の好物は何かしら?

私にとても優しくしてくださいますね。
でもどうしてですの?
レオン様にとって私は友人の妹、ただの幼い女の子でしかない。
きっと王都にはレオン様と並んで歩くにふさわしい、美しい女性がたくさんいらっしゃるのでしょうに、まるで恋人に笑いかけるように甘い笑顔を見せてくれるので、私はその度にドキドキしてしまうのですよ。
これではまるで私に好意を抱いているように・・・

そこまで考えて私ははっとする。

なにをっ! 何を恐れ多い事を勝手に思い込んでいるのでしょう!?
いけないわ!!

自分の考えに勝手に羞恥を感じ、心臓が早くなり、顔が赤くなっているのがわかる。

「シャロン、帽子を」

私は侍女から日除けのために用意していた帽子を受け取り、素早く顔を隠した。
身長差がありがたい。つばが大きいので背の高いレオン様から私の顔は見えなくなったはず。
なんとしてもガゼボに着くまでには平静さを取り戻さなくてはなりません。
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