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1章
22.5 sideレオン その2 ~婚約条件が整いました~
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寝る時間が迫ってきたので、アレクに送られてソフィア嬢が退出する。
サロンには辺境伯夫妻と俺だけが残った。
俺はソフィア嬢の脈の無さに脱力してしまい、ソファーに深く沈みこむとため息を吐いた。
「すまないな、レオン」
辺境伯が謝罪する。
先日、婚約の段取りを整える話をしたときに出された「恋愛結婚」の婚約条件について謝っているのだ。
「そもそも婚約することと恋愛結婚は両立しません」
出された条件の不利さについ口調が厳しくなってしまう。
「わかっているわ。エドにも散々説教されたのよ」
恋愛結婚が婚約の条件だとのたまった夫人は今日に至っては開き直っている。
ご自分が恋愛結婚だったから、と夫人は言う。
シルエット辺境伯夫妻の結婚話はちょっと変わっている。
伯はもともとダニエラ伯爵夫人とは別の方と幼いころから婚約関係にあったらしいが、学生時代に先方に不幸があり、婚約は解消されたという。
その頃学園で親しくしていたダニエラ夫人に白羽の矢が当たり、もともと伯に恋心を抱いていた夫人は天にも昇る思いをしたそうだ。
その、天にも昇る思いをソフィア嬢にも経験して欲しい、というのが夫人の願いだった。
「だって、いざ結婚してみると、あの時の恋愛期間があったからこそ、今の自分がエドと子供たちのために頑張ることが出来ていると思うのよ。」
夫人の言うことも分かる。
だが、貴族として政略結婚は珍しくないし、例え恋愛関係にならなくても、定められた許嫁と心を通わせる努力をし、互いに人間性を認め合って結婚した夫婦は数多くいる。
婚約者との結婚は恋愛に発展しない事があっても仕方が無いというのが、今の世間の見解だ。
「私はソフィア嬢を好いていますよ。それではだめですか?」
妥協案を出す。
愛される幸せを感じる事ができれば、それはそれで良いのでは?
「だめです。ソフィアが、レオン様をお慕いして、初めて感じる事ができる思いなのです」
んー、夫人も頑固だ。
「まてまて。レオンに申し訳なさすぎる。婚約者としての役目を負わせるのに、ソフィアの気持ち次第で結婚は出来ないかもしれないなど、本当に婚約話を進める意味が無い」
辺境伯が仲介に立つ。しかし。
「娘のことはよくわかっています。あの子は絶対に心に決めた人の元へ行くわ。婚約なんてなんの足かせにもならないわよ。そういう子よ。だからソフィアがレオン様をお慕いする事実が重要なのですわ」
夫人の言葉に沈黙が流れる。
確かに。
ソフィア嬢が納得しなければきっと婚約したって結婚には至らないだろう。
彼女にはそうする決断力と、自分で幸せを掴む行動力がある。
好きな男が出来たら必ず手に入れる。
それが出来る子だ。
「わかりました」
俺は大きなため息と共に言った。
「レオン!」
伯が良く考えろと宥めてくる。
「では、俺からも条件を出します」
長い沈黙の後、伯のため息が聞こえた。
「わかった、受け入れよう。どんな条件だ?」
緊張した口調の伯の横で夫人の身体が強張るのがわかった。
心配しなくてもそんな恐れ多い条件じゃありませんよ。
俺が、ソフィア嬢の愛するソフィア嬢の家族に、無体な事をするはずがないでしょう。
「条件は期限です。ソフィア嬢が王都に上京するまでの約三年。この間に夫人が納得できなかったら婚約は解消します」
夫妻は息を飲む。
「圧倒的にお前に不利じゃないか」
伯は言うが、婚約を隠していられるのなど三年が限界だ。
「ソフィア嬢は年下でもあるから、精神的成長を待つためにしばらく婚約は内々の話とする。これは両家で合意できるでしょう。けれどその限界が三年ということです。三年で無理でしたら私が諦めますよ」
それ以上はフォレスト家が黙っていない、とは声にしなかった。
無体をするつもりはないが、これは脅しになってしまうのかな?
でもまあ、夫人が仕掛けたのだから仕方ないと諦めてくれ。
「もっと穏便な策を考えられないか?」
俺の言葉の裏を明確に読み取った伯が慌てだす。
仮にも俺、侯爵家の子息だし。
優良物件として手放したくないよね。
「わかりましたわ!」
だが、何とか解決策を探す辺境伯の横で、夫人は覚悟を決める。
あなたも大した胆力ですね。
「ソフィアがレオン様を恋愛という意味でお慕いすること。そして三年という期限で了承しますわ」
夫人の言葉に伯が頭を抱えている。
俺はついつい意地悪に唇の端を上げてします。
「な、なんですの?」
「いいえ、何でもありません。ではそういう条件でいいですね、辺境伯」
「・・・好きにしろ」
「ありがとうございます」
しかめっ面の辺境伯の答えに、俺は最高の笑顔で答えた。
三年後。
もし、ソフィア嬢が俺に対して恋愛感情を抱くことがなく婚約を諦めるとしたら、おかしな条件を出したシルエット家から婚約解消を申し出ることになるだろう。
そしてそれは、家対家の騒動になる。
伯はそれを許さない。
結局は夫人が俺に謝罪するのが道筋だ。
シルエット家は王家の経脈であるフォレスト侯爵家を絶対に裏切らない。
なぜならシルエット家の当主は『従う者』であり、それがシルエットの血筋を長く繁栄させてきた宿命だからだ。
何とか関係を良好にするために、結局はソフィア嬢を差し出すしかなくなる。
夫人は気付いていないようだが、浅はかな「婚約の条件」が、結局はソフィアの自由意思を奪うことになる。
それを覚悟した辺境伯の答えだった。
ちょっとおバカな夫人を愛しちゃってるんだから仕方ないよね。
でも、けじめはつける気でいるのだから、そこは評価できる。
「まあ、ソフィア嬢に好いてもらえるように頑張りますよ。でも、おかしなこと言っているのはそちらですからね。くれぐれも邪魔はしないで下さいよ」
うなだれる辺境伯に、俺は付け加えた。
お許しも頂いたことだし、こうなったらガンガン攻めますよ。
サロンには辺境伯夫妻と俺だけが残った。
俺はソフィア嬢の脈の無さに脱力してしまい、ソファーに深く沈みこむとため息を吐いた。
「すまないな、レオン」
辺境伯が謝罪する。
先日、婚約の段取りを整える話をしたときに出された「恋愛結婚」の婚約条件について謝っているのだ。
「そもそも婚約することと恋愛結婚は両立しません」
出された条件の不利さについ口調が厳しくなってしまう。
「わかっているわ。エドにも散々説教されたのよ」
恋愛結婚が婚約の条件だとのたまった夫人は今日に至っては開き直っている。
ご自分が恋愛結婚だったから、と夫人は言う。
シルエット辺境伯夫妻の結婚話はちょっと変わっている。
伯はもともとダニエラ伯爵夫人とは別の方と幼いころから婚約関係にあったらしいが、学生時代に先方に不幸があり、婚約は解消されたという。
その頃学園で親しくしていたダニエラ夫人に白羽の矢が当たり、もともと伯に恋心を抱いていた夫人は天にも昇る思いをしたそうだ。
その、天にも昇る思いをソフィア嬢にも経験して欲しい、というのが夫人の願いだった。
「だって、いざ結婚してみると、あの時の恋愛期間があったからこそ、今の自分がエドと子供たちのために頑張ることが出来ていると思うのよ。」
夫人の言うことも分かる。
だが、貴族として政略結婚は珍しくないし、例え恋愛関係にならなくても、定められた許嫁と心を通わせる努力をし、互いに人間性を認め合って結婚した夫婦は数多くいる。
婚約者との結婚は恋愛に発展しない事があっても仕方が無いというのが、今の世間の見解だ。
「私はソフィア嬢を好いていますよ。それではだめですか?」
妥協案を出す。
愛される幸せを感じる事ができれば、それはそれで良いのでは?
「だめです。ソフィアが、レオン様をお慕いして、初めて感じる事ができる思いなのです」
んー、夫人も頑固だ。
「まてまて。レオンに申し訳なさすぎる。婚約者としての役目を負わせるのに、ソフィアの気持ち次第で結婚は出来ないかもしれないなど、本当に婚約話を進める意味が無い」
辺境伯が仲介に立つ。しかし。
「娘のことはよくわかっています。あの子は絶対に心に決めた人の元へ行くわ。婚約なんてなんの足かせにもならないわよ。そういう子よ。だからソフィアがレオン様をお慕いする事実が重要なのですわ」
夫人の言葉に沈黙が流れる。
確かに。
ソフィア嬢が納得しなければきっと婚約したって結婚には至らないだろう。
彼女にはそうする決断力と、自分で幸せを掴む行動力がある。
好きな男が出来たら必ず手に入れる。
それが出来る子だ。
「わかりました」
俺は大きなため息と共に言った。
「レオン!」
伯が良く考えろと宥めてくる。
「では、俺からも条件を出します」
長い沈黙の後、伯のため息が聞こえた。
「わかった、受け入れよう。どんな条件だ?」
緊張した口調の伯の横で夫人の身体が強張るのがわかった。
心配しなくてもそんな恐れ多い条件じゃありませんよ。
俺が、ソフィア嬢の愛するソフィア嬢の家族に、無体な事をするはずがないでしょう。
「条件は期限です。ソフィア嬢が王都に上京するまでの約三年。この間に夫人が納得できなかったら婚約は解消します」
夫妻は息を飲む。
「圧倒的にお前に不利じゃないか」
伯は言うが、婚約を隠していられるのなど三年が限界だ。
「ソフィア嬢は年下でもあるから、精神的成長を待つためにしばらく婚約は内々の話とする。これは両家で合意できるでしょう。けれどその限界が三年ということです。三年で無理でしたら私が諦めますよ」
それ以上はフォレスト家が黙っていない、とは声にしなかった。
無体をするつもりはないが、これは脅しになってしまうのかな?
でもまあ、夫人が仕掛けたのだから仕方ないと諦めてくれ。
「もっと穏便な策を考えられないか?」
俺の言葉の裏を明確に読み取った伯が慌てだす。
仮にも俺、侯爵家の子息だし。
優良物件として手放したくないよね。
「わかりましたわ!」
だが、何とか解決策を探す辺境伯の横で、夫人は覚悟を決める。
あなたも大した胆力ですね。
「ソフィアがレオン様を恋愛という意味でお慕いすること。そして三年という期限で了承しますわ」
夫人の言葉に伯が頭を抱えている。
俺はついつい意地悪に唇の端を上げてします。
「な、なんですの?」
「いいえ、何でもありません。ではそういう条件でいいですね、辺境伯」
「・・・好きにしろ」
「ありがとうございます」
しかめっ面の辺境伯の答えに、俺は最高の笑顔で答えた。
三年後。
もし、ソフィア嬢が俺に対して恋愛感情を抱くことがなく婚約を諦めるとしたら、おかしな条件を出したシルエット家から婚約解消を申し出ることになるだろう。
そしてそれは、家対家の騒動になる。
伯はそれを許さない。
結局は夫人が俺に謝罪するのが道筋だ。
シルエット家は王家の経脈であるフォレスト侯爵家を絶対に裏切らない。
なぜならシルエット家の当主は『従う者』であり、それがシルエットの血筋を長く繁栄させてきた宿命だからだ。
何とか関係を良好にするために、結局はソフィア嬢を差し出すしかなくなる。
夫人は気付いていないようだが、浅はかな「婚約の条件」が、結局はソフィアの自由意思を奪うことになる。
それを覚悟した辺境伯の答えだった。
ちょっとおバカな夫人を愛しちゃってるんだから仕方ないよね。
でも、けじめはつける気でいるのだから、そこは評価できる。
「まあ、ソフィア嬢に好いてもらえるように頑張りますよ。でも、おかしなこと言っているのはそちらですからね。くれぐれも邪魔はしないで下さいよ」
うなだれる辺境伯に、俺は付け加えた。
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