41 / 57
1章
29.5 sideレオン ~待望の婚約内定~
しおりを挟む
失敗した。
サロンに移っても見知った顔ばかりで気が抜けてしまう。
俺は上等なソファークッションにズブズブと沈み込んだ。
辺境伯は王都から派遣された従者たちにワインを進め、大人の歓談へと段を進めているが、未成年の俺たちにとっては何の代わり映えもしないサロンだ。
俺が沈み込んだソファーの隣に、アドライトがジュースの入ったグラスを持って腰を据える。
「今日は女性陣の方が盛り上がってるね。俺もあっちに行こうかな」
「アド君なら向こうへ行っても遜色ない美少女っぷりだよ。年齢的にも許される。俺は無理だ。ソフィア嬢に警戒された」
「軽口叩くからだ」
向かいのソファーにはアレクサンドライトが座った。
間のテーブルにグラスを2つ置く。俺の分も用意し、相変わらずのそつの無さだ。
『俺が今一番夢中になっている子』
というフレーズがあれ程ソフィア嬢の心に壁を築くとは思わなかった。
自分と対等に話し、時には自分以上の知識を見せるソフィア嬢だが、よく考えればまだ10歳にもならない小さな少女だ。
恋愛に対して潔癖で当然なのだ。
しかもすこぶる箱入りだ。
デリケートな部分を冗談にして告げてしまったのは俺の失敗だ。
後でちゃんと謝罪して、本当の所を真面目に伝えなければならない。
だが。
「ソフィア嬢、すっっっごく可愛くない? 恋愛表現に過剰反応するところとかもう。可愛い過ぎるんだけど」
顔を覆って彼女の反応を思い出す。
『俺の一番』と言った時、顔をボッと赤くして、冷静になろうと表情を繕って、その後の塩対応。
誰かが彼女にそんないたずらを仕掛けているとしたら非常に腹立たしいが、自分のせいで可愛く慌てふためく様を見るのは何というか、意地悪だが楽しい。
「言ってろ。どうやら使用人たちには婚約の話は伝わっているようだな」
アレクが頭を抱えている。
可愛い妹に早々に婚約者がつくのが嫌らしい。
「知らぬはソフィアのみって、可愛そう」
アドは相変わらずのソフィア贔屓だ。
「あのね、苛めているわけじゃないからね。俺だってさっさと打ち明けて、婚約者としての立場を示したいんだからね。でもフォレスト家から正式な打診の手紙が届かないと打ち明けられないのはルールでしょ?」
「そうだけど。レオン様の態度にいちいち反応しているソフィアが気の毒でならないよ」
「そうだそうだ。お前が先走り過ぎなんだよ。ソフィアの気を引くのも打ち明けてからにしてやれよ」
アドに続きアレクからも非難を浴びる。
「そうは思うけどね。なんかちょっかい出したくなるんだよね」
幼く、そういう意味で何も知らない彼女の心に足跡を残す行為はある種快感を覚える。
どんな女性相手でもこんな気持ちになったことはない。
ずっと探していた『誰か』。すっと探していた少女。ソフィア嬢だからこそ、何もかも独占したくなる。
やばいな。早く自分の立場を明確にして、婚約者としてソフィア嬢をでろでろに甘やかしてやりたい。
もちろん性的なあれこれは置いといて、今はソフィア嬢の溢れる好奇心の圧倒的協力者になるのだ。彼女の頼れる相手=俺になって、恋愛面は彼女の精神が成長するように順を追って刺激していくしかない。
「なのにさっきは先走ったな~。いつも一緒にいる使用人たちがいたから気が緩んだ」
俺が先程の『俺の一番』発言を後悔していると、辺境伯がうちの従者と共にやって来た。
「さっきの軽口は許してやるから、明日、ちゃんとソフィアに弁明しろ」
そう言うと2本の指で挟まれた手紙をピッと子供たちに見せつけた。
もしや、あれは。
「ファルコ・フォレスト侯爵から正式な婚約の申し込みが来た。来るソフィアの誕生パーティーの前日に婚約式だ。」
男子三人がその手紙を受け取ると、テーブルに広げた。
その手紙には流暢な文字で形式に則った婚約申し込みの言葉が書かれ、2枚目には婚約式の日取りや段取りが書かれていた。
「うわ、きた!」
アド君、正直な反応。
「マジか~。お前が弟か~」
アレクは形容しがたい感じ。
うん。わかるよ。
俺もお前が兄貴とか形容しがたいもんがある。
でも俺は。
「やった!」
もうそれしかない。
夫人との面倒な約束はあるのだが、状況が進展することに期待しかなかった。
これで、妙に優しくしてくれる兄の友人役から抜け出て、ソフィア嬢を大切に大切にする大義名分が与えられたわけだ。
「お前・・・幸せそうな顔しやがって」
アレクに頭をグシャグシャにされるが、こみ上げる笑顔には逆らえなかった。
サロンに移っても見知った顔ばかりで気が抜けてしまう。
俺は上等なソファークッションにズブズブと沈み込んだ。
辺境伯は王都から派遣された従者たちにワインを進め、大人の歓談へと段を進めているが、未成年の俺たちにとっては何の代わり映えもしないサロンだ。
俺が沈み込んだソファーの隣に、アドライトがジュースの入ったグラスを持って腰を据える。
「今日は女性陣の方が盛り上がってるね。俺もあっちに行こうかな」
「アド君なら向こうへ行っても遜色ない美少女っぷりだよ。年齢的にも許される。俺は無理だ。ソフィア嬢に警戒された」
「軽口叩くからだ」
向かいのソファーにはアレクサンドライトが座った。
間のテーブルにグラスを2つ置く。俺の分も用意し、相変わらずのそつの無さだ。
『俺が今一番夢中になっている子』
というフレーズがあれ程ソフィア嬢の心に壁を築くとは思わなかった。
自分と対等に話し、時には自分以上の知識を見せるソフィア嬢だが、よく考えればまだ10歳にもならない小さな少女だ。
恋愛に対して潔癖で当然なのだ。
しかもすこぶる箱入りだ。
デリケートな部分を冗談にして告げてしまったのは俺の失敗だ。
後でちゃんと謝罪して、本当の所を真面目に伝えなければならない。
だが。
「ソフィア嬢、すっっっごく可愛くない? 恋愛表現に過剰反応するところとかもう。可愛い過ぎるんだけど」
顔を覆って彼女の反応を思い出す。
『俺の一番』と言った時、顔をボッと赤くして、冷静になろうと表情を繕って、その後の塩対応。
誰かが彼女にそんないたずらを仕掛けているとしたら非常に腹立たしいが、自分のせいで可愛く慌てふためく様を見るのは何というか、意地悪だが楽しい。
「言ってろ。どうやら使用人たちには婚約の話は伝わっているようだな」
アレクが頭を抱えている。
可愛い妹に早々に婚約者がつくのが嫌らしい。
「知らぬはソフィアのみって、可愛そう」
アドは相変わらずのソフィア贔屓だ。
「あのね、苛めているわけじゃないからね。俺だってさっさと打ち明けて、婚約者としての立場を示したいんだからね。でもフォレスト家から正式な打診の手紙が届かないと打ち明けられないのはルールでしょ?」
「そうだけど。レオン様の態度にいちいち反応しているソフィアが気の毒でならないよ」
「そうだそうだ。お前が先走り過ぎなんだよ。ソフィアの気を引くのも打ち明けてからにしてやれよ」
アドに続きアレクからも非難を浴びる。
「そうは思うけどね。なんかちょっかい出したくなるんだよね」
幼く、そういう意味で何も知らない彼女の心に足跡を残す行為はある種快感を覚える。
どんな女性相手でもこんな気持ちになったことはない。
ずっと探していた『誰か』。すっと探していた少女。ソフィア嬢だからこそ、何もかも独占したくなる。
やばいな。早く自分の立場を明確にして、婚約者としてソフィア嬢をでろでろに甘やかしてやりたい。
もちろん性的なあれこれは置いといて、今はソフィア嬢の溢れる好奇心の圧倒的協力者になるのだ。彼女の頼れる相手=俺になって、恋愛面は彼女の精神が成長するように順を追って刺激していくしかない。
「なのにさっきは先走ったな~。いつも一緒にいる使用人たちがいたから気が緩んだ」
俺が先程の『俺の一番』発言を後悔していると、辺境伯がうちの従者と共にやって来た。
「さっきの軽口は許してやるから、明日、ちゃんとソフィアに弁明しろ」
そう言うと2本の指で挟まれた手紙をピッと子供たちに見せつけた。
もしや、あれは。
「ファルコ・フォレスト侯爵から正式な婚約の申し込みが来た。来るソフィアの誕生パーティーの前日に婚約式だ。」
男子三人がその手紙を受け取ると、テーブルに広げた。
その手紙には流暢な文字で形式に則った婚約申し込みの言葉が書かれ、2枚目には婚約式の日取りや段取りが書かれていた。
「うわ、きた!」
アド君、正直な反応。
「マジか~。お前が弟か~」
アレクは形容しがたい感じ。
うん。わかるよ。
俺もお前が兄貴とか形容しがたいもんがある。
でも俺は。
「やった!」
もうそれしかない。
夫人との面倒な約束はあるのだが、状況が進展することに期待しかなかった。
これで、妙に優しくしてくれる兄の友人役から抜け出て、ソフィア嬢を大切に大切にする大義名分が与えられたわけだ。
「お前・・・幸せそうな顔しやがって」
アレクに頭をグシャグシャにされるが、こみ上げる笑顔には逆らえなかった。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる