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その日も、ドニおじいさんはシュシュと一緒にやって来ました。ドニおじいさんはしわがれた優しい声で、つぼみ姫にいつもの朝のあいさつをしました。
「つぼみ姫、おはようさん。今日もいい天気だね」
つぼみ姫も喜びにあふれるにこやかな声であいさつを返しました。
「ええ、今朝はおひさまがいつもよりご機嫌みたい。ドニおじいさんのご機嫌はいかが?」
「いい気分だよ。ありがとう」
「そう、よかったわ。それじゃシュシュは?」
問われて、シュシュはふんわりとやわらかなしっぽを振ると、可愛らしい声で鳴きました。
「にゃあん」
「シュシュもご機嫌なのね」
「さぁ、つぼみ姫。お水をたっぷりお浴び」
ドニおじいさんはジョウロから、冷たくておいしい水をつぼみ姫にかけてくれました。つぼみ姫は気持ちよさそうに体をふるわせました。
ドニおじいさんはつぼみ姫の華奢な茎や葉についた虫を、ひとつずつ丁寧に取ってくれました。すっかりきれいになると、ドニおじいさんはうーんと腰を伸ばし、すぐそばでおとなしく毛繕いをしていたシュシュに声をかけました。
「さて、そろそろお昼にするかな、シュシュ」
シュシュは嬉しそうにしっぽを振りました。
ドニおじいさんはつぼみ姫の隣のベンチに腰をおろすと、膝の上にサンドイッチの包みを広げ、シュシュと分け合って食べ始めました。
太陽はやわらかく寛大で、のんびりと空に浮かぶ雲が、つぼみ姫やドニおじいさんやシュシュのことを、あたたかく見守っているようでした。
つぼみ姫はそんな雲を眺めながら、ドニおじいさんに話しかけました。
「ねぇ、ドニおじいさん」
「なんだい」
「わたし、もしかしたらずっとつぼみのままでいなければいけないのじゃないかしら」
ドニおじいさんはかじりかけのサンドイッチを膝のナプキンの上に置くと、つぼみ姫に尋ねました。
「なぜそんな風に思うんだい?」
「昨日の晩、ここの花たちがわたしに言ったの。『あなたはほんとうに美しい世界に一つだけの花。だけど、いつまでたってもつぼみのままで、花としての値打ちも意味もありはしないわ。きっとあなたは一生つぼみのままでいるんだわ』って。わたし、ほんとうにずっとつぼみのままなのかしら」
つぼみ姫は悲しそうにうつむきました。
ドニおじいさんはつぼみ姫をいたわるように、優しく微笑んで言いました。
「心配しなくても大丈夫さ。いつかきっとつぼみは開くよ」
「でも、それはいつ?」
「時が来たらさ」
「その時はいつ?」
「準備が整ったときだよ」
「でも、わたしの準備はもう整っているわ。ねぇ、どうしてわたしは咲かないのかしら」
ドニおじいさんは困った顔で微笑みました。
「正直に言うと、なぜおまえさんがずっとつぼみのままなのか、わしにもその理由がわからんのだよ。だけど、これだけはわかる。おまえさんはいつかきっと、素晴らしい花を咲かせるよ。その時が来たら、おまえさんは誰よりも美しい花になる。その時のために、今はじっくり体の隅々まであたためて、力を蓄えておくんだよ」
つぼみ姫はドニおじいさんの言葉を黙って聞いていました。つぼみ姫はほんとうはちっとも納得なんてしていませんでしたが、困ったように微笑んで自分を見ているドニおじいさんを前にすると、何も言えなくなったのでした。
「つぼみ姫、おはようさん。今日もいい天気だね」
つぼみ姫も喜びにあふれるにこやかな声であいさつを返しました。
「ええ、今朝はおひさまがいつもよりご機嫌みたい。ドニおじいさんのご機嫌はいかが?」
「いい気分だよ。ありがとう」
「そう、よかったわ。それじゃシュシュは?」
問われて、シュシュはふんわりとやわらかなしっぽを振ると、可愛らしい声で鳴きました。
「にゃあん」
「シュシュもご機嫌なのね」
「さぁ、つぼみ姫。お水をたっぷりお浴び」
ドニおじいさんはジョウロから、冷たくておいしい水をつぼみ姫にかけてくれました。つぼみ姫は気持ちよさそうに体をふるわせました。
ドニおじいさんはつぼみ姫の華奢な茎や葉についた虫を、ひとつずつ丁寧に取ってくれました。すっかりきれいになると、ドニおじいさんはうーんと腰を伸ばし、すぐそばでおとなしく毛繕いをしていたシュシュに声をかけました。
「さて、そろそろお昼にするかな、シュシュ」
シュシュは嬉しそうにしっぽを振りました。
ドニおじいさんはつぼみ姫の隣のベンチに腰をおろすと、膝の上にサンドイッチの包みを広げ、シュシュと分け合って食べ始めました。
太陽はやわらかく寛大で、のんびりと空に浮かぶ雲が、つぼみ姫やドニおじいさんやシュシュのことを、あたたかく見守っているようでした。
つぼみ姫はそんな雲を眺めながら、ドニおじいさんに話しかけました。
「ねぇ、ドニおじいさん」
「なんだい」
「わたし、もしかしたらずっとつぼみのままでいなければいけないのじゃないかしら」
ドニおじいさんはかじりかけのサンドイッチを膝のナプキンの上に置くと、つぼみ姫に尋ねました。
「なぜそんな風に思うんだい?」
「昨日の晩、ここの花たちがわたしに言ったの。『あなたはほんとうに美しい世界に一つだけの花。だけど、いつまでたってもつぼみのままで、花としての値打ちも意味もありはしないわ。きっとあなたは一生つぼみのままでいるんだわ』って。わたし、ほんとうにずっとつぼみのままなのかしら」
つぼみ姫は悲しそうにうつむきました。
ドニおじいさんはつぼみ姫をいたわるように、優しく微笑んで言いました。
「心配しなくても大丈夫さ。いつかきっとつぼみは開くよ」
「でも、それはいつ?」
「時が来たらさ」
「その時はいつ?」
「準備が整ったときだよ」
「でも、わたしの準備はもう整っているわ。ねぇ、どうしてわたしは咲かないのかしら」
ドニおじいさんは困った顔で微笑みました。
「正直に言うと、なぜおまえさんがずっとつぼみのままなのか、わしにもその理由がわからんのだよ。だけど、これだけはわかる。おまえさんはいつかきっと、素晴らしい花を咲かせるよ。その時が来たら、おまえさんは誰よりも美しい花になる。その時のために、今はじっくり体の隅々まであたためて、力を蓄えておくんだよ」
つぼみ姫はドニおじいさんの言葉を黙って聞いていました。つぼみ姫はほんとうはちっとも納得なんてしていませんでしたが、困ったように微笑んで自分を見ているドニおじいさんを前にすると、何も言えなくなったのでした。
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