ある羊と流れ星の物語

ねこうさぎしゃ

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第二章

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 ヒツジは、昼間に見るネコの姿も好きでしたが、夜のネコはもっと好きでした。ただ間近でネコを見られるからというだけでなく、夜のネコはほんとうに魅力的な姿に変身したかのようなのです。今だって、ヒツジの前で、自分の前足に頬づえをついて寝そべっているネコの毛皮に、小屋のすき間からさしこむ月明かりがあたって、つやりとした不思議な光沢をはなっています。その光景は、ヒツジにはいくら眺めていても、決して見飽きることなどなさそうに思えるものでした。
 長い沈黙がつづき、さすがにヒツジはそろそろ不安になってきました。何か話しかけたほうがいいのだろうかと、やみくもに口をひらこうとしたとき、ネコが突然干し草の上に身を起こし、まっすぐにヒツジのほうへ向き直りました。
「ねぇ」
「なんだい?」
 いきなり声をかけられて、ヒツジはドギマギしながら返事をしました。ネコが自分に向き直って声をかけてくれたうれしさもありましたが、これからつづくネコの話に、気のきいた返答ができるかなという心配と、あるいはまた、もしかしてネコがやっぱり死にたがっているのだろうかという不安などが、ない交ぜとなって、一度にヒツジに押し寄せました。
「あなた、街に行ったことがある?」
 ヒツジがいろいろと想像していたことのどれともちがうネコの質問に、ヒツジは少しばかり面食らいながら、
「いや、街のことはよく知らないから、きっと行ったことはないんだろうね」
 と、答えました。
「きみは行ったことがあるのかい?」
「あら、おばかさんね」
 ネコは声をあげて笑いだしました。
「わたしは街から来たのよ。わたしたちはね、ここに来る前は街に住んでいたのよ。わたしは都会派だって前に言ったでしょ?」
「そうだったねぇ」
 ヒツジは感心してうなずきました。ネコはヒツジの知らないことばだけではなく、ヒツジの知らない世界のことまで知っているのです。
 ネコは感心したように自分を見つめるヒツジに気をよくし、まるでとっておきのおやつを分けてやるかのような調子で話し出しました。
「街はね、そりゃ素敵なところなのよ。欲しいものならなんでもそろっていて、おまけに夜でもそこらじゅう明るくて、とってもきれいなんだから」
「でも、ここだってじゅうぶん明るいし、きれいだと思うけどなぁ」
「ここが明るい? きれい、ですって?」
 ネコは目をみはってヒツジを見ました。
「うん、そうだよ。ほら、見てごらんよ」
 ヒツジはあごをあげて、小屋のすき間から見える星空を示しました。

 ネコはヒツジのさした夜空を、ぼうぜんとしたように見上げていましたが、やがてまったくこらえきれないといった様子で、クツクツと体を揺すりはじめました。そしてとうとうお腹を見せてひっくり返ると、大笑いをはじめました。
「あぁ、おかしい。ほんとうに、あんたっておばかさんね」
 ひとしきり笑ったあと、ネコはまた突然黙りこくって、深いため息をつきました。そして、ヒツジがおそれるあのことばを吐き出しました。
「あぁ、ほんとうにここにはうんざりだわ。わたし、死にたい気持ちでいっぱいよ。ここは退屈で仕方がないの。ネコ用のおいしいケーキもないし、わたしのこの毛をうんとすてきに見せるようにカットしてくれるお店もないし。まぁ、どんなにすてきにしたって、どっちみちここでは仕方がないけれど」
 ネコはそう言って、もう一度、憂鬱そうにため息をつきました。
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