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第四章

その7

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 そのとき、高い空の彼方から、一羽の純白のハトが舞い降りて来ました。ミシオン王子は一目見るなりそのハトがヴォロンテーヌであるとわかったのですぐに駆け寄りました。すると皆の見ている前で、ハトは元の人間のヴォロンテーヌの姿へ戻りました。人々はどよめいてヴォロンテーヌを見つめ、またその美しさに心を打たれました。彼女の美しさをよく知っているミシオン王子やリーデルですら、目を見張るほどの麗しさでした。
 ミシオン王子はヴォロンテーヌの手をそっと取って、今にも溶けそうに潤むヴォロンテーヌの蜂蜜の色をした瞳を見つめました。ヴォロンテーヌもミシオン王子の瞳をじっと見つめ返しました。どんな言葉よりも、雄弁に愛を物語る眼差しでした。
 ミシオン王子とヴォロンテーヌが見つめあっていると、天空からもう一羽、尊く光り輝くように美しい純白のハトが人々の頭上に舞い降りて来るのが見えました。
 ミシオン王子は、そのハトが大きさこそ違っているものの、戦場で嵐を起こして助けてくれたあのハトであることに気がつきました。そこでミシオン王子がそのハトに向かって感謝を表すために頭を下げると、そのハトは空中で大きく旋回するやいなや、いきなりルーメンの姿に変わりました。
 しかしそれは確かにルーメンだとわかるのですが、今や深く刻まれていた顔や手の皺はことごとく消え去り、曲がっていた腰はすっきりと伸び、粗末な衣服の代わりにゆったりと波打つように揺れる黄金の衣装を身につけていました。顔はまるで太陽のような眩しさで光り輝き、背中には目もくらむほどに白い大きな六枚の翼が生えていました。実は農夫だと思っていたルーメンは、天の王国で王のそば近くに仕える最高位の天使たちのひとりだったのです。

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