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第四章

その8

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 天使のあまりの輝きに、皆が畏れてひれ伏すと、厳かな、けれども慈愛に満ちた響きで天使が言いました。
「あなた方は今やはっきりと見ることができるだろう。さぁ、立って見なさい。このミシオン王子は、元は天の王国の主に仕える天使だったのだ。自ら望んで地上に降り、人間となって生まれたが、人の常として自らの魂を忘れ、痛みを避け、享楽的に生きていた。けれども自ら心に水をやることを求め、労を惜しまなかったおかげで、今や清らかな魂を思い出した」
 天使の言葉を聞いて、ミシオン王子は突然すべてを思い出しました。すると、たちまちにして王子の体は魂の輝きに満たされて、それが外にもあふれて眩しく辺りを照らしたので、一同はミシオン王子の足下に跪きました。
 天使は、皆と一緒に跪いていたヴォロンテーヌの手を取って立たせると、
「この娘は常に自分の魂の源がどこにあるかを忘れなかったので、清らかさを保ち、何事にも感謝を怠らず、その身の美しさに驕ることなく、自らの魂の声に従順であった。その美徳によって、真の王である天の主がご自身のおそば近くに召し上げられることをお決めになった」
 と言いました。皆は未だかつてない感動が体中を貫くのを感じ、こらえきれずに泣き出す者もいました。そのとき、ヴォロンテーヌが天使の前に跪き、低く頭を垂れて言いました。
「いと高きお方の恵みに与れる光栄に感謝します。わたくしは孤児として過ごしておりましたところを、農夫の父に引き取られて今日まで慈しまれて来たと思っていましたが、天におられるお方のみ使いによって慈しまれていたと知った今、どんな御心にも従うつもりですが、もしお許しいただけるならば、わたくしはミシオン王子のおそばにいて、王子をお助けしたいと思っています。どうかわたしが王子のおそばでお役に立つことをお許しいただけないでしょうか。とは言え、それももしも王子がお望みになるならですが……」
 それを聞いて、王子はヴォロンテーヌの隣に跪き、天使の前に身を低くして言いました。
「わたしからもお願い申し上げます。わたしはヴォロンテーヌを愛していますし、善き王となるためには、わたしの魂にはヴォロンテーヌの魂が必要なのです」
「それでは、あなた方の真の王に祈りなさい」
 天使が慈悲深い声で促し、ふたりは熱心に祈りました。ミシオン王子とヴォロンテーヌが真摯に祈る姿を見て、人々も気持ちを一つにして祈り始めました。

 すると突然、辺りには黄金の光が射し、朝焼けよりも荘厳で、草原の虎よりも威厳に満ち、満天の星々よりも美しい響きをたたえた声が、天上から地上に降ってきました。

「許す」

 その声に、皆の心は激しく震え、いよいよ感動してむせび泣きました。
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