死を待つ生贄令嬢ですが、冷徹な死神公爵に「君が死ぬまで離さない」と愛を刻まれました

腐ったバナナ

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4話

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「――お姉様! 早くそこをどいてくださる?」

 公爵邸の重厚なエントランスに、場違いな甲高い声が響き渡りました。 現れたのは、華美なドレスに身を包んだエリスの異母妹、イザベラでした。彼女は実家の没落を予感し、自ら「次の生贄(妻)」としてアルカード公爵に取り入ろうと乗り込んできたのです。

 広間に呼び出されたエリスは、イザベラの姿を見て、かつての虐待の記憶に体を震わせました。

「イザベラ……どうしてここに……」

「どうしてですって? お父様から聞いたわ。お姉様、まだ死んでいないのでしょう? 死神公爵様に気に入られたなんて、そんな不吉な力で誘惑するなんて汚らわしいわ!」

 イザベラはエリスの頬を叩こうと、勢いよく手を振り上げました。 しかし、その手は空中で、鋼鉄のような力によって止められました。

「私の邸で、私の番に手を上げようとは……。命が惜しくないようだな」

 いつの間にかエリスの背後に立っていたアルカードが、イザベラの手首を握り潰さんばかりの力で掴んでいました。

「ひ……っ、あ、アルカード公爵様! 違うのです、私はお姉様を教育しに……。それより見てください! 私の胸元にも、聖なる痣が浮かび上がったのです!」

 イザベラは得意げにドレスの胸元をはだけました。 そこには、エリスのものと同じ「黒い百合」の痣がありました。エリスに与えていた呪いが、アルカードの手によって実家へと逆流し始めた証です。

「イザベラ、それ……まさか呪いが……っ」

 エリスが心配そうに身を乗り出そうとすると、アルカードはそれを遮るように彼女を自分の胸に抱き寄せ、深く鼻腔を埋めました。

「エリス、惑わされるな。……これが見えるか、イザベラと言ったか。貴様の頭上には、無様な『数字』が浮かんでいるぞ」

 アルカードの瞳が銀色に冷たく光ります。死神の眼は、イザベラの寿命を正確に捉えていました。

「余命、三日。……貴様がエリスに与えた苦痛の総量が、そのまま貴様の命を削っているのだ。今の貴様は、ただの『死に損ないの肉塊』に過ぎん」

「な……三日!? 嘘よ! これは聖女の……っ」

「セバス、この女を叩き出せ。庭の隅にでも転がしておけ。死に際の泥を啜る音が、エリスの安眠を妨げない場所にな」

 アルカードの命により、イザベラは悲鳴を上げながら衛兵たちに引きずり出されていきました。

 静かになった広間で、エリスは自らの呪いの痣を押さえ、呆然としていました。 自分を虐げた妹が死に向かっている。その恐怖と悲しみが混ざり合う中、アルカードはエリスを後ろから優しく、しかし逃がさない強さで抱きしめました。

「怯えるな、エリス。君を苦しめる連鎖は、私がすべて断ち切る。……その代わりに、君の視界には、私以外の男も女も映すな」

 アルカードは、エリスの首筋に深く、刻印を刻むような接吻を落としました。 妹の絶望的な叫びが外から聞こえる中、エリスはアルカードの強すぎる魔力の熱に、抗いようもなく溺れていくのでした。
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