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14話
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大陸の北端。吹雪が荒れ狂い、生ける者の体温を奪う絶望の地。 その最果てにある、クリスタルのように透き通った巨大な城塞――「氷の聖域」に、二人はたどり着きました。
「……ここが、私の生まれた場所だ」
アルカード様はエリスを毛布に包んだまま抱き上げ、冷たい回廊を歩みます。 そこには、アルカード様によく似た面影を持つ、しかし感情を失い石像のように凍りついた「一族の残骸」がいくつも安置されていました。
「公爵様……これ、は……?」
「死神と呼ばれた私の一族は、その強すぎる魔力を抑えるために、最後は自らを凍らせて聖域の楔となる運命にある。……私も、君に出会わなければ、いつかここで独り、氷の柱になるはずだった」
アルカード様の告白に、エリスは彼を抱きしめる手に力を込めました。 孤独に死ぬはずだった男と、孤独に死ぬはずだった女。 二人が出会ったのは、奇跡ではなく、お互いの欠落が引き寄せ合った必然だったのです。
しかし、その静寂は長くは続きませんでした。 聖域の分厚い氷の扉が、外側から巨大な衝撃でひび割れます。
「――逃げ場を間違えたな、アルカード! その聖域こそ、神を降臨させるための巨大な祭壇なのだ!」
教団の教祖が、数千の信徒と魔獣を従えて現れました。 教祖の手には、エリスの実家――ローウェル家が代々保管していたという「神の心臓」と呼ばれる魔道具が握られていました。
「エリスの中の神気と、この聖域に眠る死神たちの魔力。それが合わさった時、世界は無へ還り、新たな理が生まれる! さあ、その娘を差し出せ!」
カシアンが必死に防御魔法を展開しますが、教団の物量と「神の心臓」の圧力に、結界が次々と砕かれていきます。
「アルカード! このままじゃ全員共倒れだ! 聖域の力を解放しろ! そうすれば敵を吹き飛ばせる。だが……それをすれば、君自身も氷の楔になっちまうぞ!」
カシアンの叫びが響く中、アルカード様は静かにエリスを降ろしました。 彼はエリスの頬を両手で包み、その銀色の瞳に、これまでにないほど深く、穏やかな愛を湛えました。
「エリス。……君を、生贄にはさせない。君を死なせないために、私は死神になったのだから」
「待ってください、公爵様! 一緒にいると言ったではありませんか! 私を置いていくなら、私は今ここで……っ」
エリスが叫び、自らの首筋に爪を立てようとしたその時、アルカード様は彼女の意識を魔力で優しく奪いました。
「……すまない、エリス。私のいない世界で、君が泣くのは分かっている。だが、死なれるよりは、私を恨んで生きてくれる方がいい」
アルカード様は大剣を氷の床に突き立て、自らの全魔力を聖域へと流し込み始めました。 彼の肌が次第に白く凍りつき始め、凄まじい冷気が教団の軍勢を飲み込んでいきます。
「愛している、エリス。……私の命、私の心臓。……永遠に、私のものだ」
アルカード様の姿が完全に氷に包まれようとしたその瞬間、眠らされたはずのエリスの目から、一筋の涙がこぼれ落ちました。
「……ここが、私の生まれた場所だ」
アルカード様はエリスを毛布に包んだまま抱き上げ、冷たい回廊を歩みます。 そこには、アルカード様によく似た面影を持つ、しかし感情を失い石像のように凍りついた「一族の残骸」がいくつも安置されていました。
「公爵様……これ、は……?」
「死神と呼ばれた私の一族は、その強すぎる魔力を抑えるために、最後は自らを凍らせて聖域の楔となる運命にある。……私も、君に出会わなければ、いつかここで独り、氷の柱になるはずだった」
アルカード様の告白に、エリスは彼を抱きしめる手に力を込めました。 孤独に死ぬはずだった男と、孤独に死ぬはずだった女。 二人が出会ったのは、奇跡ではなく、お互いの欠落が引き寄せ合った必然だったのです。
しかし、その静寂は長くは続きませんでした。 聖域の分厚い氷の扉が、外側から巨大な衝撃でひび割れます。
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カシアンが必死に防御魔法を展開しますが、教団の物量と「神の心臓」の圧力に、結界が次々と砕かれていきます。
「アルカード! このままじゃ全員共倒れだ! 聖域の力を解放しろ! そうすれば敵を吹き飛ばせる。だが……それをすれば、君自身も氷の楔になっちまうぞ!」
カシアンの叫びが響く中、アルカード様は静かにエリスを降ろしました。 彼はエリスの頬を両手で包み、その銀色の瞳に、これまでにないほど深く、穏やかな愛を湛えました。
「エリス。……君を、生贄にはさせない。君を死なせないために、私は死神になったのだから」
「待ってください、公爵様! 一緒にいると言ったではありませんか! 私を置いていくなら、私は今ここで……っ」
エリスが叫び、自らの首筋に爪を立てようとしたその時、アルカード様は彼女の意識を魔力で優しく奪いました。
「……すまない、エリス。私のいない世界で、君が泣くのは分かっている。だが、死なれるよりは、私を恨んで生きてくれる方がいい」
アルカード様は大剣を氷の床に突き立て、自らの全魔力を聖域へと流し込み始めました。 彼の肌が次第に白く凍りつき始め、凄まじい冷気が教団の軍勢を飲み込んでいきます。
「愛している、エリス。……私の命、私の心臓。……永遠に、私のものだ」
アルカード様の姿が完全に氷に包まれようとしたその瞬間、眠らされたはずのエリスの目から、一筋の涙がこぼれ落ちました。
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