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13話
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エリスが目を覚ました時、視界に入ったのは揺れる馬車の天井と、自分を抱きしめるアルカード様の重厚な鎧の冷たさでした。
「気がついたか、エリス。……少し急だが、家を捨てることにした」
「……え? 捨てるって、あの邸を……?」
驚くエリスをよそに、馬車は嵐の夜道を猛スピードで駆け抜けていました。 アルカード様の銀色の瞳には、かつてないほどの緊張が走っています。カシアンが御者台で必死に馬を操り、背後からは「冥王教団」の放った魔獣たちの遠吠えが迫っていました。
「君の力が目覚めたことで、教団の教祖――『虚無の司祭』が自ら動き出した。奴らは君を神の器として奪い、この世界の魔力をすべて吸い尽くすつもりだ。……あんな薄汚い連中に、君の指一本触れさせるわけにはいかない」
「でも、公爵様……私のために貴方の地位も、すべてを失ってしまうなんて……」
エリスが悲痛な声を上げると、アルカード様は彼女の唇を指で制し、そのまま深く、吸い付くような接吻を落としました。
「地位など、君の髪一房の価値もない。……私たちは、大陸の北端にある『氷の聖域』へ向かう。そこは私の魔力と君の神気が共鳴する場所。そこなら、世界の理から外れて二人だけで生きられる」
その時、馬車に大きな衝撃が走りました。
「――見つけたぞ。至高の生贄と、愚かな死神よ」
空が割れたかのような轟音と共に、馬車の屋根が魔法で吹き飛ばされました。 漆黒の法衣を纏った教祖が、虚空に浮かび、冷笑を浮かべてエリスを見下ろしています。
「その娘を渡せ、アルカード。彼女の神聖な血は、我が神を降臨させるための最後の一滴なのだ」
「……地獄へ堕ちろ。ここは私の領域だ」
アルカード様はエリスを座席に押し倒すと、身を乗り出して大剣を振るいました。 彼の魔力とエリスの神気が、逃避行の極限状態で混ざり合い、馬車の周囲に凄まじい衝撃波を巻き起こします。
「カシアン! 結界を最大にしろ! 止まるな、突き進め!」
「言われなくてもやってるよ! だがな、アルカード……その娘を守り抜くってことは、人類すべてを敵に回すってことだぞ! 分かってるのか!」
「ああ、望むところだ。――エリス、私を見ろ」
激しい戦火の中、アルカード様はエリスの両手を握り、彼女の耳元で愛を刻みつけました。
「世界が君を欲しがるなら、私はその世界を焼き尽くす。君が私の檻を望むなら、私は世界そのものを君の檻に変えてやろう。……君の鼓動がある限り、私は最強だ」
エリスは、血の匂いとアルカード様の体温に包まれながら、不思議なほど静かな幸福を感じていました。 もう、戻る場所なんてない。自分を「不吉」と呼んだ家族も、自分を「生贄」とした社会も、すべてが嵐の向こうへ消えていく。
エリスはアルカード様の首に腕を回し、自ら深く、その狂愛に身を委ねました。
「気がついたか、エリス。……少し急だが、家を捨てることにした」
「……え? 捨てるって、あの邸を……?」
驚くエリスをよそに、馬車は嵐の夜道を猛スピードで駆け抜けていました。 アルカード様の銀色の瞳には、かつてないほどの緊張が走っています。カシアンが御者台で必死に馬を操り、背後からは「冥王教団」の放った魔獣たちの遠吠えが迫っていました。
「君の力が目覚めたことで、教団の教祖――『虚無の司祭』が自ら動き出した。奴らは君を神の器として奪い、この世界の魔力をすべて吸い尽くすつもりだ。……あんな薄汚い連中に、君の指一本触れさせるわけにはいかない」
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エリスが悲痛な声を上げると、アルカード様は彼女の唇を指で制し、そのまま深く、吸い付くような接吻を落としました。
「地位など、君の髪一房の価値もない。……私たちは、大陸の北端にある『氷の聖域』へ向かう。そこは私の魔力と君の神気が共鳴する場所。そこなら、世界の理から外れて二人だけで生きられる」
その時、馬車に大きな衝撃が走りました。
「――見つけたぞ。至高の生贄と、愚かな死神よ」
空が割れたかのような轟音と共に、馬車の屋根が魔法で吹き飛ばされました。 漆黒の法衣を纏った教祖が、虚空に浮かび、冷笑を浮かべてエリスを見下ろしています。
「その娘を渡せ、アルカード。彼女の神聖な血は、我が神を降臨させるための最後の一滴なのだ」
「……地獄へ堕ちろ。ここは私の領域だ」
アルカード様はエリスを座席に押し倒すと、身を乗り出して大剣を振るいました。 彼の魔力とエリスの神気が、逃避行の極限状態で混ざり合い、馬車の周囲に凄まじい衝撃波を巻き起こします。
「カシアン! 結界を最大にしろ! 止まるな、突き進め!」
「言われなくてもやってるよ! だがな、アルカード……その娘を守り抜くってことは、人類すべてを敵に回すってことだぞ! 分かってるのか!」
「ああ、望むところだ。――エリス、私を見ろ」
激しい戦火の中、アルカード様はエリスの両手を握り、彼女の耳元で愛を刻みつけました。
「世界が君を欲しがるなら、私はその世界を焼き尽くす。君が私の檻を望むなら、私は世界そのものを君の檻に変えてやろう。……君の鼓動がある限り、私は最強だ」
エリスは、血の匂いとアルカード様の体温に包まれながら、不思議なほど静かな幸福を感じていました。 もう、戻る場所なんてない。自分を「不吉」と呼んだ家族も、自分を「生贄」とした社会も、すべてが嵐の向こうへ消えていく。
エリスはアルカード様の首に腕を回し、自ら深く、その狂愛に身を委ねました。
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