『冷徹公爵との【愛なし契約結婚】は、溺愛の家族愛に変わりました~「地味で何の価値もない」と捨てた実家は、もう遅い

腐ったバナナ

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10話

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 エミリアが公爵の疲労を癒やすために、深夜、そっとスープを差し入れて以来、公爵はエミリアに対する警戒心を完全に解いた。彼は、エミリアの「癒やし」の力を、もはや「妻の役割」ではなく、「自分にとって必要不可欠な温もり」として受け入れ始めていた。

 公爵は、エミリアに対し、正式な許可を出した。

「エミリア。君の献立の助言は、私の健康に寄与している。感謝する。これからは、アルフレッドへの間接的な指導も許可する」

 公爵はさらに、意外な提案をした。

「明日、領都へ向かう。アルフレッドも連れて行く。君も同行しろ」

 エミリアは驚いた。公爵は人目を避ける性格で、アルフレッドを公の場に連れ出すことは稀だった。

「公爵様、よろしいのですか?」

 公爵は、エミリアを真っ直ぐに見つめ、その瞳に強い光を宿した。

「アルフレッドは、君に心を開いた。これからは、彼に家族の温かい世界を見せてやらねばならない。そして、君は私の妻だ。私の家族を、世間に示す義務がある」

 公爵の心の声:(彼女の温もりを独占したい。そして、彼女がアルフレッドと共にいる姿を、誰もが見るべきだ。彼女は、私のものだ)

 その心の声は、以前の「警戒」から、「独占欲」へと完全に変質していた。

 翌日、エミリアは、公爵、アルフレッドと共に馬車に乗り、領都へと向かった。

 馬車の中で、アルフレッドはエミリアの隣に座り、安心しきった様子で窓の外を眺めていた。公爵は、アルフレッドとは対角線上の席に座っていたが、その視線は常にエミリアとアルフレッドの二人を追っていた。

 領都の市場は、王都とは違い、活気がありながらも平和で落ち着いていた。公爵が姿を現すと、領民は恭しく道を空けるが、その表情には恐怖ではなく、深い敬意が浮かんでいた。

 公爵は、エミリアに市場を案内させた。エミリアは、ハーブや食材の知識を生かし、領民たちと和やかに会話を交わす。アルフレッドは、エミリアの手をしっかりと握り、好奇心いっぱいの目で、様々なものを見て回った。

「お母様、このハーブは、何に効くの?」

 アルフレッドは、以前の暗い影を潜め、元気な子供の顔になっていた。

 エミリアがアルフレッドに優しく答えていると、公爵は二人の傍に寄り添い、エミリアの腰に手を回した。

「エミリア。疲れていないか。アルフレッド、あまり妻を困らせるな」

 公爵の心の声:(誰も、私の妻に近づくな。彼女の優しさも、温もりも、この家族だけのものだ)

 公爵の強い独占欲と、愛情の表れに、エミリアは頬を染めた。この公の場での行動は、彼女が「飾りの妻」ではなく、「公爵の愛する妻」であることを、領民に示すためのものだった。

 公爵は、エミリアとアルフレッドの手を握り、連れ立って街を歩いた。その姿は、冷酷な公爵が築き上げた、最も温かく、揺るぎない「家族」の姿だった。

 その日の午後、公爵はエミリアに二人きりの時間を要求した。

「エミリア。契約期間は二年だ。しかし、この二年が、愛のない形式的な時間で終わることは、私には許せない。君の温もりは、私とアルフレッドにとって、生きるための光だ」

 公爵は、エミリアの手を取り、その瞳を深く見つめた。

「君の優しさは、アルフレッドのものだけではない。私だけの温もりを、私に与えてくれ。契約を、家族の絆へと変えたい」

 公爵の言葉は、以前の「疲労回復」という逃げ口上を捨て、「愛」を求めるストレートな要求となっていた。エミリアは、公爵の拗らせた愛を受け入れ、この契約結婚を真の家族の愛に変えることを決意した。
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