『冷徹公爵との【愛なし契約結婚】は、溺愛の家族愛に変わりました~「地味で何の価値もない」と捨てた実家は、もう遅い

腐ったバナナ

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11話

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 公爵とアルフレッドの愛を独占し始めたエミリアだったが、公爵の愛は、冷徹さと情熱が同居する、非常に拗らせたものだった。公爵は、エミリアに「私の妻としての役割を果たせ」と命じながら、彼女への強い独占欲を隠さなかった。

 ある日、公爵はエミリアに、王都の貴族が主催する夜会への出席を命じた。

「エミリア。君は私の妻だ。社交界での体裁を保つ『飾りの妻』という役割を果たす義務がある」

 公爵は冷たい声で命じた。

 公爵の心の声:(彼女の才能と美しさを、王都の愚か者たちに見せつけたい。だが、他の男の視線が、すでに私を苛立たせている)

 エミリアは、公爵の内心の矛盾に気づきながらも、彼の隣に立つことを承諾した。彼女は、王都にいた頃よりもずっと上質なドレスを身にまとい、公爵と共に夜会へ向かった。

 夜会は、公爵夫妻の登場で静まり返った。「氷の公爵」が、「地味で何の価値もない」と噂されていた妻を連れて現れたからだ。

 公爵は、エミリアの腰に手を回し、終始、彼女を自身の傍から離そうとしなかった。

 しかし、エミリアの穏やかで優雅な立ち振る舞いと、彼女の聡明さを察知した数人の貴族が、公爵の許可を得てエミリアに挨拶に近づいた。

 その中の一人、若くハンサムな伯爵が、エミリアに丁重な挨拶を捧げた。

「ノースウッド公爵夫人。辺境の魔物対策について、奥様の貴重なご意見を伺いたく……」

 公爵の心の声:(触れるな。私の妻の優しさを利用しようとするな。私の妻の視線は、私だけのものだ!)

 公爵の独占欲は、あっという間に理性の限界を超えた。

 公爵は、その伯爵の会話を、冷徹な一言で遮った。

「失礼。私の妻は、今夜は社交よりも休息を必要としている。君のような若い男の浅薄な会話に付き合わせる義務はない」

 公爵は、エミリアの手を引き、その場から立ち去った。彼は、夜会の主催者に一言も挨拶をせず、そのまま邸宅へと戻り始めた。

 馬車の中で、エミリアは公爵の異常なまでの剣幕に、戸惑いを隠せなかった。

「公爵様。わたくし、何か失礼なことを……」

「君は何も悪くない」

 公爵は、エミリアの肩を強く引き寄せ、彼女の頭を自分の胸に押し付けた。

「あの男たちの視線が、不快だった。君の優しさや才能を、私から奪おうとする視線が。君は、私の妻だ。そして、アルフレッドの母親だ。君は、私とアルフレッドの温もりを築くことに、専念すればいい」

 公爵は、エミリアの髪を優しく撫で、その耳元で囁いた。

「もう二度と、君を他人の目に晒すことはしない。君の存在は、私の秘密の宝だ。秘密は、誰にも見られてはいけない」

 公爵の言葉は、独占欲に満ちた支配だったが、それは同時に、「あなたを誰にも傷つけさせない」という、深い愛と庇護の誓いでもあった。

 エミリアは、公爵の冷たい軍服の下にある情熱的な心を感じた。彼女にとって、この公爵の拗らせた愛の独占こそが、王都の虚飾とは違う、揺るぎない安心感だった。

「公爵様。わたくしの心は、この馬車の中、あなたの腕の中にございます。どこへも行きません」

 エミリアの言葉に、公爵は深く安堵した。彼は、馬車が邸宅に着くまでの間、決してエミリアを腕から離そうとはしなかった。
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