「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ

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1話

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 王都の最も華やかな広間、王宮の星辰の間。それは、伯爵令嬢クラウディア・ヴァレリアにとって、人生の全てが終わる場所となった。

 壇上の王太子、アルバートは、銀髪の美しい側室――クラウディアの妹であるリリアンを隣に立たせ、冷たい声でクラウディアを断罪した。

「クラウディア・ヴァレリア。貴様との婚約を、ここに破棄する!」

 クラウディアは、頭を下げる必要すらないと悟っていた。彼女の顔は、驚きではなく、深い疲労と諦念に染まっていた。

「理由は明白だ。貴様は地味で無能。王妃としての華やかさも、国庫を潤す才も、何一つ持ち合わせていない!その上、王宮の権威を貶めるほど、地味で目立たない。真の聖なる光を纏うリリアンこそ、我が王妃にふさわしい!」

 隣でリリアンが、涙ぐむふりをして、芝居がかった優雅さでクラウディアを見下ろした。

「お姉様、ごめんなさい。わたくしの光が、あまりにも強すぎたばかりに……」

 クラウディアは、ただ静かに妹と元婚約者を見つめた。彼らが「地味で無能」と呼ぶ彼女の才能――「絶対鑑定」のスキルは、目の前の王太子が、国の財政を破綻させるほどの無能であること、そして妹リリアンがただの浪費家であることを、とっくに見抜いていた。

「承知いたしました、王太子殿下」

 クラウディアは、感情を排した声で答えた。

「婚約は破棄させていただきます」

 王太子は、その素直すぎる態度に拍子抜けした顔をした。

「……フン。分かればよろしい。貴様は今日をもって王都から追放だ。ただし、貴様をただ放り出すわけにはいかぬ。貴様には最後の利用価値がある」

 王太子の口から出たのは、この国の誰もが恐れる人物の名前だった。

「貴様は、国境の『氷壁公爵』こと、アレクシス・グレイヴナー公爵に嫁ぐのだ。奴の領地は魔物の巣。貴様のような無能な厄介払いこそ、あのような呪われた地にふさわしい」

 アレクシス・グレイヴナー公爵。

 彼は、国の北の辺境を守る、年の離れた寡黙な公爵だ。彼は強力な力を持つが、妻と息子を魔物と、そして王都の裏切りで失って以来、感情を捨て去ったように冷酷になったと噂されていた。人々は彼を「氷壁」と呼び、恐れていた。

 魔物の巣へのお飾り。それが、クラウディアに残された最後の道だった。

 リリアンは、勝利の微笑みを浮かべた。

「お姉様、どうか辺境でも、公爵様のお荷物にならないよう、頑張ってくださいね」

 クラウディアは、もはや怒りも悲しみも感じなかった。むしろ、安堵していた。王都の醜悪な裏切りと、欺瞞に満ちた生活から、ようやく解放されるのだ。

「ご心配なく、リリアン。わたくしは、もう二度と、あなた方の視界に入ることはありません」

 クラウディアは、誰にも気付かれぬよう、ポケットに忍ばせていた経理の帳簿の控えを強く握りしめた。それが、彼女が王都から持ち出す、唯一の武器だった。

 冷たい王都から、より冷たいと噂される公爵の領地へ。クラウディアの人生は、絶望のまま続いていくかに見えた。しかし、彼女の心には、王都では誰も見向きもしなかった地味な才能が、密かに燃え始めていた。
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