「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ

文字の大きさ
5 / 18

5話

しおりを挟む
 アレクシス公爵は、クラウディアの「絶対鑑定」の力を知って以来、彼女への態度を一変させた。冷徹さは保ちつつも、それはもはや警戒ではなく、彼女の才能を誰にも渡すまいとする、静かなる執着へと変わっていた。

 彼の執務室には、毎日クラウディアが作った節約料理が運ばれた。公爵はそれを黙って平らげ、以前のように手つかずで残すことはなくなった。食事は別々という契約も、形骸化しつつあった。

 ある日、クラウディアは領内の地図と資料を広げ、公爵に報告していた。

「公爵様。領内で魔物の群生地として避けられている『絶望の谷』ですが、鑑定した結果、地面に含まれる鉱石に、非常に高い魔力反応があります」

 公爵は眉をひそめた。

「あの鉱石か。あれは『毒鉱石』として知られている。触れるだけで病になる。使い道はない」

「いいえ」クラウディアは静かに訂正した。「王都の研究ではそうですが、わたくしの鑑定によれば、この鉱石は『イソルの薬草』と合わせて一定の高温で加工することで、毒性を完全に除去できます。そして、その加工後の鉱石は、王都のどの素材よりも強力な魔導具の核になります」

 公爵は、思わず身を乗り出した。魔導具は辺境の防衛に不可欠だが、王都からの供給は不安定だった。

「その真偽は?」

「わたくしの『最適化』スキルがそう導きました。この鉱石は、公爵様の冷気の魔力と相性が良い。もし成功すれば、辺境は王都に頼らない、自前の魔導具供給源を持つことになります」

 公爵は、クラウディアの顔をじっと見つめた後、深く息を吐いた。

「クラウディア。君は、私にあまりにも多くの希望を与える」

 公爵は即座に指示を出した。クラウディアの指示通りに、鉱石採掘部隊と、魔導具開発に長けた職人を招集。クラウディアの指揮のもと、極秘裏に「毒鉱石の加工実験」が始まった。

 実験は成功した。

 クラウディアの指示通りの配合と温度で加工された鉱石は、毒性を完全に失い、深みのある青い輝きを放つ、美しい青魔鉱となった。

 この鉱石で作られた魔導具は、従来のものの三倍の耐久性と魔力効率を持っていた。辺境の防衛力は劇的に向上し、公爵領の財政は潤い始めた。

 その夜、公爵はいつものようにクラウディアの部屋を訪れた。彼は、上着だけでなく、常に着用していた手袋も外していた。彼の手に残る、深い火傷のような傷跡が見える。

「クラウディア。君は、私に最高の贈り物をしてくれた」公爵は、その傷ついた手で、クラウディアの頬を優しく包んだ。

「公爵様のお役に立てたのなら、光栄です」

「お飾りどころか、君はこの領地の光だ」

 公爵の声は、以前の冷徹さとは違い、深い響きを持っていた。

「君の才能は、王都の者どもには永遠に理解できぬ、真の至宝だ」

 公爵は、クラウディアを抱きしめた。彼の体はまだ冷たかったが、その抱擁には、以前の事務的なものとは違う、静かで重い情熱が込められていた。

「この成功の報は、すぐに王都に届くだろう。王太子は、君が『無能』ではなかったことを知り、必ず後悔する」

 公爵の金色の瞳に、強い光が宿る。

「だが、安心していい。君の才能は、この先もずっと、俺だけのものだ。誰も、君から一欠片たりとも奪わせない。君が私に温もりを与えてくれたように、今度は俺が、君の全てを守り抜く」

 王都の冷遇の中で凍えていたクラウディアの心は、公爵の静かなる独占欲という炎によって、ゆっくりと、しかし確実に溶かされ始めていた。彼女にとって、この年の差の公爵の愛情こそが、最も重く、そして最も確かな温もりだったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...