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実家が跡形もなく(社会的に)消し飛ばされた後。 公爵邸には、かつてないほどの穏やかで、それでいて密やかな熱を孕んだ時間が流れていました。
ですが、私の心には一つだけ、澱(おり)のように残っていることがありました。 それは、私がこの世界の「アリア」ではないという事実。
(……いつまでも黙っていられないわよね。旦那様は私の『心の声』を聞いている。でも、私が時々思い出す『日本のコンビニ』とか『スマホ』とか『ニート生活』の断片を、彼はどう思っているのかしら……)
その日の夜。寝室で髪を梳いてくれているギルバート様に、私は意を決して切り出しました。
「旦那様……。いえ、ギルバート様。私の『心の声』に混じる、見たこともない景色のこと……不思議に思いませんか?」
ギルバート様の手が止まりました。 鏡越しに視線が絡み合います。彼の瞳は、夜の海のように深く、すべてを見透かすようです。
「……ああ。お前の脳内には、時折この世界には存在しない概念が溢れている。……『前世』、と言っていたな」
(やっぱりバレてたーーー!! エスパー冷蔵庫、有能すぎて怖い!)
私は観念して、ポツリポツリと話し始めました。 自分が異世界から来たこと。本当は「完璧な公爵夫人」なんてガラじゃない、ただのズボラな人間であること。そして、最初は離婚してスローライフを送ることしか考えていなかったこと。
「……私は、あなたの愛した『アリア』ではないのかもしれません。中身はただの、怠惰な別の魂なんです」
俯く私の肩を、彼の大きな手が包み込みました。 そして、耳元で低く、けれど確信に満ちた声が囁かれます。
「そんなことは、最初から分かっていた」
「え……?」
「俺が惹かれたのは、ベルシュタイン家の操り人形だった『アリア』ではない。……脳内で俺を罵倒し、パンケーキに命を懸け、俺の顔を見て『エロい』と悶絶する、正体不明の『お前』だ」
(……旦那様……。それ、最高の告白なんだけど、最後の一言が余計よ! 恥ずかしすぎてまた脳内が大爆発しちゃうじゃないの!)
ギルバート様は私の首筋に顔を埋め、深く、深く呼吸をしました。
「魂がどこから来ようと関係ない。……お前がどこの世界の女だろうと、俺が見つけた以上、もう逃がさない。死んでも、その魂ごと俺の檻(はこにわ)に閉じ込めてやる」
(……あ、これ本気だ。本気のヤンデレだわ。でも、不思議と怖くない。……むしろ、魂ごと愛してくれるなんて、前世でも今世でも、この人だけなんだもの)
私は諦めたように、彼の方へと向き直りました。
「……分かりました。もう逃げません。その代わり、一生私の騒がしい脳内に付き合ってもらいますからね。……愛してます、私の『専用冷蔵庫』さん」
「……ふん。その呼び方は、寝室以外では禁止だ」
彼はそう言って、私の唇を塞ぎました。 脳内に流れ込むのは、もはや毒舌でも皮肉でもなく、ただ純粋な、互いを求める甘い熱情だけ。
こうして、秘密を共有した二人の「真の結婚生活」が、幕を開けたのでした。
ですが、私の心には一つだけ、澱(おり)のように残っていることがありました。 それは、私がこの世界の「アリア」ではないという事実。
(……いつまでも黙っていられないわよね。旦那様は私の『心の声』を聞いている。でも、私が時々思い出す『日本のコンビニ』とか『スマホ』とか『ニート生活』の断片を、彼はどう思っているのかしら……)
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「旦那様……。いえ、ギルバート様。私の『心の声』に混じる、見たこともない景色のこと……不思議に思いませんか?」
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「……ああ。お前の脳内には、時折この世界には存在しない概念が溢れている。……『前世』、と言っていたな」
(やっぱりバレてたーーー!! エスパー冷蔵庫、有能すぎて怖い!)
私は観念して、ポツリポツリと話し始めました。 自分が異世界から来たこと。本当は「完璧な公爵夫人」なんてガラじゃない、ただのズボラな人間であること。そして、最初は離婚してスローライフを送ることしか考えていなかったこと。
「……私は、あなたの愛した『アリア』ではないのかもしれません。中身はただの、怠惰な別の魂なんです」
俯く私の肩を、彼の大きな手が包み込みました。 そして、耳元で低く、けれど確信に満ちた声が囁かれます。
「そんなことは、最初から分かっていた」
「え……?」
「俺が惹かれたのは、ベルシュタイン家の操り人形だった『アリア』ではない。……脳内で俺を罵倒し、パンケーキに命を懸け、俺の顔を見て『エロい』と悶絶する、正体不明の『お前』だ」
(……旦那様……。それ、最高の告白なんだけど、最後の一言が余計よ! 恥ずかしすぎてまた脳内が大爆発しちゃうじゃないの!)
ギルバート様は私の首筋に顔を埋め、深く、深く呼吸をしました。
「魂がどこから来ようと関係ない。……お前がどこの世界の女だろうと、俺が見つけた以上、もう逃がさない。死んでも、その魂ごと俺の檻(はこにわ)に閉じ込めてやる」
(……あ、これ本気だ。本気のヤンデレだわ。でも、不思議と怖くない。……むしろ、魂ごと愛してくれるなんて、前世でも今世でも、この人だけなんだもの)
私は諦めたように、彼の方へと向き直りました。
「……分かりました。もう逃げません。その代わり、一生私の騒がしい脳内に付き合ってもらいますからね。……愛してます、私の『専用冷蔵庫』さん」
「……ふん。その呼び方は、寝室以外では禁止だ」
彼はそう言って、私の唇を塞ぎました。 脳内に流れ込むのは、もはや毒舌でも皮肉でもなく、ただ純粋な、互いを求める甘い熱情だけ。
こうして、秘密を共有した二人の「真の結婚生活」が、幕を開けたのでした。
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