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13話
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(……もう、外歩けないわよ。ちょっと旦那様の背中を見ただけで、空中に『薔薇を背負った美形ビジョン』が浮かび上がるんだもの)
私の脳内プロジェクションマッピングに公爵邸が騒然となる中、とんでもない事件が発生しました。 カシウス家に代々伝わる「青い涙のブローチ」が、宝物庫から盗まれたのです。
「アリア、落ち着いて思い出してくれ。昨日、宝物庫の近くで誰かとすれ違わなかったか?」
ギルバート様に真剣な顔で尋ねられ、私は記憶を辿ります。
(昨日……。あ、そういえば夕方、庭の方から変な男が歩いてくるのを見たような。……よし、出すわよ。脳内再生、スタート!)
私が強く念じると、空間にゆらゆらとセピア色の映像が浮かび上がりました。
「おお……! まるで活動写真のようですな!」
家令のセバスチャンさんが感心する中、映像には怪しい男が映し出されます。……が。
(あ、待って。私の記憶、ちょっと補正がかかってる……!)
映像の中の犯人は、なぜか「悪の美形貴族風」に美化され、マントを翻して「フハハハ!」と高笑いしながら、スローモーションで逃走していました。
「……アリア。犯人はこんなにスタイリッシュだったのか?」
「い、いえ……! 多分、実際はもっとこう……ネズミみたいな小男だったはずです! 私の脳が勝手に『悪役は美しくあるべき』って加工しちゃっただけで!」
(やだ恥ずかしい! 犯人の顔まで自分好みに美化して再生しちゃうなんて、私の脳内、乙女ゲーム脳がすぎるわよ!!)
「……いや、待て。この男の指先を見ろ。……この紋章の指輪、見覚えがあるぞ」
ギルバート様が、映像の中の(無駄にかっこいい)犯人の手を指差しました。 そこには、先日実家と共に失脚したはずの、隣国の成金貴族の残党が使う紋章が刻まれていたのです。
「よし、アリア。そのまま映像を維持してくれ。犯人の逃走経路を特定する」
(了解! ……でも、映像を続けると、その……私の『妄想の続き』が流れちゃうんだけど……!)
私の静止も聞かず、ギルバート様は映像を凝視します。 すると、犯人が角を曲がった直後、映像は急にピンク色のエフェクトに包まれ、「犯人を華麗に倒し、私を抱きかかえて『怪我はないか、俺の可愛い子猫ちゃん』と囁くギルバート様」のイメージに切り替わりました。
「「「………………」」」
応接室に、深い、深い沈黙が流れます。
「……アリア」
「……はい」
「俺は、お前の前で一度も『子猫ちゃん』などと言った覚えはないのだが」
(死にたい!! 今すぐこの場にブラックホールを召喚して私を吸い込んでーーー!! 犯人なんてどうでもいい、私の尊厳を返してーーーー!!)
「ふっ……くくく……! 兄上、おめでとう! 子猫ちゃんの飼い主として認定されたわけだね!」
扉の陰で見ていたセオドア様が、床を叩いて爆笑しています。
結局、映像に映り込んだ「紋章」と「逃げた方向」が決め手となり、犯人は一時間後にあっさり捕まりました。ブローチも無事です。
功労者として称えられた私でしたが、その日の夜。 寝室でギルバート様から耳元で「……怪我はないか、俺の可愛い子猫ちゃん?」と意地悪く囁かれ、一晩中「脳内上映禁止令」を自分に課すことになったのでした。
私の脳内プロジェクションマッピングに公爵邸が騒然となる中、とんでもない事件が発生しました。 カシウス家に代々伝わる「青い涙のブローチ」が、宝物庫から盗まれたのです。
「アリア、落ち着いて思い出してくれ。昨日、宝物庫の近くで誰かとすれ違わなかったか?」
ギルバート様に真剣な顔で尋ねられ、私は記憶を辿ります。
(昨日……。あ、そういえば夕方、庭の方から変な男が歩いてくるのを見たような。……よし、出すわよ。脳内再生、スタート!)
私が強く念じると、空間にゆらゆらとセピア色の映像が浮かび上がりました。
「おお……! まるで活動写真のようですな!」
家令のセバスチャンさんが感心する中、映像には怪しい男が映し出されます。……が。
(あ、待って。私の記憶、ちょっと補正がかかってる……!)
映像の中の犯人は、なぜか「悪の美形貴族風」に美化され、マントを翻して「フハハハ!」と高笑いしながら、スローモーションで逃走していました。
「……アリア。犯人はこんなにスタイリッシュだったのか?」
「い、いえ……! 多分、実際はもっとこう……ネズミみたいな小男だったはずです! 私の脳が勝手に『悪役は美しくあるべき』って加工しちゃっただけで!」
(やだ恥ずかしい! 犯人の顔まで自分好みに美化して再生しちゃうなんて、私の脳内、乙女ゲーム脳がすぎるわよ!!)
「……いや、待て。この男の指先を見ろ。……この紋章の指輪、見覚えがあるぞ」
ギルバート様が、映像の中の(無駄にかっこいい)犯人の手を指差しました。 そこには、先日実家と共に失脚したはずの、隣国の成金貴族の残党が使う紋章が刻まれていたのです。
「よし、アリア。そのまま映像を維持してくれ。犯人の逃走経路を特定する」
(了解! ……でも、映像を続けると、その……私の『妄想の続き』が流れちゃうんだけど……!)
私の静止も聞かず、ギルバート様は映像を凝視します。 すると、犯人が角を曲がった直後、映像は急にピンク色のエフェクトに包まれ、「犯人を華麗に倒し、私を抱きかかえて『怪我はないか、俺の可愛い子猫ちゃん』と囁くギルバート様」のイメージに切り替わりました。
「「「………………」」」
応接室に、深い、深い沈黙が流れます。
「……アリア」
「……はい」
「俺は、お前の前で一度も『子猫ちゃん』などと言った覚えはないのだが」
(死にたい!! 今すぐこの場にブラックホールを召喚して私を吸い込んでーーー!! 犯人なんてどうでもいい、私の尊厳を返してーーーー!!)
「ふっ……くくく……! 兄上、おめでとう! 子猫ちゃんの飼い主として認定されたわけだね!」
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結局、映像に映り込んだ「紋章」と「逃げた方向」が決め手となり、犯人は一時間後にあっさり捕まりました。ブローチも無事です。
功労者として称えられた私でしたが、その日の夜。 寝室でギルバート様から耳元で「……怪我はないか、俺の可愛い子猫ちゃん?」と意地悪く囁かれ、一晩中「脳内上映禁止令」を自分に課すことになったのでした。
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