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17話
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王宮の夜は静まり返り、月明かりだけが石造りの廊下を淡く照らしていた。
エリスは神殿からの帰路、王太子の護衛に囲まれながら、自室に戻ろうとしていた。長い式典と歓声で疲れていたが、心は穏やかだった。
しかし、その静寂を破ったのは、重厚な扉の控えめなノックだった。
「……失礼します。お話がございます、エリス様」
声の主は、かつての婚約者、アランだった。
いつもは威勢のある言葉を操る彼だが、今はどこか頼りなげで、汗が額を伝っていた。リディアの姿も従者の影にかすかに見える。
「……アラン」
エリスは静かに彼を見つめ、警戒心を隠せなかった。
「何の用でしょうか。もう、あなたに話すことはありません」
だがアランは、ひるむことなく一歩前に出た。
「お願いです……もう一度、私の言葉を聞いてほしい。誤解だったんだ。あの時の婚約破棄も――」
「誤解?」
エリスは眉をひそめた。夜の空気のように冷たい声だった。
「あなたが私を無価値だと笑い、社交界で公然と侮辱したのは事実です。それを『誤解』とでも言うつもりですか?」
アランは口を開けたまま、答えを詰まらせる。
「……でも、私だって……国のことを考えて……」
「あなたが捨てたのは、私ではなく、この国の希望です」
エリスの声は揺るがない。かつて涙に暮れた少女とは違う、聖女としての覚悟がそこにあった。
「お願いです……せめて、もう一度だけ」
アランは跪き、手を差し伸べる。しかし、エリスの瞳は鋭く、冷たく彼を見据えた。
「もう遅いです、アラン」
エリスは一歩も動かず、毅然と答えた。
「あなたが私を見捨てたように、私もあなたを救いません」
その瞬間、月光がアランの顔に照り、無力さと恥辱が鮮やかに浮かび上がった。
リディアも傍らで顔を青ざめさせ、言葉を失っている。二人の野心も、今は風前の灯だ。
「……わかりました。では、これで……」
アランは立ち上がることもできず、深く頭を下げるしかなかった。
その背中に、エリスは静かに告げる。
「さようなら、アラン。あなたが歩む道は、あなた自身が選んだのです」
廊下の冷たい空気の中で、アランとリディアは、かつての栄光と未来を失ったまま去っていった。
エリスは一人、夜空を見上げる。星々は彼女の心を映すかのように、静かに輝いていた。
「もう、誰も私を止められない」
小さくつぶやいた声に、自信と決意が満ちていた。
これで、すべての悪意は振り切った――そう確信しながら、彼女は神殿に帰路を取った。
エリスは神殿からの帰路、王太子の護衛に囲まれながら、自室に戻ろうとしていた。長い式典と歓声で疲れていたが、心は穏やかだった。
しかし、その静寂を破ったのは、重厚な扉の控えめなノックだった。
「……失礼します。お話がございます、エリス様」
声の主は、かつての婚約者、アランだった。
いつもは威勢のある言葉を操る彼だが、今はどこか頼りなげで、汗が額を伝っていた。リディアの姿も従者の影にかすかに見える。
「……アラン」
エリスは静かに彼を見つめ、警戒心を隠せなかった。
「何の用でしょうか。もう、あなたに話すことはありません」
だがアランは、ひるむことなく一歩前に出た。
「お願いです……もう一度、私の言葉を聞いてほしい。誤解だったんだ。あの時の婚約破棄も――」
「誤解?」
エリスは眉をひそめた。夜の空気のように冷たい声だった。
「あなたが私を無価値だと笑い、社交界で公然と侮辱したのは事実です。それを『誤解』とでも言うつもりですか?」
アランは口を開けたまま、答えを詰まらせる。
「……でも、私だって……国のことを考えて……」
「あなたが捨てたのは、私ではなく、この国の希望です」
エリスの声は揺るがない。かつて涙に暮れた少女とは違う、聖女としての覚悟がそこにあった。
「お願いです……せめて、もう一度だけ」
アランは跪き、手を差し伸べる。しかし、エリスの瞳は鋭く、冷たく彼を見据えた。
「もう遅いです、アラン」
エリスは一歩も動かず、毅然と答えた。
「あなたが私を見捨てたように、私もあなたを救いません」
その瞬間、月光がアランの顔に照り、無力さと恥辱が鮮やかに浮かび上がった。
リディアも傍らで顔を青ざめさせ、言葉を失っている。二人の野心も、今は風前の灯だ。
「……わかりました。では、これで……」
アランは立ち上がることもできず、深く頭を下げるしかなかった。
その背中に、エリスは静かに告げる。
「さようなら、アラン。あなたが歩む道は、あなた自身が選んだのです」
廊下の冷たい空気の中で、アランとリディアは、かつての栄光と未来を失ったまま去っていった。
エリスは一人、夜空を見上げる。星々は彼女の心を映すかのように、静かに輝いていた。
「もう、誰も私を止められない」
小さくつぶやいた声に、自信と決意が満ちていた。
これで、すべての悪意は振り切った――そう確信しながら、彼女は神殿に帰路を取った。
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