婚約破棄された私を拾ったのは、辺境のグルメ公爵でした

腐ったバナナ

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17話

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 ライナス公爵の突きつけた「リリアの全地位剥奪と追放」という最終要求は、会議の場を一瞬にして凍りつかせた。

 国王は、公爵の圧倒的な権力と、リリアの嘘が引き起こした国家の窮状を天秤にかけ、苦渋の決断を迫られた。王太子ルドルフは、エマに与えた屈辱が、最終的に愛する婚約者の破滅という形で返ってきたことに、絶望と後悔で立ち尽くした。

「リリア嬢……」

 国王は重い口を開いた。

「公爵夫人の尊厳を傷つけ、国家を危機に陥れた罪は重い。ライナス公爵の要求を……受け入れる」

 リリアは、その場で崩れ落ちた。

「嘘よ!殿下!助けてください!私は、殿下のために……!」

 リリアは王太子に助けを求めたが、ルドルフは目を合わせることができなかった。

「すまない、リリア。私も、エマを『毒』と罵った報いを受けているのだ……」

 ルドルフは、自らの愚かさの連鎖によって、婚約者まで失った現実に打ちひしがれた。

 その瞬間、エマは一歩前に出た。彼女は、地面に崩れ落ちたリリアを見下ろし、静かに、そして冷徹に言った。

「リリア嬢。貴女が『家庭的』という言葉で王太子殿下を欺き、『毒』という言葉でわたくしを追放したとき、既に貴女の敗北は決まっていました。わたくしの料理は、最高の純粋さを求めています。貴女の嘘と嫉妬という不純物は、わたくしの世界には存在できません」

 エマの言葉は、リリアの虚飾の全てを剥ぎ取った。リリアは、エマの輝きと、公爵の庇護の前で、抵抗する力を完全に失った。

 数日後、リリアは王太子の婚約者の地位を剥奪され、かつてエマが追放された辺境の、さらに貧しい土地へと送られた。彼女は、「偽りの聖女」として、国民の罵声を浴びながら王都を去るのだった。

 リリアが去り、王国の危機の原因が排除された後、ライナス公爵は国王に対し、寛大な措置を取った。

「陛下。我が妻は、国民の飢えを、完全に無視することはできません」

 ライナスは言った。

「我が公爵領の保存食を、適正な価格で王都に提供することを許可します。ただし、その代金は、今後五年間、王国の全ての『食料安全保障』に関する法案を、我が公爵夫人の助言を得て制定することを条件といたします」

 これは、王国の食糧問題を解決しつつ、実質的にエマが王国の食の最高権威となることを意味していた。国王は、この「王国の食の支配権」を公爵夫妻に譲り渡すことで、国民の命を救った。

 エマは、公爵夫人として、そして王国の食の最高顧問として、揺るぎない地位を確立した。

 王宮での対決を終え、公爵領の自室に戻った夜。ライナスは、エマを優しく抱きしめた。

「エマ。君は、自分の力で、過去の全てに完璧な決着をつけた。君は、本当に素晴らしい」

 エマは、ライナスの胸に顔を埋めた。

「公爵様のおかげです。公爵様の絶対的な庇護がなければ、わたくしは立ち直れませんでした」

「違う」

 ライナスは、エマの顔を上げさせた。

「君の神の舌と、純粋な心が、私を引き寄せたのだ。私は君の才能に執着し、君はその執着を愛に変えてくれた」

 ライナスは、エマに深く口づけを交わした。そのキスは、冷徹な契約から始まった二人の関係が、今や揺るぎない、甘美な愛へと昇華したことを証明していた。

 二人は、美食と愛に満たされた、永遠の幸福を手に入れたのだった。
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