精霊の森に追放された私ですが、森の主【巨大モフモフ熊の精霊王】に気に入られました

腐ったバナナ

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12話

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 リサの胎内に宿った聖なる命は、王都の闇に生きる者たちにとって、あまりにも大きな誘惑となった。彼らは、リサの力が真の聖女の力に覚醒したことを知り、その力を我が物にしようと、最後の抵抗を試みた。

 王都の裏社会を牛耳る闇貴族の首謀者は、ルシウスとフィーナを最後の駒として利用し、リサを森の境界線へとおびき出す罠を仕掛けた。

 リサの元に届いたのは、ルシウスの筆跡で書かれた「フィーナが精霊の毒に侵された。助けられるのは君の癒やしの力だけだ」という、極めて感情に訴えかける伝言だった。

 リサは、その伝言を読み終えると、冷笑した。

「まるで稚拙な子供騙しですね、バルト様。わたくしが調合した薬草は、精霊の森の力で浄化されています。精霊の毒など、この世に存在しません」

「フン。だが、君の優しい心を利用しようとした。このままでは許せん」

 バルトは人間の姿で立ち上がり、怒りを露わにした。

「待ってください、バルト様」

 リサは彼の腕を優しく掴んだ。

「彼らはわたくしを無力な餌だと思って誘い出しました。ですが、わたくしは今や聖女の力と賢妃の知恵を持っています。あなたの力ではなく、わたくしの知性で、彼らを二度と立ち直れないよう打ちのめしましょう」

 リサは、バルトに静かに指示を出した。今回の目的は、ルシウスたちだけでなく、その背後にいる闇貴族の正体を白日の下に晒し、王都の闇そのものを浄化することだった。

 リサは、いつものように巨大な熊の姿のバルトを伴い、王都側の国境近くの古びた石造りの廃墟へと向かった。バルトの毛皮が発する圧倒的な温もりと魔力は、リサの胎内の聖なる命を厳重に守っていた。

 廃墟でリサを待っていたのは、涙を流すフィーナと、血を吐くルシウス…の芝居を打つ二人の背後に隠れた、闇貴族の首謀者だった。

 首謀者は、リサと熊のバルトを見て一瞬怯んだが、すぐに高笑いした。

「流石は精霊王妃。だが、もう逃げられん。その胎内の聖なる力を渡せば、命だけは助けてやろう」

 闇貴族たちが魔術的な拘束を発動した、その瞬間だった。

 リサの体から、白く、温かい聖なる光が放たれた。それは、バルトの魔力に匹敵するほどの、絶対的な浄化の力だった。

「あなた方の魔術は、わたくしに通用しません」

 リサは毅然として言い放った。

「わたくしの聖なる力は、あなた方のような澱んだ闇を、瞬時に解析し、打ち砕くことができます」

 リサは、闇貴族たちの魂に刻まれた不浄な契約と、魔術的な力の源を一瞬で見抜いた。彼女の放つ聖光は、物理的な攻撃ではなく、彼らの存在そのものを規定する契約を一つ一つ無効化していった。

 闇貴族たちは、魔力回路を焼き切られ、廃人と化して崩れ落ちた。彼らは、無能な令嬢として追放されたはずのリサに、存在を否定されるという屈辱的な敗北を喫した。

 最後に残されたのは、ルシウスとフィーナだった。彼らは、リサの聖女としての圧倒的な力に、最早恐怖を通り越して絶望していた。

「お、お姉様…どうか…」

 フィーナは命乞いをしようとしたが、リサは冷たい視線で遮った。

「あなた方は、わたくしから全てを奪おうとした。わたくしはもう、あなた方の命など必要ありません。あなた方が最も愛する地位と名誉を完全に奪い、永遠に後悔の念に苛まれることこそ、最大の罰です」

 リサは、聖女の力を使い、ルシウスとフィーナの体内の貴族としての血族魔力と過去の特権記憶を、完全に封印した。これにより、彼らは貴族としてのアイデンティティを失い、無力な平民として、永遠に世間から蔑まれながら生きる運命となった。

 リサは、安堵と勝利の喜びに満たされながら、熊の姿のバルトに抱きかかえられた。

「リサ…よくやった」

 バルトは、リサの匂いを深く吸い込み、喜びと満足感で低く唸った。

「君は、俺の温もりと俺の魔力で覚醒し、この森と俺の全てを守り抜いた。君は、世界で最も賢く、強く、そして可愛い俺だけの賢妃だ」

 リサは、モフモフの温かい毛皮に全身を包まれ、胎内の新しい命と共に、永遠の安全と愛を確信した。
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