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伯爵令嬢フィーア・エメラインは、この国で唯一の「聖女」として育てられた。しかし、その人生は、常に裏切りと虚飾に満ちていた。
今日、その全てが終わりを告げた。王宮の広間。豪華な装飾が施された玉座の間で、フィーアは断罪を受けていた。
目の前には、国王と、そして、彼女の異母妹であるリシアンが立っている。リシアンこそが、フィーアを「偽聖女」へと貶めた張本人だ。
「フィーア・エメライン。貴様は、その微弱な魔力と治癒魔法の弱さから、真の聖女ではないと断罪する!」国王の声が響く。
リシアンは、王の傍らで優雅に微笑んでいた。彼女の魔法は派手で、傷を瞬時に治すように見える。人々は、リシアンの「目に見える力」こそが聖女の証だと信じていた。
「姉様。治癒魔法が使えないなんて、聖女としては欠陥でしょう?」
リシアンの心の声が、フィーアの能力を通じて響く。
(これで、私の邪魔はいなくなった。この国の聖女の地位は、全て私のものよ!)
フィーアの真の能力は、「魔物の汚染を浄化し、荒れた大地を豊かにする」という、地味で時間がかかる力だった。治癒魔法は確かに苦手だったが、この世界で本当に必要なのは、大地そのものを救う力だと、フィーアは知っていた。しかし、誰もその真価を認めなかった。
「偽りの罪は重い。だが、貴様をただ処刑するは忍びない。よって、貴様を隣国・獣人族の国へ追放する。彼らは、魔物に荒らされた土地の再生に聖女の力を求めている。そこで、その微弱な力を尽くすが良い!」
獣人族の国は、人間国との国境から遠く離れた、魔物と汚染された大地が広がる過酷な場所だ。それは、緩やかな死の宣告に等しかった。
フィーアは、静かに頭を下げた。裏切りと嫉妬に満ちたこの国に、もはや未練はなかった。
その日の夕方、フィーアは、最低限の荷物と、粗末な馬車に乗せられ、国境へと向かっていた。護衛の騎士たちの視線は冷たく、罵詈雑言が投げかけられる。
馬車は数日かけて、人間国と獣人国を隔てる、汚染された広大な荒野へと入った。
外の空気は重く、魔力汚染による淀んだ臭いがする。その時、フィーアの体に、微かな魔力の熱が湧き上がった。
(ここは……汚れている。私の力が、「浄化を」と叫んでいる)
フィーアは、そっと馬車の窓から、汚染された大地に手をかざした。
彼女の「浄化の泉」スキルが、無意識に発動する。荒れた大地の一部が、ごくわずかに輝き、淀んだ魔力が澄んでいく。しかし、その力は広大すぎる荒野の中では、誰にも気づかれない小さな奇跡だった。
「さあ、着いたぞ、偽聖女」
護衛の騎士が、馬車を止め、荒野の中央でフィーアを降ろした。
「ここからは、獣人どもが迎えに来るか、魔物に食われるか、どちらかだ。せいぜい生き残れ」
騎士たちは、嘲笑と共にすぐに馬車を引き返させた。
フィーアは、汚染された大地に独り取り残された。夕日は沈み、あたりは急速に闇に包まれる。彼女の足元には、魔物の影が忍び寄っていた。
(ここで、私は死ぬのだろうか……)
その時、闇の中から黄金の瞳が光った。
轟音と共に、強靭な体躯を持つ、ライオンの獣人族が現れた。彼の背後には、彼を護衛する屈強な獣人たちが控えている。
その獣人こそ、「冷酷な牙」と恐れられる、最強の獣人王ガゼルだった。
ガゼル王は、フィーアを冷たい目で一瞥し、唸るような低い声で言った。
「貴様が、人間国が寄越した『聖女』か。脆弱で、魔力も感じられぬ。だが、貴様の体から、微かな浄化の光を感じる。貴様の真の力を見極めてやろう。さあ、我が国へ来い」
フィーアは、その圧倒的な威圧感に足がすくみながらも、生への希望を見出した。彼女の人生は、愛のない契約結婚という形で、最強の獣人王の庇護の下、新たな一歩を踏み出すことになった。
今日、その全てが終わりを告げた。王宮の広間。豪華な装飾が施された玉座の間で、フィーアは断罪を受けていた。
目の前には、国王と、そして、彼女の異母妹であるリシアンが立っている。リシアンこそが、フィーアを「偽聖女」へと貶めた張本人だ。
「フィーア・エメライン。貴様は、その微弱な魔力と治癒魔法の弱さから、真の聖女ではないと断罪する!」国王の声が響く。
リシアンは、王の傍らで優雅に微笑んでいた。彼女の魔法は派手で、傷を瞬時に治すように見える。人々は、リシアンの「目に見える力」こそが聖女の証だと信じていた。
「姉様。治癒魔法が使えないなんて、聖女としては欠陥でしょう?」
リシアンの心の声が、フィーアの能力を通じて響く。
(これで、私の邪魔はいなくなった。この国の聖女の地位は、全て私のものよ!)
フィーアの真の能力は、「魔物の汚染を浄化し、荒れた大地を豊かにする」という、地味で時間がかかる力だった。治癒魔法は確かに苦手だったが、この世界で本当に必要なのは、大地そのものを救う力だと、フィーアは知っていた。しかし、誰もその真価を認めなかった。
「偽りの罪は重い。だが、貴様をただ処刑するは忍びない。よって、貴様を隣国・獣人族の国へ追放する。彼らは、魔物に荒らされた土地の再生に聖女の力を求めている。そこで、その微弱な力を尽くすが良い!」
獣人族の国は、人間国との国境から遠く離れた、魔物と汚染された大地が広がる過酷な場所だ。それは、緩やかな死の宣告に等しかった。
フィーアは、静かに頭を下げた。裏切りと嫉妬に満ちたこの国に、もはや未練はなかった。
その日の夕方、フィーアは、最低限の荷物と、粗末な馬車に乗せられ、国境へと向かっていた。護衛の騎士たちの視線は冷たく、罵詈雑言が投げかけられる。
馬車は数日かけて、人間国と獣人国を隔てる、汚染された広大な荒野へと入った。
外の空気は重く、魔力汚染による淀んだ臭いがする。その時、フィーアの体に、微かな魔力の熱が湧き上がった。
(ここは……汚れている。私の力が、「浄化を」と叫んでいる)
フィーアは、そっと馬車の窓から、汚染された大地に手をかざした。
彼女の「浄化の泉」スキルが、無意識に発動する。荒れた大地の一部が、ごくわずかに輝き、淀んだ魔力が澄んでいく。しかし、その力は広大すぎる荒野の中では、誰にも気づかれない小さな奇跡だった。
「さあ、着いたぞ、偽聖女」
護衛の騎士が、馬車を止め、荒野の中央でフィーアを降ろした。
「ここからは、獣人どもが迎えに来るか、魔物に食われるか、どちらかだ。せいぜい生き残れ」
騎士たちは、嘲笑と共にすぐに馬車を引き返させた。
フィーアは、汚染された大地に独り取り残された。夕日は沈み、あたりは急速に闇に包まれる。彼女の足元には、魔物の影が忍び寄っていた。
(ここで、私は死ぬのだろうか……)
その時、闇の中から黄金の瞳が光った。
轟音と共に、強靭な体躯を持つ、ライオンの獣人族が現れた。彼の背後には、彼を護衛する屈強な獣人たちが控えている。
その獣人こそ、「冷酷な牙」と恐れられる、最強の獣人王ガゼルだった。
ガゼル王は、フィーアを冷たい目で一瞥し、唸るような低い声で言った。
「貴様が、人間国が寄越した『聖女』か。脆弱で、魔力も感じられぬ。だが、貴様の体から、微かな浄化の光を感じる。貴様の真の力を見極めてやろう。さあ、我が国へ来い」
フィーアは、その圧倒的な威圧感に足がすくみながらも、生への希望を見出した。彼女の人生は、愛のない契約結婚という形で、最強の獣人王の庇護の下、新たな一歩を踏み出すことになった。
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