魔力なしの欠陥品として婚約破棄された狼族の令嬢ですが、実は伝説の白獅子の番でした。

腐ったバナナ

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23話

「ぎ、ああああっ!?」

 国境の荒野に、狼族の兵士たちの悲鳴が響き渡ります。 猛虎族の工作員たちは、レオンハルト様の圧倒的な魔力の前に、戦うことすら許されず、影の触手に絡め取られていきました。

「リ、リリアナ……! 我が悪かった! お前が去ってから、里は疫病と飢えで滅びかけているんだ! 父親だろう、助けてくれ!」

 シルヴェスタ伯爵が、泥にまみれて結界の壁を叩きます。 しかし、その手は黄金の光に弾かれ、触れることさえ叶いません。

 リリアナは、レオンハルト様の膝の上で、静かにその光景を見つめていました。 かつてはこの人たちに褒められたくて、認められたくて、地下室で震えながら祈っていた。けれど、今感じているのは、悲しみではなく、底冷えするような「虚無」でした。

「お父様。貴方は、里が滅びるから私を求めているだけです。私という娘を愛したことなど、一度もありませんでしたね」

「何を……! 育ててやった恩を忘れて——」

「その言葉も、もう届きません」

 リリアナが立ち上がると、彼女の背中から目も眩むような黄金の翼のような光が広がりました。 それは、誰かを救うための慈悲の光ではなく、「拒絶」の光。

「私の力は、私を愛してくれる人のためにだけ使います。……さようなら、私の過去」

 リリアナが右手をかざすと、彼女を繋いでいた狼族とのかすかな血の縁が、パチンと音を立てて弾け飛びました。 その瞬間、シルヴェスタ伯爵と狼族の者たちは、彼らが長年リリアナに肩代わりさせていた「代償」を一気に受けることになったのです。

「う、あああ……! 体が……魔力が枯れていく……!」

 彼らの毛並みは一瞬でボロボロに崩れ、誇り高き蒼銀狼の姿は、見る影もない老いた犬のようになっていきました。 これが、リリアナを虐げていたことに対する、世界(エナ)からの裁きでした。

 レオンハルト様は、満足げに喉を鳴らし、覚醒したリリアナを後ろから抱きしめました。

「素晴らしい、リリアナ。……これで君を縛る枷はすべて消えた。君は今、真に私のものとなったのだ」

 レオンハルト様は、逃げ惑う猛虎族の生き残りを冷酷に見据え、全軍に命じました。

「狼族は放置せよ。自らの罪に焼かれ、砂へと還るのがお似合いだ。……我らの狙いは、この愚か者たちを唆した猛虎族の王都。我が番を狙った代償がどれほど重いか、その骨に刻み込んでやる」

 一方、その場から逃げ延びようとしていたアドルフ(獣堕ちの成れの果て)の前に、一人の男が立ちふさがりました。 それは、白獅子族の密偵——ハルトヴィヒ。

「どこへ行く、哀れな犬よ。陛下が、貴様には『特別な特等席』を用意せよと仰せだ」

 アドルフの絶望的な叫びが、夜の荒野に虚しく響き渡ります。

 その夜、白獅子の城へ戻ったリリアナは、さらなる「寵愛の洗礼」を受けることになります。過去を捨て、完全に自分だけのものになったリリアナを、レオンハルト様がそのまま眠らせてくれるはずもなかったのです。

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