時間を戻した元悪女は、私を捨てた王太子と、なぜか私に夢中の騎士団長から逃げられません

腐ったバナナ

文字の大きさ
16 / 20

16話

しおりを挟む
 王太子アルベルトの公衆の面前での後悔は、ユミリアの名誉を完全に回復させた。彼女が過去に犯したとされる悪行は、王太子の失政を隠すための捏造だったという認識が、貴族社会に広まった。

 しかし、ユミリアには、前世で自分を裏から陥れた黒幕への最後の清算が残っていた。

 それは、王太子に愛された「清らかなヒロイン」の役割を演じていたはずの伯爵令嬢カサンドラの叔母、キーラ夫人だった。キーラ夫人は、ユミリアを悪女として仕立て上げるための決定的な偽証を行った人物であり、前世のユミリアが処刑された後に、王宮の女官長として権力を握る手筈だった。

 ギルバートは、ユミリアからその人物を聞き出すと、即座に行動を起こした。

 ある静かな午後、ギルバートの私邸の応接室。

 ユミリアは、震えながら連行されてきたキーラ夫人の前に座っていた。ギルバートは、ユミリアの背後に立ち、絶対的な守護者として彼女を支えている。

「キーラ夫人。貴女が前世で、私を陥れるために、王室の機密文書を偽造し、魔獣ルートの情報をリークした事実を、全て把握しています」

 ユミリアの言葉に、キーラ夫人は顔面蒼白になった。

「な、何を言っているのですか!私はただ、正義のために……」

 ギルバートが、キーラ夫人の言葉を遮った。

「黙れ。貴殿の『正義』は、公爵家からの金銭的支援と引き換えだった。我々は、貴殿と公爵家の間の裏取引の証拠を全て掴んでいる。貴殿の目的は、ユミリア嬢を排除し、姪であるカサンドラ嬢を王妃の座に就け、自ら王宮の権力を握ることだった」

 ギルバートは、冷徹な論理と揺るぎない証拠で、キーラ夫人の野心を暴き立てた。

 ユミリアは、前世で自分がなぜ処刑されなければならなかったのかという、最後の疑問が氷解したのを感じた。

 ユミリアは、静かにキーラ夫人を見つめた。

「貴女のせいで、私は悪女の汚名を背負い、命を奪われました。ですが、私は貴女のように裏で人を陥れるような真似はしません」

 ユミリアは、ギルバートに視線を送った。

 ギルバートは、ユミリアの意思を理解し、冷酷な命令を下した。

「キーラ夫人。貴殿の罪は王室に対する反逆罪に等しい。だが、ユミリア嬢の慈悲により、命は助けてやる。貴殿の全資産は没収し、貴殿は国境の修道院で永遠に隔離される。二度と王都に戻ることは許されない」

 キーラ夫人は、絶叫を上げ、権力と富の全てを失った絶望に打ちひしがれた。

 これが、ユミリア自身が直接手を下さず、ギルバートの絶対的な権力を背景に行った、最も徹底的で公正な報復だった。

 キーラ夫人の処分により、ユミリアの悪女の汚名は完全に清算され、彼女は冷酷な騎士団長に愛された、真の聖女として、貴族社会に受け入れられた。

 ギルバートは、ユミリアを抱きしめた。彼の冷たい体温が、ユミリアの心に灯った温かさを強調する。

「貴殿の過去の清算は、これで完了した。貴殿はもう、誰にも後ろ指を指されない。貴殿の居場所は、私の王国の光として、永遠に確保された」

 ユミリアは、処刑台の恐怖から解放され、孤独な愛に満たされる、最高の幸福を噛みしめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました

ミズメ
恋愛
 感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。  これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。  とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?  重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。 ○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。 婚約者ではないのに、です。 それに、いじめた記憶も一切ありません。 私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。 第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。 カクヨムにも掲載しております。

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

嫌われていると思って彼を避けていたら、おもいっきり愛されていました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のアメリナは、幼馴染の侯爵令息、ルドルフが大好き。ルドルフと少しでも一緒にいたくて、日々奮闘中だ。ただ、以前から自分に冷たいルドルフの態度を気にしていた。 そんなある日、友人たちと話しているルドルフを見つけ、近づこうとしたアメリナだったが “俺はあんなうるさい女、大嫌いだ。あの女と婚約させられるくらいなら、一生独身の方がいい!” いつもクールなルドルフが、珍しく声を荒げていた。 うるさい女って、私の事よね。以前から私に冷たかったのは、ずっと嫌われていたからなの? いつもルドルフに付きまとっていたアメリナは、完全に自分が嫌われていると勘違いし、彼を諦める事を決意する。 一方ルドルフは、今までいつも自分の傍にいたアメリナが急に冷たくなったことで、完全に動揺していた。実はルドルフは、誰よりもアメリナを愛していたのだ。アメリナに冷たく当たっていたのも、アメリナのある言葉を信じたため。 お互い思い合っているのにすれ違う2人。 さらなる勘違いから、焦りと不安を募らせていくルドルフは、次第に心が病んでいき… ※すれ違いからのハッピーエンドを目指していたのですが、なぜかヒーローが病んでしまいました汗 こんな感じの作品ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

処理中です...