気づいたら悪役令嬢でしたが、破滅フラグは全力で避けます!

腐ったバナナ

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2話

 王宮の庭園は朝露で光り、花々の香りが淡く漂っていた。
 リリナ・フォン・ヴァルデンは、軽やかな足取りで散歩に出た。
 転生したばかりでまだ世界に慣れず、庭園の景色一つにも新鮮な驚きがある。

「ふふ、今日も平和……と見せかけて、フラグはないかしら」

 心の中でつぶやきながら、リリナは目を光らせる。

 何しろこの世界では、ちょっとした言動で王子を怒らせたり、ヒロインを泣かせたりして破滅する。
 ゲームで何度も見た結末を思い出すだけで、背筋がぞくっとする。

 そのとき、花壇の向こうから甲高い声が聞こえた。

「まあ、リリナじゃない!今日もお美しいこと!」

 振り返ると、ヒロインのエリスが笑顔を振りまきながら歩いてくる。

「……また、あの笑顔か。フラグの匂いがするわ」

 リリナは内心で警戒しつつ、表情には出さずに微笑む。

「おはようございます、エリス様。今日もお元気そうで何よりです」

「まあ、リリナまで!礼儀正しいのね。でも、昨日の王子様との話、ちょっと聞いたわよ?」

 エリスの笑みには挑発の色がちらつく。

「え……昨日の話?」

 リリナは少し動揺した。昨日の出来事は、フラグ回避のために王子の前でうまく立ち回ったつもりだったが、思わぬ形で誤解されてしまったのだ。

「ふふ、王子様が少し不機嫌だったとか、リリナが困った顔をしていたとか。可愛らしい噂よね」

 エリスの声には明らかに嫉妬の混ざった嘲笑がある。
 リリナは冷静を装うが、心の中では焦っていた。
 ――ああ、これは破滅フラグの匂い。早く回避しないと!

「そ、そうですか……気をつけます」

 その瞬間、王子が庭園に現れた。

「リリナ、少し話がある」

 彼の顔は真剣で、眉間に皺が寄っている。リリナの心臓が一瞬跳ねた。

「えっと……ど、どうされましたか?」

「君の行動、少し気になるところがあってな」

 その言葉に、リリナの胸が締め付けられる。
 ――やばい、フラグ立った?

 王子は近づきながら、庭の花を指差した。

「この花の手入れ、昨日の夜君がしたのか?」

「はい……少しだけですが、綺麗にしておきました」

「……なるほど、だが、もう少し丁寧にやるといい」

 王子の表情は厳しいが、リリナは安堵の小さなため息をついた。
 どうやら昨日の件は、誤解で済みそうだ。
 ――ほっ、初めてのフラグ回避はぎりぎりセーフか。

 しかし、その瞬間、エリスが口を挟む。

「リリナ、あなたって本当に面白い人ね。王子様もびっくりしてたでしょ?」

 その笑顔には、まだまだ油断できない気配がある。

 リリナは深呼吸し、心に誓う。
 ――次こそ、絶対に破滅フラグは避ける。もう二度と誤解されないように、周囲をよく観察して……自由に生きるんだから。

 庭園の朝日が、リリナの決意を照らす。
 この転生生活はまだ始まったばかり。小さな事件が次々に訪れる予感に、彼女の心は少しワクワクしていた。

「さて、今日も破滅フラグを回避するぞ!」

 リリナの足取りは軽く、しかし慎重に。
 ――悪役令嬢としての第二の人生、第一歩は無事に踏み出されたのだった。

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