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「それじゃあベンジャミン、行ってくるわね」
マフィンの入った袋を片手に戸口に立つベンジャミンに見送られ、今日もラナは森へ向かった。
もう定番ポジションとなった胸のポケットからは、イベリスが顔を覗かせている。
「今日はトリィの所で薬をもらってから探索に行きましょ」
「お前が新種を見つける日は来るのか?」
「来るまで探すの!」
「そーか。頑張れ」
「なんかその言い方嬉しくないわ!」
いつものように森の中を進み、魔女の家へ向かう。
「……あら?」
「ん?どうした?」
「明かりがついていないの」
いつもは見えている窓からの明かりが、今日は見えない。
家の辺りにぼんやりとその輪郭が見えるだけだ。
「こんな時間にいないなんて珍しい…」
頭の奥で危険を知らせる警鐘が鳴る。
何かがおかしい。
更に近付いてみると、家の扉が開いているのに気が付いた。
「トリィ……?」
中を覗くも、やはり人の気配はなかった。
「いないぞ?出かけてるんじゃないのか?」
「……いいえ、違うわ」
よく見ると、薬が作りかけのままテーブルに置きっぱなしになっていた。
誰かがここに来たんだわ。そして……。
「どうして……トリィはどこに…」
その時、後ろでガサッと音がした。
「だれ──むぐっ?!」
振り向いた瞬間、布で鼻と口を塞がれた。
必死で抵抗するも、布に染み込んだ薬液の臭いが体の力を奪っていく。
「……魔女の元へ連れていってやろう……」
かすれた低い声を耳にしながら、ラナの意識は闇の中へと落ちていった。
†††
「…ぅ……いってぇー…」
あのバカ、思いっきり投げやがって。
勢いのままに木に強打した頭をさすりながら、イベリスは茂みから出てきた。
ラナは何者かに襲われた瞬間、咄嗟にイベリスを引っつかんで遠くへと放り投げたのだった。
「おい!どこだ?!おいっ!」
声を張り上げるも応えるものは何もなく、荒らされた地面の上に黒いキャスケットが一つ落ちていただけだった。
「っ…!、くそっ!」
何がどうなってる?!
どろどろと湧き出た怒りに任せ、イベリスは全速力で森の入り口へと跳ねていった。
†††
人間の時とは勝手が違う体にもどかしさを感じながらも、目印を頼りに何とか森の入り口に辿り着く事ができた。
悔しいが今のこの身一つでは、何もできないのは明白。
城へ伝え兵を動かす方が確実だと判断したのだった。
急いで馬の元へ行き、大声で呼びかける。
「おいっ!お前の主人の一大事だ!今すぐ町へ向かえ!」
しかし馬にこの小さな姿は見えなかったらしく、疑問符を浮かべキョロキョロ見回すだけだった。
「くそっ!寝ぼけてんのか?!」
近くの木によじ登り馬の頭に飛び乗ると、耳元で叫んだ。
「緊急事態だ!早く行けぇっっ!!」
その声に驚いた馬はいななきを上げると、町へと全力疾走していった。
†††
「…………!」
遠くから聞こえてきた蹄の音に、ベンジャミンはぴくりと反応した。
慌てて外へ出ると、自分の世話する馬が主人不在でこちらへと走ってくるのが見えた。
ベンジャミンはすぐさま事態を察知した。
別の馬に乗ってその馬を止めに行く。
並走しながら手綱を取って落ち着かせ家の前に繋ぐと、ベンジャミンは乗っていた馬を城へと走らせた。
†††
「あうぅ…いてぇ」
また頭打ったじゃないか。
イベリスは驚いて飛び上がった馬に落とされ、着地に失敗した。
カエルの姿でなかったら死んでいたに違いない。
…まぁいい。これであの大男が馬を見つければ何かしら伝わるだろ。
そうである事を願い、イベリスは今来た道を引き返した。
おい…!無事でいなかったら許さないからな!
マフィンの入った袋を片手に戸口に立つベンジャミンに見送られ、今日もラナは森へ向かった。
もう定番ポジションとなった胸のポケットからは、イベリスが顔を覗かせている。
「今日はトリィの所で薬をもらってから探索に行きましょ」
「お前が新種を見つける日は来るのか?」
「来るまで探すの!」
「そーか。頑張れ」
「なんかその言い方嬉しくないわ!」
いつものように森の中を進み、魔女の家へ向かう。
「……あら?」
「ん?どうした?」
「明かりがついていないの」
いつもは見えている窓からの明かりが、今日は見えない。
家の辺りにぼんやりとその輪郭が見えるだけだ。
「こんな時間にいないなんて珍しい…」
頭の奥で危険を知らせる警鐘が鳴る。
何かがおかしい。
更に近付いてみると、家の扉が開いているのに気が付いた。
「トリィ……?」
中を覗くも、やはり人の気配はなかった。
「いないぞ?出かけてるんじゃないのか?」
「……いいえ、違うわ」
よく見ると、薬が作りかけのままテーブルに置きっぱなしになっていた。
誰かがここに来たんだわ。そして……。
「どうして……トリィはどこに…」
その時、後ろでガサッと音がした。
「だれ──むぐっ?!」
振り向いた瞬間、布で鼻と口を塞がれた。
必死で抵抗するも、布に染み込んだ薬液の臭いが体の力を奪っていく。
「……魔女の元へ連れていってやろう……」
かすれた低い声を耳にしながら、ラナの意識は闇の中へと落ちていった。
†††
「…ぅ……いってぇー…」
あのバカ、思いっきり投げやがって。
勢いのままに木に強打した頭をさすりながら、イベリスは茂みから出てきた。
ラナは何者かに襲われた瞬間、咄嗟にイベリスを引っつかんで遠くへと放り投げたのだった。
「おい!どこだ?!おいっ!」
声を張り上げるも応えるものは何もなく、荒らされた地面の上に黒いキャスケットが一つ落ちていただけだった。
「っ…!、くそっ!」
何がどうなってる?!
どろどろと湧き出た怒りに任せ、イベリスは全速力で森の入り口へと跳ねていった。
†††
人間の時とは勝手が違う体にもどかしさを感じながらも、目印を頼りに何とか森の入り口に辿り着く事ができた。
悔しいが今のこの身一つでは、何もできないのは明白。
城へ伝え兵を動かす方が確実だと判断したのだった。
急いで馬の元へ行き、大声で呼びかける。
「おいっ!お前の主人の一大事だ!今すぐ町へ向かえ!」
しかし馬にこの小さな姿は見えなかったらしく、疑問符を浮かべキョロキョロ見回すだけだった。
「くそっ!寝ぼけてんのか?!」
近くの木によじ登り馬の頭に飛び乗ると、耳元で叫んだ。
「緊急事態だ!早く行けぇっっ!!」
その声に驚いた馬はいななきを上げると、町へと全力疾走していった。
†††
「…………!」
遠くから聞こえてきた蹄の音に、ベンジャミンはぴくりと反応した。
慌てて外へ出ると、自分の世話する馬が主人不在でこちらへと走ってくるのが見えた。
ベンジャミンはすぐさま事態を察知した。
別の馬に乗ってその馬を止めに行く。
並走しながら手綱を取って落ち着かせ家の前に繋ぐと、ベンジャミンは乗っていた馬を城へと走らせた。
†††
「あうぅ…いてぇ」
また頭打ったじゃないか。
イベリスは驚いて飛び上がった馬に落とされ、着地に失敗した。
カエルの姿でなかったら死んでいたに違いない。
…まぁいい。これであの大男が馬を見つければ何かしら伝わるだろ。
そうである事を願い、イベリスは今来た道を引き返した。
おい…!無事でいなかったら許さないからな!
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