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9話

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 そんなある日のこと。

 「…なぁ。斉川って、倉井と付き合ってるのか?」
 「へ?」

 今日は日曜日。陽乃は何人かの友達とカラオケに遊びに来ていた。

 リコとマユが歌っているのを皆で盛り上げていると、隣に座る男友達の神崎かんざきが声のトーンを落として話しかけてきた。

 「なんか最近よく一緒にいるからさ」
 「あー。ううん、違うよ~。倉井くんはパフェ友なの」
 「ぱふぇとも…?んー、よく分かんねぇけど…付き合ってはないんだな?」
 「うん、付き合ってなーい」
 「じゃあさ……俺と付き合わない?」
 「……え?」

 陽乃は目をパチクリさせた。

 「斉川、一緒にいて楽しいし、話も結構合うしさ。俺ら相性いい気がすんだけど。それにお互い今フリーで丁度良いじゃん?」
 「んー…」

 突然の、告白というよりも提案に近い発言にしばし考える。

 神崎は一言で言えばザ・イケメンである。
 成績はそこそこ優秀、容姿は端麗、陸上部では期待の星とされ、いわゆるモテるタイプ。
 付き合う相手としては申し分のない男だ。

 …まぁ、特に断る理由はないか。むしろお得物件?

 「確かに良いかも」
 「だろ?」
 「うん。じゃあいーよ。付き合お」
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