47 / 51
本当に恐ろしいのは
しおりを挟む
翌日早朝。圭佑がいつものように登校し靴箱へ向かうと、近くの柱に腕を組んで寄りかかる斉川を見つけた。
何やら向こうの方へと視線を送っている彼女に声をかけた。
「斉川?」
「ん?…ああ、おはよう」
ゆるりとした笑みが返ってきた。
どした?なんか機嫌いいな。
「おはよ。こんなとこで何やってんだ?」
言いながら斉川が見ていた方向を見やると、職員室の前にできた人だかりを教師が解散させている所だった。
「なんだ?なんかあったのか?」
「あそこに面白い写真が貼ってあったんだよ」
「面白い写真?」
「これと同じ写真」
斉川は1枚の写真を取り出し、圭佑に見せた。
そこには、斉川にまとわりついていた例の3人組が酒や煙草を片手に騒ぐ姿が写っていた。
「お前これ…!って、それじゃあ…」
斉川があそこに写真貼ったのかよ!
「ふふ。…あ、あれ見て」
斉川に促されるままそちらを向くと、写真に写る3人組が生徒指導室へと連れられていくのが見えた。
「良くて停学、悪くて退学ってとこかなぁ?余罪もいろいろありそうだし。…………やっぱり罪人は罰を受けないとね」
「え…?」
斉川は、ふわりと圭佑に微笑みかけた。
「写真…消してあげたんだってね」
「!」
唐突な言葉に、圭佑は目を剥いた。
「お、お前っ…なんでそれ……!…まさか?!」
「大丈夫。私は何もされてないよ」
「じゃあ、なんで知ってんだよ?!」
「なんかいい加減鬱陶しくなっちゃって、どう排除しようかってやってたら、偶然知っちゃったんだよね」
「……本当に何もされてないんだな?」
「されてないって。こうしてちゃんと先輩にも協力を仰いだし」
言いながら、斉川は手にある写真を示した。
「協力?」
「先輩に、あの3人に何かされても大丈夫なようにお守りがほしいって言ったら、これを手に入れてくれたの」
「…そうなのか」
「知っちゃった以上あれらに情けはいらないなと思って、目立つとこに貼っちゃった。ふふ」
「ふっ、そうか」
ならいいけど。
圭佑も同じ笑みを返した。
「…あれで、名前も知らない被害者さんの心が、少しでも晴れてくれると嬉しいんだけど」
「!…」
苦さの混じるその笑みに、圭佑も同じ思いを抱いた。
被害者が口をつぐんでいる以上、彼らが罰を受ける事はなく、なんとも言えないやるせなさを感じていた。
だからこれで、重い罰が下ればいいと思う。
「…そうだな」
3人の姿を見送り、圭佑は斉川と共に教室へ向かって歩き出した。
……あ、そういえば俺も訊きたい事があったんだった。
「ところで斉川」
「ん?」
「お前まーた光毅になんかしたろ」
「えー?ふふ、なんの事?」
彼女の目の中に楽しさが宿った。
「やっぱりな。あいつ急にお前避けるようになってるし、理由訊いても答えねーしさ」
「だってあれも鬱陶しかったんだもん。ちょっとくらい良いでしょ?」
言いながら、斉川は楽しげに首を傾げてみせる。
「どーせまたちょっとじゃねーんだろ?今度は何したんだよ?」
「ふふふっ、内緒ー」
「なんだよケチ」
俺にもその楽しさ分けろよ。
すると突然、教室の扉の少し手前で斉川が立ち止まった。
「あ?何やってんだ?」
「お先にどうぞ」
「は?意味分かんねー、一緒に入りゃいいじゃん」
「やだよ。そんな事したら私呪われるもん」
「誰にだよ?」
「いいから早く行け」
「なんだよ」
マジで意味分かんね。
仕方なく置いて1人で教室へ入る。
するとすかさず、萌花がパタパタと近付いてきて腕を組んだ。
「圭くんおはよう!」
「ああ、おはよ」
「今日ちょっと来るの遅かったね。なんかあったの?」
「へ?あーいや、別に。ちょっと斉か──ぐぉわっ?!」
話していたら、いきなり片足に膝カックンをかまされた。
誰だよ?!
やったのは斉川だった。横をすり抜ける意地悪な笑みに、途端に苛立ちが沸き起こる。
「てめっ…何しやがる!」
斉川はべーっと舌を出し、意気揚々と離れていった。
「なっ?!お、お前これやりたくて先に行かせたな?!」
光毅の次は俺かよっ!!
「待てこら──」
追いかけようとするが、腕が固定されて動けなかった。
「もー!また2人で楽しそうにしてー!」
「いや、全然楽しくねぇから!!」
くっそ…!あんな奴もう知らねっ!
§
楽しい。楽しい。
今とっても楽しいよ。
だから大丈夫。
今だけ我慢していれば、すぐに壁はできるから。
…………苦しい思いは、私一人がしていれば十分。
§
「………………」
斉川の…本当の心……。
強く拒絶するその心の奥には、一体何があるというのだろう?
彼女が本当に助けを求めているというのなら、なぜ声をあげる事ができないのだろう?
一日中考えてみても、答えが見つかる事はなく。
時はすでに放課後。
部活の練習着に着替えるため、更衣室へと向かう。
…その途中。
「……あれ…?」
窓の外に、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
……斉川?……どこに行くんだ…?
向こうは確か、使われていない古い倉庫があるだけだったはず。
「………………」
光毅は嫌な予感を覚えた。
§
家から持参した小型の懐中電灯で、昨日スマホが落ちていった辺りを照らす。
「……あった」
良かった。そんなに奥までいってなかった。
碧乃は膝をついてぐっと手を伸ばし、隙間に入り込んでいたスマホを取り出した。
埃を払い、とりあえず画面を確認。
…通知は特になし。友人からの連絡など来ないこのスマホは、丸一日放置されたところで、何の問題もないのだ。
したがって、碧乃に何かあったのではと余計な心配をしてくる者もいない。
これでもう大丈夫。昨日の私を知る人なんて、もう誰も──
「何やってるんだ?」
「──っっ!?」
突然の声に、体がビキッと動きを止めた。
見られた。見られた。見られた。
誰に。
「………………」
呼吸の仕方を忘れたまま、ゆっくりと後ろを振り返る。
そこにいたのは……不安と焦りを瞳に宿した、『あいつ』だった。
§
来るはずのない倉庫に入っていく彼女。
考えられない場所から取り出されたスマートフォン。
間違いない。ここで何かがあった。
嫌な予感は当たっていた。
…けど。
遅かった……?
いつだ……?俺はまた…救えなかったのか?
「……あなたこそ、なんでいるの?」
斉川はこちらを見据えゆっくり立ち上がると、静かに問うた。
目の前には、拒絶の壁が見える。
「っ…お、俺は…!向こうから斉川の姿が見えて…気になって…!」
「見えた……」
呟いた途端、彼女は朗らかに笑ってみせた。
「あー、そっか。はは。見られてたんだ」
「っ…」
…やめろ。そうやって笑うな。
「あーあ、またか。今度はうまくいったと思ったのになぁー。なんで私って、いつもいつも最後の詰めが甘いんだろ?」
『笑顔』を見るたび、心がギリギリと締め付けられていく。
「斉川…っ、ここで何があった?」
「さぁ?何だろうねぇ?」
「ごまかすなっ!…『今度』って言ったな………まさか、また谷崎の時みたいに…っ!」
自分を襲わせたんじゃ?!
言い当てた瞬間、彼女から無垢な黒さが溢れ出した。
「…ははっ。あはははは」
斉川はうっそりと嗤いかける。
「やっぱり君はすごいなぁー。なーんでそこ気付いちゃうかなぁ?」
「っ!」
目の前に、悪魔がいるようだった。
「そうだよ?あの3人が邪魔だったから、私の視界から消してあげたんだよ」
「3人…!そんなっ……1人であいつらと……?!」
「1人じゃないよ。ちゃんと先輩にも協力してもらった。と言っても、私が何してたかなんて、あの人は全然知らないけどね。ふふ」
「!…」
なんで……なんでまた…そうやって……っ!
光毅の中に、苦しみと怒りがどろりと沸き出てきた。
「どうして……っ…助けを求めないんだ?!なんで自分が傷付く事ばっかするんだよ?!」
「そんなの…傷付けたいからに決まってるでしょ?」
「…は…?」
なんだって……?
§
私はおかしい人間。ううん、人間にすらなれない『できそこない』なんだよ。
だから早く離れていって。
私の前から早く消えて。
私があなたを傷付ける前に。
碧乃の笑みが、深さを増す。
「人間なんか大っ嫌い。人間がいるこの世界も大っ嫌い。…でも、その人間にすらなれない私はもっと嫌い。だから傷が付いてると安心するの。『できそこない』に相応しい姿になれた、ってね」
小坂の瞳が驚きで見開かれる。
「そんなっ……!違う……絶対に違うっ!斉川は『できそこない』なんかじゃない!!だって、いつも真面目に頑張ってて、皆にすごく優しくて──」
「それは『私』じゃない」
綺麗な言葉が苦しくて、碧乃は小坂の声を遮った。
「皆がそう望むから。望む人しかいないから」
『笑顔』に綻びができ、悲しみが滲む。
「この目が気付いて、困っている事に手を差し伸べたら、途端にその人は私を『頼れる人間』だと勘違いする」
「…………」
「それを裏切ると、今度はその人から良くないものが見えてしまう。だからそれを見たくなくて、触れたくなくて、その人の望むまま…『真面目で頼りになる優等生』を演じ続けた」
静かに話を聞く彼の瞳に自分と同じ心を感じ、今までずっとずっと抑えていたものが、溢れ出した。
「頑張って、頑張って頑張って、自分を殺すくらい必死になって演じたのに…………誰も…褒めてくれなかった。『頑張ったね』って、言ってくれなかった……。その人達にとっては、それが『当たり前』だったの」
「…………」
「むしろ逆に、彼らの望みから少しでも外れると、『どうしたの?』『もっと頑張って』『ちゃんとやれ』って……苦しい事ばかり要求してきた」
言葉で言われなくても、彼らの目が、纏う空気が、私にそう伝えてきた。……『頑張ったね』と口で言いながら。
「だから、関わる事が苦しくなって、一緒にいる事が辛くなって……いつの間にか…私はこの世界が嫌いになって……そして、私は──」
そこまで言って、碧乃はハッと言葉を止めた。
危うく、言ってしまうところだった。知られてしまうところだった。
もうこれ以上は……っ。
慌てて拒絶の壁を張る。
「もう分かったでしょ?こんな目を持って生まれた私は、この世界で暮らす人間でいる事ができない『できそこない』なんだよ」
早く離れて。
離れて。お願い。
「だから私に傷が付くのは、当然──」
「全然分かんねぇよっ!!」
「っ!?」
小坂は突然、怒りを露わにした。
「斉川のどこが『できそこない』なんだよ!?悪いのは何にも分からないそいつらだろっ!斉川は全然悪くない!」
「…っ、そんなはずない!!だって、だって私は…っ!」
その先の言葉が言えず、彼を打ち負かす事ができない。
「斉川は悪くない!!だからもう、自分を傷付けるなんて馬鹿な事はするなっ!!」
小坂が一歩、碧乃に近付く。
やだ。来るな。
近付くなっ。
「うるさいっっ!自分が自分をどうしようと勝手でしょ?!あんたには関係ない!!」
「関係ない訳ないだろ!!俺が壁を壊したのがいけないんだよな?だったら今度は俺がそいつらを──」
「やめて!!そんな事したってもう遅いのっ!私は…っ、私には……っ」
言えない。でも、言ってしまう。
離れてよ!私はあなたを傷付けたくないっ!
「いいからもう放っておいて!」
醜い姿を見られたくない…っ!
でも……もう……。
「いやだっ!」
疲弊する心が……力を失う。
「今ここで放っておいたら、また自分を傷付けるんだろ?!」
抑えてた思いが……流れ、溢れる。
「こんな事続けてたら、いつか絶対壊れるぞ!俺はそんなの──」
「…いいよ。壊れたって」
「……え…?」
どうして。
なんで離れていかないの。
傷付けたく、なかったのに。
知られたく、なかったのに。
あなたが全部悪いんだよ?
ちゃんと離れてくれないから。
もう知らない。
もう、疲れたよ。
そんなに見たいなら見せてあげる。
全部全部、何もかも。
壁の中に隠したものを。
苦しんだって、知らないから。
傷ついたって、もう知らないから。
†††
ずるり、ずるりと…………悪魔が姿を現した。
†††
闇に溶けた瞳が、彼を写す。
「むしろ壊してしまいたいよ……こんな心」
「っ!」
驚きに見開かれた目を射抜き、悪魔は嗤う。
「そうだよ。壊せばいいんだよ。そうすれば何も感じなくなって、楽になる事ができるもんね」
「さ、斉川……何言って…」
悪魔がゆるりと首を傾げる。
「私がどうして『できそこない』なのか、教えてあげる」
「え…」
「私には……ある願いがある」
悪魔がニタリと嗤いかけた。
「『死にたい』という、願いが」
「っ!!?」
†††
悪魔の名は……“自殺願望”。
†††
悪魔が私に囁く言葉は…………
“もし、今ここで──命を絶つ事ができたなら”
§
見てしまった、悪魔の姿を。
聞いてしまった、悪魔の名を。
そんな………っ……そんなにも、追いつめられていたなんて。
「この世界の何もかもが嫌になって、私はここにいたくないと思うようになって……そうしたらいつの間にか、『死にたい』って思うようになっちゃった」
歪んだ嗤いがそこに浮かぶ。
「あーあ。ちゃんと隠していたのになぁー。君が壁を壊すから」
「っ…!」
だめだ……っ……だめだ!
「また願うようになっちゃったじゃん。ふふ」
「やっ、やめろっ!そんな事しちゃだめだっっ!!」
「うるさいなぁ。もう放っておきなよ、こんな『できそこない』。どうせ近いうちに死ぬんだから」
「死ぬなんて言うなっ!!」
やめろ……っ。
「君のせいで隠せなくなったからなぁー。どうやって死のうかなぁ?」
「やめろってっ!!」
どうすれば……っ。
俺のせいで…斉川が……っ!
「お願いだ斉川っ……死ぬなんて馬鹿な事、もうやめてくれ!」
「…いやだ」
「!」
「苦しみしか与えない。…要らないんだよ…心も体も」
「!?……っ」
その目に宿るは本気の願い。彼女は本当に、死のうとしている。
イヤだ。イヤだっ。
そんな事絶対させない。
やっと、やっと見つけたのに。
いなくなるなんて許さない。
死ぬなんて考え、消してやる。
止めないと。止めないと。
早く。早く。
でも止まらない。
どうすれば。どうすれば。どうすれば。
どうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすれば…っ───
すり減る心が…………ふつりと切れた。
……お前が止まってくれないなら…………俺がお前を止めてやるよ。
§
小坂の顔から、感情が消えた。
「…だったら全部………俺にちょうだい?」
「…は?」
何……言ってるの…?
彼の言葉の意味が分からず、碧乃の中に戸惑いが生じる。
全部全部教えたのに。醜い姿を見せたのに。
どうして逃げていかないの……?
「要らないんだろ?……なにもかも」
感情を失った瞳が、鋭く碧乃を貫いた。
そのままずりっと、一歩踏み出す。
「っ!?」
ビクリと反応し、碧乃は反射的に一歩身を引いた。
分からない。彼の心が分からない。
怖い。怖い。
私はその感情を知らない。
目の前に、姿の分からぬ化け物がいるようだった。
「だったら全部、俺にくれよ」
言いながら、一歩、また一歩と、碧乃に近付く。
「っ…」
いやだ。来るな。
距離を縮められる恐ろしさに、碧乃も一歩、一歩と後ずさる。
「もらってやるよ……なにもかも」
「…っ、ぅ…」
やだ。やめて。やめて。
無意識に首を振ってみせるも、彼の心には届かない。
手にある物を取り落とす音も、彼の耳には聞こえない。
「全部俺のものになっちゃえば……斉川は何もできないだろ?」
やだ。やだ。お願い来ないでっ。
「死ぬだなんて馬鹿な事……考える事すらできなくなる」
「っ…」
近付き。
後ずさり。
そして。
「──っ…あっ…?!」
置いてあった机にぶつかり、碧乃は逃げ場を失った。
と同時に、彼の腕が碧乃を越え、その机に両手をついた。
机と自分の間に囲い込み、完全に逃げ道を塞ぐ。
「やっ……」
触れる程の距離で、虚ろな瞳が碧乃を見下ろす。
やだ。やだ。やだ。やだ。
やめて。やめて。
じわり、じわりと、虚ろな瞳が碧乃に近付く。
「だから…俺に……」
じわり、じわりと、心を捕らえる。
「なにも、かも……」
じわり、じわりと、体を縛る。
動けない。
逃げられない。
私はこの化け物に…………喰われる。
じわり、じわりと、化け物の口が、碧乃の唇に近付く。
いやだ。いやだ。
いやだいやだいやだっ。
喰われるなんて、私が消えるなんて、絶対にいやだっっ!
「──っ、わ分かったっ!」
突然張り上げた声に、化け物はピタリと動きを止めた。
碧乃はぎゅっと目を瞑り、思うままに声を発する。
「あっ、あなたに従うっ……あなたのものになる…っ!…………だからっ……だから、今は…っ……今だけは…………お願い…………それ以上、近付かないで……っ…!」
目も開けられず、震える体も止められず、ただただ化け物が去るのを願う。
「っ…………」
ハッと息を呑む音が聞こえ、彼の気配が離れていくのを感じた。
ただ待ち。
ただ願い。
気配が完全に消えたところで、碧乃はゆっくりと目を開けた。
化け物の姿は、もうなかった。
体から全ての力が抜け、碧乃はずるりとその場に崩れ落ちた。
何やら向こうの方へと視線を送っている彼女に声をかけた。
「斉川?」
「ん?…ああ、おはよう」
ゆるりとした笑みが返ってきた。
どした?なんか機嫌いいな。
「おはよ。こんなとこで何やってんだ?」
言いながら斉川が見ていた方向を見やると、職員室の前にできた人だかりを教師が解散させている所だった。
「なんだ?なんかあったのか?」
「あそこに面白い写真が貼ってあったんだよ」
「面白い写真?」
「これと同じ写真」
斉川は1枚の写真を取り出し、圭佑に見せた。
そこには、斉川にまとわりついていた例の3人組が酒や煙草を片手に騒ぐ姿が写っていた。
「お前これ…!って、それじゃあ…」
斉川があそこに写真貼ったのかよ!
「ふふ。…あ、あれ見て」
斉川に促されるままそちらを向くと、写真に写る3人組が生徒指導室へと連れられていくのが見えた。
「良くて停学、悪くて退学ってとこかなぁ?余罪もいろいろありそうだし。…………やっぱり罪人は罰を受けないとね」
「え…?」
斉川は、ふわりと圭佑に微笑みかけた。
「写真…消してあげたんだってね」
「!」
唐突な言葉に、圭佑は目を剥いた。
「お、お前っ…なんでそれ……!…まさか?!」
「大丈夫。私は何もされてないよ」
「じゃあ、なんで知ってんだよ?!」
「なんかいい加減鬱陶しくなっちゃって、どう排除しようかってやってたら、偶然知っちゃったんだよね」
「……本当に何もされてないんだな?」
「されてないって。こうしてちゃんと先輩にも協力を仰いだし」
言いながら、斉川は手にある写真を示した。
「協力?」
「先輩に、あの3人に何かされても大丈夫なようにお守りがほしいって言ったら、これを手に入れてくれたの」
「…そうなのか」
「知っちゃった以上あれらに情けはいらないなと思って、目立つとこに貼っちゃった。ふふ」
「ふっ、そうか」
ならいいけど。
圭佑も同じ笑みを返した。
「…あれで、名前も知らない被害者さんの心が、少しでも晴れてくれると嬉しいんだけど」
「!…」
苦さの混じるその笑みに、圭佑も同じ思いを抱いた。
被害者が口をつぐんでいる以上、彼らが罰を受ける事はなく、なんとも言えないやるせなさを感じていた。
だからこれで、重い罰が下ればいいと思う。
「…そうだな」
3人の姿を見送り、圭佑は斉川と共に教室へ向かって歩き出した。
……あ、そういえば俺も訊きたい事があったんだった。
「ところで斉川」
「ん?」
「お前まーた光毅になんかしたろ」
「えー?ふふ、なんの事?」
彼女の目の中に楽しさが宿った。
「やっぱりな。あいつ急にお前避けるようになってるし、理由訊いても答えねーしさ」
「だってあれも鬱陶しかったんだもん。ちょっとくらい良いでしょ?」
言いながら、斉川は楽しげに首を傾げてみせる。
「どーせまたちょっとじゃねーんだろ?今度は何したんだよ?」
「ふふふっ、内緒ー」
「なんだよケチ」
俺にもその楽しさ分けろよ。
すると突然、教室の扉の少し手前で斉川が立ち止まった。
「あ?何やってんだ?」
「お先にどうぞ」
「は?意味分かんねー、一緒に入りゃいいじゃん」
「やだよ。そんな事したら私呪われるもん」
「誰にだよ?」
「いいから早く行け」
「なんだよ」
マジで意味分かんね。
仕方なく置いて1人で教室へ入る。
するとすかさず、萌花がパタパタと近付いてきて腕を組んだ。
「圭くんおはよう!」
「ああ、おはよ」
「今日ちょっと来るの遅かったね。なんかあったの?」
「へ?あーいや、別に。ちょっと斉か──ぐぉわっ?!」
話していたら、いきなり片足に膝カックンをかまされた。
誰だよ?!
やったのは斉川だった。横をすり抜ける意地悪な笑みに、途端に苛立ちが沸き起こる。
「てめっ…何しやがる!」
斉川はべーっと舌を出し、意気揚々と離れていった。
「なっ?!お、お前これやりたくて先に行かせたな?!」
光毅の次は俺かよっ!!
「待てこら──」
追いかけようとするが、腕が固定されて動けなかった。
「もー!また2人で楽しそうにしてー!」
「いや、全然楽しくねぇから!!」
くっそ…!あんな奴もう知らねっ!
§
楽しい。楽しい。
今とっても楽しいよ。
だから大丈夫。
今だけ我慢していれば、すぐに壁はできるから。
…………苦しい思いは、私一人がしていれば十分。
§
「………………」
斉川の…本当の心……。
強く拒絶するその心の奥には、一体何があるというのだろう?
彼女が本当に助けを求めているというのなら、なぜ声をあげる事ができないのだろう?
一日中考えてみても、答えが見つかる事はなく。
時はすでに放課後。
部活の練習着に着替えるため、更衣室へと向かう。
…その途中。
「……あれ…?」
窓の外に、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
……斉川?……どこに行くんだ…?
向こうは確か、使われていない古い倉庫があるだけだったはず。
「………………」
光毅は嫌な予感を覚えた。
§
家から持参した小型の懐中電灯で、昨日スマホが落ちていった辺りを照らす。
「……あった」
良かった。そんなに奥までいってなかった。
碧乃は膝をついてぐっと手を伸ばし、隙間に入り込んでいたスマホを取り出した。
埃を払い、とりあえず画面を確認。
…通知は特になし。友人からの連絡など来ないこのスマホは、丸一日放置されたところで、何の問題もないのだ。
したがって、碧乃に何かあったのではと余計な心配をしてくる者もいない。
これでもう大丈夫。昨日の私を知る人なんて、もう誰も──
「何やってるんだ?」
「──っっ!?」
突然の声に、体がビキッと動きを止めた。
見られた。見られた。見られた。
誰に。
「………………」
呼吸の仕方を忘れたまま、ゆっくりと後ろを振り返る。
そこにいたのは……不安と焦りを瞳に宿した、『あいつ』だった。
§
来るはずのない倉庫に入っていく彼女。
考えられない場所から取り出されたスマートフォン。
間違いない。ここで何かがあった。
嫌な予感は当たっていた。
…けど。
遅かった……?
いつだ……?俺はまた…救えなかったのか?
「……あなたこそ、なんでいるの?」
斉川はこちらを見据えゆっくり立ち上がると、静かに問うた。
目の前には、拒絶の壁が見える。
「っ…お、俺は…!向こうから斉川の姿が見えて…気になって…!」
「見えた……」
呟いた途端、彼女は朗らかに笑ってみせた。
「あー、そっか。はは。見られてたんだ」
「っ…」
…やめろ。そうやって笑うな。
「あーあ、またか。今度はうまくいったと思ったのになぁー。なんで私って、いつもいつも最後の詰めが甘いんだろ?」
『笑顔』を見るたび、心がギリギリと締め付けられていく。
「斉川…っ、ここで何があった?」
「さぁ?何だろうねぇ?」
「ごまかすなっ!…『今度』って言ったな………まさか、また谷崎の時みたいに…っ!」
自分を襲わせたんじゃ?!
言い当てた瞬間、彼女から無垢な黒さが溢れ出した。
「…ははっ。あはははは」
斉川はうっそりと嗤いかける。
「やっぱり君はすごいなぁー。なーんでそこ気付いちゃうかなぁ?」
「っ!」
目の前に、悪魔がいるようだった。
「そうだよ?あの3人が邪魔だったから、私の視界から消してあげたんだよ」
「3人…!そんなっ……1人であいつらと……?!」
「1人じゃないよ。ちゃんと先輩にも協力してもらった。と言っても、私が何してたかなんて、あの人は全然知らないけどね。ふふ」
「!…」
なんで……なんでまた…そうやって……っ!
光毅の中に、苦しみと怒りがどろりと沸き出てきた。
「どうして……っ…助けを求めないんだ?!なんで自分が傷付く事ばっかするんだよ?!」
「そんなの…傷付けたいからに決まってるでしょ?」
「…は…?」
なんだって……?
§
私はおかしい人間。ううん、人間にすらなれない『できそこない』なんだよ。
だから早く離れていって。
私の前から早く消えて。
私があなたを傷付ける前に。
碧乃の笑みが、深さを増す。
「人間なんか大っ嫌い。人間がいるこの世界も大っ嫌い。…でも、その人間にすらなれない私はもっと嫌い。だから傷が付いてると安心するの。『できそこない』に相応しい姿になれた、ってね」
小坂の瞳が驚きで見開かれる。
「そんなっ……!違う……絶対に違うっ!斉川は『できそこない』なんかじゃない!!だって、いつも真面目に頑張ってて、皆にすごく優しくて──」
「それは『私』じゃない」
綺麗な言葉が苦しくて、碧乃は小坂の声を遮った。
「皆がそう望むから。望む人しかいないから」
『笑顔』に綻びができ、悲しみが滲む。
「この目が気付いて、困っている事に手を差し伸べたら、途端にその人は私を『頼れる人間』だと勘違いする」
「…………」
「それを裏切ると、今度はその人から良くないものが見えてしまう。だからそれを見たくなくて、触れたくなくて、その人の望むまま…『真面目で頼りになる優等生』を演じ続けた」
静かに話を聞く彼の瞳に自分と同じ心を感じ、今までずっとずっと抑えていたものが、溢れ出した。
「頑張って、頑張って頑張って、自分を殺すくらい必死になって演じたのに…………誰も…褒めてくれなかった。『頑張ったね』って、言ってくれなかった……。その人達にとっては、それが『当たり前』だったの」
「…………」
「むしろ逆に、彼らの望みから少しでも外れると、『どうしたの?』『もっと頑張って』『ちゃんとやれ』って……苦しい事ばかり要求してきた」
言葉で言われなくても、彼らの目が、纏う空気が、私にそう伝えてきた。……『頑張ったね』と口で言いながら。
「だから、関わる事が苦しくなって、一緒にいる事が辛くなって……いつの間にか…私はこの世界が嫌いになって……そして、私は──」
そこまで言って、碧乃はハッと言葉を止めた。
危うく、言ってしまうところだった。知られてしまうところだった。
もうこれ以上は……っ。
慌てて拒絶の壁を張る。
「もう分かったでしょ?こんな目を持って生まれた私は、この世界で暮らす人間でいる事ができない『できそこない』なんだよ」
早く離れて。
離れて。お願い。
「だから私に傷が付くのは、当然──」
「全然分かんねぇよっ!!」
「っ!?」
小坂は突然、怒りを露わにした。
「斉川のどこが『できそこない』なんだよ!?悪いのは何にも分からないそいつらだろっ!斉川は全然悪くない!」
「…っ、そんなはずない!!だって、だって私は…っ!」
その先の言葉が言えず、彼を打ち負かす事ができない。
「斉川は悪くない!!だからもう、自分を傷付けるなんて馬鹿な事はするなっ!!」
小坂が一歩、碧乃に近付く。
やだ。来るな。
近付くなっ。
「うるさいっっ!自分が自分をどうしようと勝手でしょ?!あんたには関係ない!!」
「関係ない訳ないだろ!!俺が壁を壊したのがいけないんだよな?だったら今度は俺がそいつらを──」
「やめて!!そんな事したってもう遅いのっ!私は…っ、私には……っ」
言えない。でも、言ってしまう。
離れてよ!私はあなたを傷付けたくないっ!
「いいからもう放っておいて!」
醜い姿を見られたくない…っ!
でも……もう……。
「いやだっ!」
疲弊する心が……力を失う。
「今ここで放っておいたら、また自分を傷付けるんだろ?!」
抑えてた思いが……流れ、溢れる。
「こんな事続けてたら、いつか絶対壊れるぞ!俺はそんなの──」
「…いいよ。壊れたって」
「……え…?」
どうして。
なんで離れていかないの。
傷付けたく、なかったのに。
知られたく、なかったのに。
あなたが全部悪いんだよ?
ちゃんと離れてくれないから。
もう知らない。
もう、疲れたよ。
そんなに見たいなら見せてあげる。
全部全部、何もかも。
壁の中に隠したものを。
苦しんだって、知らないから。
傷ついたって、もう知らないから。
†††
ずるり、ずるりと…………悪魔が姿を現した。
†††
闇に溶けた瞳が、彼を写す。
「むしろ壊してしまいたいよ……こんな心」
「っ!」
驚きに見開かれた目を射抜き、悪魔は嗤う。
「そうだよ。壊せばいいんだよ。そうすれば何も感じなくなって、楽になる事ができるもんね」
「さ、斉川……何言って…」
悪魔がゆるりと首を傾げる。
「私がどうして『できそこない』なのか、教えてあげる」
「え…」
「私には……ある願いがある」
悪魔がニタリと嗤いかけた。
「『死にたい』という、願いが」
「っ!!?」
†††
悪魔の名は……“自殺願望”。
†††
悪魔が私に囁く言葉は…………
“もし、今ここで──命を絶つ事ができたなら”
§
見てしまった、悪魔の姿を。
聞いてしまった、悪魔の名を。
そんな………っ……そんなにも、追いつめられていたなんて。
「この世界の何もかもが嫌になって、私はここにいたくないと思うようになって……そうしたらいつの間にか、『死にたい』って思うようになっちゃった」
歪んだ嗤いがそこに浮かぶ。
「あーあ。ちゃんと隠していたのになぁー。君が壁を壊すから」
「っ…!」
だめだ……っ……だめだ!
「また願うようになっちゃったじゃん。ふふ」
「やっ、やめろっ!そんな事しちゃだめだっっ!!」
「うるさいなぁ。もう放っておきなよ、こんな『できそこない』。どうせ近いうちに死ぬんだから」
「死ぬなんて言うなっ!!」
やめろ……っ。
「君のせいで隠せなくなったからなぁー。どうやって死のうかなぁ?」
「やめろってっ!!」
どうすれば……っ。
俺のせいで…斉川が……っ!
「お願いだ斉川っ……死ぬなんて馬鹿な事、もうやめてくれ!」
「…いやだ」
「!」
「苦しみしか与えない。…要らないんだよ…心も体も」
「!?……っ」
その目に宿るは本気の願い。彼女は本当に、死のうとしている。
イヤだ。イヤだっ。
そんな事絶対させない。
やっと、やっと見つけたのに。
いなくなるなんて許さない。
死ぬなんて考え、消してやる。
止めないと。止めないと。
早く。早く。
でも止まらない。
どうすれば。どうすれば。どうすれば。
どうすればどうすればどうすればどうすればどうすればどうすれば…っ───
すり減る心が…………ふつりと切れた。
……お前が止まってくれないなら…………俺がお前を止めてやるよ。
§
小坂の顔から、感情が消えた。
「…だったら全部………俺にちょうだい?」
「…は?」
何……言ってるの…?
彼の言葉の意味が分からず、碧乃の中に戸惑いが生じる。
全部全部教えたのに。醜い姿を見せたのに。
どうして逃げていかないの……?
「要らないんだろ?……なにもかも」
感情を失った瞳が、鋭く碧乃を貫いた。
そのままずりっと、一歩踏み出す。
「っ!?」
ビクリと反応し、碧乃は反射的に一歩身を引いた。
分からない。彼の心が分からない。
怖い。怖い。
私はその感情を知らない。
目の前に、姿の分からぬ化け物がいるようだった。
「だったら全部、俺にくれよ」
言いながら、一歩、また一歩と、碧乃に近付く。
「っ…」
いやだ。来るな。
距離を縮められる恐ろしさに、碧乃も一歩、一歩と後ずさる。
「もらってやるよ……なにもかも」
「…っ、ぅ…」
やだ。やめて。やめて。
無意識に首を振ってみせるも、彼の心には届かない。
手にある物を取り落とす音も、彼の耳には聞こえない。
「全部俺のものになっちゃえば……斉川は何もできないだろ?」
やだ。やだ。お願い来ないでっ。
「死ぬだなんて馬鹿な事……考える事すらできなくなる」
「っ…」
近付き。
後ずさり。
そして。
「──っ…あっ…?!」
置いてあった机にぶつかり、碧乃は逃げ場を失った。
と同時に、彼の腕が碧乃を越え、その机に両手をついた。
机と自分の間に囲い込み、完全に逃げ道を塞ぐ。
「やっ……」
触れる程の距離で、虚ろな瞳が碧乃を見下ろす。
やだ。やだ。やだ。やだ。
やめて。やめて。
じわり、じわりと、虚ろな瞳が碧乃に近付く。
「だから…俺に……」
じわり、じわりと、心を捕らえる。
「なにも、かも……」
じわり、じわりと、体を縛る。
動けない。
逃げられない。
私はこの化け物に…………喰われる。
じわり、じわりと、化け物の口が、碧乃の唇に近付く。
いやだ。いやだ。
いやだいやだいやだっ。
喰われるなんて、私が消えるなんて、絶対にいやだっっ!
「──っ、わ分かったっ!」
突然張り上げた声に、化け物はピタリと動きを止めた。
碧乃はぎゅっと目を瞑り、思うままに声を発する。
「あっ、あなたに従うっ……あなたのものになる…っ!…………だからっ……だから、今は…っ……今だけは…………お願い…………それ以上、近付かないで……っ…!」
目も開けられず、震える体も止められず、ただただ化け物が去るのを願う。
「っ…………」
ハッと息を呑む音が聞こえ、彼の気配が離れていくのを感じた。
ただ待ち。
ただ願い。
気配が完全に消えたところで、碧乃はゆっくりと目を開けた。
化け物の姿は、もうなかった。
体から全ての力が抜け、碧乃はずるりとその場に崩れ落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる