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第39話 聖女、デート宣言――“神殿から始まる二人暮らし計画”
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翌朝。
雪はやみ、空気は少し柔らかくなっていた。
「……おはようございます、真由さん。」
「おはよう、恋人くん。」
「っ――!?」
朝一番でのその一言に、ユウヒの顔が一瞬で真っ赤に染まる。
「こ、こい……っ!? こ、恋人って……!」
「え? 昨日そういう話だったでしょ?
“好きです”って、お互い言ったじゃん。」
「い、言いましたけどっ!」
「じゃあ、恋人だね。はい、異論却下。」
こたつの中から笑う真由。
その余裕の表情に、ユウヒは完全にペースを崩されていた。
◇ ◇ ◇
「というわけで、今日はデートしよう。」
「……で、デート?」
「そう。“恋人ごっこ”じゃなくて、本物。」
「……っ!」
(本物って言われただけで心臓の魔力暴発しそう……)
「で、どこ行きたい?」
「そ、それは……! 真由さんが決めてくださるなら……」
「じゃあ決まり。神殿デート。」
「……え?」
「ほら、仕事サボって出かけるのも悪いでしょ?
だったら神殿の中でデートすればいいの。」
「そ、そういう発想……!」
ぐうたらの発想は、常に前向きで怠惰だ。
◇ ◇ ◇
デート開始。
まずは「聖堂の花園」。
信徒たちが祈りを捧げる静かな場所。
「……あの、デートで花壇って……」
「いいでしょ。ロマンチックじゃん。ほら、手。」
真由が自然に手を伸ばす。
ユウヒは一瞬ためらって――でも、そっと握った。
「……あったかいですね。」
「でしょ? 冬仕様の恋人だから。」
「冬仕様って、そんな機能があるんですか。」
「抱き枕兼ヒーターです。」
「最強の聖女だ……」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
◇ ◇ ◇
次の目的地、「厨房」。
「え、厨房って……」
「デートって食事がつきものじゃん。
神殿のごはんもいいけど、今日は特別メニュー。」
真由が袖をまくり、エプロンを着ける。
「ま、まさか……真由さんが料理を!?」
「まさか、って何。」
「い、いえ! その……新鮮で……」
「よし、愛の味見役に任命する。」
「そ、そんな大役……!」
――数分後。
「はい、完成。“こたつ風煮込み”!」
「……ネーミングがすでに暖かい……」
「中にみかんの皮の香り入ってるんだよ。」
「え、そんな調味法が!?」
スプーンを口に運ぶユウヒ。
一瞬で顔がほころぶ。
「……美味しい。優しい味です。」
「でしょ。君の笑顔スパイス入り。」
「……えっ。」
「ふふっ、今の照れ顔でまた味変した。」
◇ ◇ ◇
午後。
こたつの間に戻って、お茶を飲みながらまったり。
「ねぇ、ユウヒくん。」
「はい。」
「もし、ここで“ふたり暮らし”できたら、楽しいだろうね。」
「……ふたり暮らし……。」
「朝はこたつで朝食、昼はお昼寝、夜は一緒にお茶。
最高じゃない?」
「……はい。とても、幸せそうです。」
「じゃあ、今日から“神殿同棲(※仮)”開始ね。」
「な、なんですかその制度は!?」
「今日から、君の席こたつの隣ね。」
「え!? あの、あれ僕の執務机――」
「はい、移動完了。」
真由は自分の枕をユウヒの席に置いた。
そのまま笑って言う。
「ね、これでいつでも近くにいられるでしょ?」
「……ほんとに、ずるい人です。」
「そうだよ、ぐうたらだもん。」
こたつの下で、ふたりの足が触れ合う。
その温かさに、世界の時間がゆるやかに溶けていった。
◇ ◇ ◇
夜。
窓の外では、雪が再び降り始めていた。
「……今日のデート、楽しかった。」
「僕もです。」
「ねぇ、ユウヒくん。」
「はい。」
「これからも、“こたつの半分”君のね。」
「……ありがとうございます。」
風鈴が、静かに鳴った。
それはまるで、神様が笑っているようだった。
次回予告
第40話 「聖女、恋人同棲はじめました――“神殿ルームシェア生活!”」
――お楽しみに!
雪はやみ、空気は少し柔らかくなっていた。
「……おはようございます、真由さん。」
「おはよう、恋人くん。」
「っ――!?」
朝一番でのその一言に、ユウヒの顔が一瞬で真っ赤に染まる。
「こ、こい……っ!? こ、恋人って……!」
「え? 昨日そういう話だったでしょ?
“好きです”って、お互い言ったじゃん。」
「い、言いましたけどっ!」
「じゃあ、恋人だね。はい、異論却下。」
こたつの中から笑う真由。
その余裕の表情に、ユウヒは完全にペースを崩されていた。
◇ ◇ ◇
「というわけで、今日はデートしよう。」
「……で、デート?」
「そう。“恋人ごっこ”じゃなくて、本物。」
「……っ!」
(本物って言われただけで心臓の魔力暴発しそう……)
「で、どこ行きたい?」
「そ、それは……! 真由さんが決めてくださるなら……」
「じゃあ決まり。神殿デート。」
「……え?」
「ほら、仕事サボって出かけるのも悪いでしょ?
だったら神殿の中でデートすればいいの。」
「そ、そういう発想……!」
ぐうたらの発想は、常に前向きで怠惰だ。
◇ ◇ ◇
デート開始。
まずは「聖堂の花園」。
信徒たちが祈りを捧げる静かな場所。
「……あの、デートで花壇って……」
「いいでしょ。ロマンチックじゃん。ほら、手。」
真由が自然に手を伸ばす。
ユウヒは一瞬ためらって――でも、そっと握った。
「……あったかいですね。」
「でしょ? 冬仕様の恋人だから。」
「冬仕様って、そんな機能があるんですか。」
「抱き枕兼ヒーターです。」
「最強の聖女だ……」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
◇ ◇ ◇
次の目的地、「厨房」。
「え、厨房って……」
「デートって食事がつきものじゃん。
神殿のごはんもいいけど、今日は特別メニュー。」
真由が袖をまくり、エプロンを着ける。
「ま、まさか……真由さんが料理を!?」
「まさか、って何。」
「い、いえ! その……新鮮で……」
「よし、愛の味見役に任命する。」
「そ、そんな大役……!」
――数分後。
「はい、完成。“こたつ風煮込み”!」
「……ネーミングがすでに暖かい……」
「中にみかんの皮の香り入ってるんだよ。」
「え、そんな調味法が!?」
スプーンを口に運ぶユウヒ。
一瞬で顔がほころぶ。
「……美味しい。優しい味です。」
「でしょ。君の笑顔スパイス入り。」
「……えっ。」
「ふふっ、今の照れ顔でまた味変した。」
◇ ◇ ◇
午後。
こたつの間に戻って、お茶を飲みながらまったり。
「ねぇ、ユウヒくん。」
「はい。」
「もし、ここで“ふたり暮らし”できたら、楽しいだろうね。」
「……ふたり暮らし……。」
「朝はこたつで朝食、昼はお昼寝、夜は一緒にお茶。
最高じゃない?」
「……はい。とても、幸せそうです。」
「じゃあ、今日から“神殿同棲(※仮)”開始ね。」
「な、なんですかその制度は!?」
「今日から、君の席こたつの隣ね。」
「え!? あの、あれ僕の執務机――」
「はい、移動完了。」
真由は自分の枕をユウヒの席に置いた。
そのまま笑って言う。
「ね、これでいつでも近くにいられるでしょ?」
「……ほんとに、ずるい人です。」
「そうだよ、ぐうたらだもん。」
こたつの下で、ふたりの足が触れ合う。
その温かさに、世界の時間がゆるやかに溶けていった。
◇ ◇ ◇
夜。
窓の外では、雪が再び降り始めていた。
「……今日のデート、楽しかった。」
「僕もです。」
「ねぇ、ユウヒくん。」
「はい。」
「これからも、“こたつの半分”君のね。」
「……ありがとうございます。」
風鈴が、静かに鳴った。
それはまるで、神様が笑っているようだった。
次回予告
第40話 「聖女、恋人同棲はじめました――“神殿ルームシェア生活!”」
――お楽しみに!
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