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第40話 聖女、恋人同棲はじめました――“神殿ルームシェア生活!
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朝――。
神殿の廊下に、ひそひそ声が響いていた。
「ねぇ見た? ユウヒ様と聖女さま、同じ部屋に……」
「“こたつ共有”だって……それってつまり……!」
「な、なんて神聖な同棲……っ!」
――既に噂は神殿中に拡散済み。
当の本人たちは、その“こたつの間”で朝食中だった。
「……なんか外が騒がしいね。」
「はい。どうやら、“神殿に新たな夫婦の象徴が誕生した”という噂が……」
「夫婦!? ちょ、まだそこまで進んでないよ!」
「ええ、僕も困惑してます……でも否定すると、何か負けた気がして……」
「そのプライドの方向おかしくない?」
こたつの上には、焼きたてのパンと温かいスープ。
二人分のカップから、湯気がゆらゆらと立ち上っていた。
◇ ◇ ◇
「ねぇユウヒくん、これってもう“同棲”って言っていいのかな?」
「えっ、あ、そ、その……!」
「毎朝一緒にごはん食べて、昼寝もして、夜も同じ部屋で話してるし。」
「ま、まあ……生活を共にしていますから、
確かに“ルームシェア”には該当するかと……!」
「じゃあ、“恋人ルームシェア”ね。」
「わ、わかりました……!」
(完全に流されてる……でも、嫌じゃない……どころか、嬉しい……)
ユウヒの心拍が上がるたび、
真由の笑顔もほんのりと赤く染まる。
◇ ◇ ◇
昼。
こたつの中。
真由は毛布にくるまりながら書き物をしていた。
「……なにしてるんですか?」
「うん、新しい聖句考えてるの。」
「聖句?」
「“働かざる者、癒されよ”ってやつ。」
「完全に怠惰の教えじゃないですか!」
「いいでしょ、癒し系信仰。」
「でも、それなら……」
ユウヒがふっと笑って、ペンを取った。
「僕はこう書きます。“愛する者、共にぬくもれ”。」
「……あぁ、それ、すごく好き。」
ふたりで笑い合いながら、
新しい“教義(ラブラブ名言)”が生まれていく。
◇ ◇ ◇
午後――。
ユウヒは掃除を始め、真由はこたつの中で指示だけ出していた。
「そこもうちょっと右~。」
「はい。」
「あ、花瓶の角度がちょっと……」
「わかりました。」
「やっぱりこっちかな?」
「……真由さん。」
「ん?」
「働かない監督って、ほんと強いです。」
「ふふ、恋人特権だよ?」
(……まいったな。本気で可愛い。)
ユウヒはため息をつきつつも、
結局、全部言う通りにしてしまうのだった。
◇ ◇ ◇
夜。
二人で紅茶を飲みながら、
小さな灯りの中で話す。
「……ねぇ、ユウヒくん。」
「はい。」
「こうやって一緒にいる時間、
ずっと続けばいいなって思っちゃう。」
「……僕も、同じです。」
「でもさ、神様また“使命”とか言ってくるかもしれないじゃん?」
「その時は――」
ユウヒは彼女の手をそっと取って、まっすぐに言った。
「僕が、“帰ってくる場所”になります。」
「……っ。」
その言葉に、真由の胸が熱くなった。
「……じゃあ、帰ってきたらまたこたつ入ろうね。」
「はい。必ず。」
二人の手が、こたつの下でほどけずに繋がっていた。
◇ ◇ ◇
外では雪がまた静かに降り始め、
神殿の屋根を白く染めていく。
けれどその部屋だけは、
春みたいにあたたかかった。
次回予告
第41話 「聖女、朝からイチャイチャ――“恋人同棲の弊害(※甘すぎ)”」
――お楽しみに!
神殿の廊下に、ひそひそ声が響いていた。
「ねぇ見た? ユウヒ様と聖女さま、同じ部屋に……」
「“こたつ共有”だって……それってつまり……!」
「な、なんて神聖な同棲……っ!」
――既に噂は神殿中に拡散済み。
当の本人たちは、その“こたつの間”で朝食中だった。
「……なんか外が騒がしいね。」
「はい。どうやら、“神殿に新たな夫婦の象徴が誕生した”という噂が……」
「夫婦!? ちょ、まだそこまで進んでないよ!」
「ええ、僕も困惑してます……でも否定すると、何か負けた気がして……」
「そのプライドの方向おかしくない?」
こたつの上には、焼きたてのパンと温かいスープ。
二人分のカップから、湯気がゆらゆらと立ち上っていた。
◇ ◇ ◇
「ねぇユウヒくん、これってもう“同棲”って言っていいのかな?」
「えっ、あ、そ、その……!」
「毎朝一緒にごはん食べて、昼寝もして、夜も同じ部屋で話してるし。」
「ま、まあ……生活を共にしていますから、
確かに“ルームシェア”には該当するかと……!」
「じゃあ、“恋人ルームシェア”ね。」
「わ、わかりました……!」
(完全に流されてる……でも、嫌じゃない……どころか、嬉しい……)
ユウヒの心拍が上がるたび、
真由の笑顔もほんのりと赤く染まる。
◇ ◇ ◇
昼。
こたつの中。
真由は毛布にくるまりながら書き物をしていた。
「……なにしてるんですか?」
「うん、新しい聖句考えてるの。」
「聖句?」
「“働かざる者、癒されよ”ってやつ。」
「完全に怠惰の教えじゃないですか!」
「いいでしょ、癒し系信仰。」
「でも、それなら……」
ユウヒがふっと笑って、ペンを取った。
「僕はこう書きます。“愛する者、共にぬくもれ”。」
「……あぁ、それ、すごく好き。」
ふたりで笑い合いながら、
新しい“教義(ラブラブ名言)”が生まれていく。
◇ ◇ ◇
午後――。
ユウヒは掃除を始め、真由はこたつの中で指示だけ出していた。
「そこもうちょっと右~。」
「はい。」
「あ、花瓶の角度がちょっと……」
「わかりました。」
「やっぱりこっちかな?」
「……真由さん。」
「ん?」
「働かない監督って、ほんと強いです。」
「ふふ、恋人特権だよ?」
(……まいったな。本気で可愛い。)
ユウヒはため息をつきつつも、
結局、全部言う通りにしてしまうのだった。
◇ ◇ ◇
夜。
二人で紅茶を飲みながら、
小さな灯りの中で話す。
「……ねぇ、ユウヒくん。」
「はい。」
「こうやって一緒にいる時間、
ずっと続けばいいなって思っちゃう。」
「……僕も、同じです。」
「でもさ、神様また“使命”とか言ってくるかもしれないじゃん?」
「その時は――」
ユウヒは彼女の手をそっと取って、まっすぐに言った。
「僕が、“帰ってくる場所”になります。」
「……っ。」
その言葉に、真由の胸が熱くなった。
「……じゃあ、帰ってきたらまたこたつ入ろうね。」
「はい。必ず。」
二人の手が、こたつの下でほどけずに繋がっていた。
◇ ◇ ◇
外では雪がまた静かに降り始め、
神殿の屋根を白く染めていく。
けれどその部屋だけは、
春みたいにあたたかかった。
次回予告
第41話 「聖女、朝からイチャイチャ――“恋人同棲の弊害(※甘すぎ)”」
――お楽しみに!
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