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最終話 聖女、初めてのケンカ!?――“ぐうたら妻と過保護夫のすれ違い日記”
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朝。
いつものこたつ。
いつも通りのぬくもり。
――のはずだった。
「……ユウヒ、あのさ。」
「はい、真由。」
「勝手に洗濯しないでって言ったよね?」
「ですが、干した方が乾きますから。」
「そういう問題じゃなくて! 順番があるの!」
「順番?」
「“やる気が出るまで寝かせる期間”っていうのが!」
「……初耳です。」
こたつの上に、きれいに畳まれた服の山。
そして、拗ねた私。
◇ ◇ ◇
「僕、真由のためになると思って……」
「うん、わかってる。君が優しいのも知ってる。」
「じゃあ、なぜ怒ってるんですか?」
「だから! やる気が寝てる時に起こされると、逆に疲れるの!」
「……やる気も睡眠が必要なんですね。」
「そう! うちのやる気はロングスリーパーなの!」
(我ながら意味わからん理論だけど、これは譲れない……!)
◇ ◇ ◇
そのあと二人とも少し黙ってしまった。
こたつの中で足先だけがぶつかって、
それすらも妙に気まずい。
「……ごめん。」
最初に口を開いたのは、ユウヒだった。
「僕、あなたのペースを尊重しなきゃいけませんでした。」
「……ううん、私も言い方キツかった。ごめん。」
沈黙。
そして、ふたり同時に小さく笑う。
「ねぇ、ケンカって、疲れるね。」
「ええ。でも、こうしてすぐ仲直りできるなら、悪くないです。」
「……それ、ちょっといいこと言ったね。」
◇ ◇ ◇
午後。
こたつの上には湯気の立つカップ。
私たちは向かい合って座り、
いつも通りのぬくもりに包まれていた。
「ねぇ、ユウヒ。」
「はい。」
「もし、またケンカしたらどうする?」
「その時は、こたつ会議を開きましょう。」
「こたつ会議?」
「お互い毛布の中で反省文を朗読します。」
「……それ絶対、眠くなって終わるやつ。」
「では、“反省寝落ち”という名目にしましょう。」
「……なんかもう、それでいいや。」
二人で笑いながら、
カップを軽く合わせた。
◇ ◇ ◇
外では雪がやんで、
うっすらと陽光が差している。
私は毛布にくるまりながら、ぽつりと呟いた。
「ねぇ、ユウヒ。」
「はい。」
「私ね、思うんだ。」
「何を、ですか?」
「“幸せ”って、特別なことじゃないんだって。」
「こたつがあって、君がいて、紅茶があって。
たぶん、それだけで人生完結してる。」
「僕も同じです。」
「ほんと?」
「ええ。僕にとって、あなたが“世界の中心”ですから。」
「……またそういうこと言う。」
「本音です。」
照れ笑い。
けれど、その言葉に嘘はない。
◇ ◇ ◇
こたつの中で、ユウヒがそっと私の手を握る。
薬指の指輪が、小さく光った。
「……真由。」
「ん。」
「これからも、たくさんケンカして、
たくさん笑いましょう。」
「うん。あと、たくさん寝よう。」
「それが真由の誓いですか?」
「うん。“愛も惰眠も永遠に”ってね。」
「……すばらしい信仰ですね。」
「でしょ?」
二人で見つめ合って笑った。
その笑い声が、
神殿の天井をやさしく揺らす。
どこかで、雪解けの音がした気がした。
◇ ◇ ◇
――こうして私の異世界生活は、
ベッドとこたつと、ひとりの神官に包まれて続いていく。
誰かが言ってた。
「聖女は世界を救うもの」って。
でも、私に言わせれば――
**“聖女は、布団の中で世界を癒やすもの”**だと思う。
今日も、明日も、
このぬくもりの中で。
「おやすみ、ユウヒ。」
「おやすみなさい、真由。」
世界のどこよりもあたたかい夜が、
静かに、優しく、二人を包んでいた。
◇◇◇
✨【完】
いつものこたつ。
いつも通りのぬくもり。
――のはずだった。
「……ユウヒ、あのさ。」
「はい、真由。」
「勝手に洗濯しないでって言ったよね?」
「ですが、干した方が乾きますから。」
「そういう問題じゃなくて! 順番があるの!」
「順番?」
「“やる気が出るまで寝かせる期間”っていうのが!」
「……初耳です。」
こたつの上に、きれいに畳まれた服の山。
そして、拗ねた私。
◇ ◇ ◇
「僕、真由のためになると思って……」
「うん、わかってる。君が優しいのも知ってる。」
「じゃあ、なぜ怒ってるんですか?」
「だから! やる気が寝てる時に起こされると、逆に疲れるの!」
「……やる気も睡眠が必要なんですね。」
「そう! うちのやる気はロングスリーパーなの!」
(我ながら意味わからん理論だけど、これは譲れない……!)
◇ ◇ ◇
そのあと二人とも少し黙ってしまった。
こたつの中で足先だけがぶつかって、
それすらも妙に気まずい。
「……ごめん。」
最初に口を開いたのは、ユウヒだった。
「僕、あなたのペースを尊重しなきゃいけませんでした。」
「……ううん、私も言い方キツかった。ごめん。」
沈黙。
そして、ふたり同時に小さく笑う。
「ねぇ、ケンカって、疲れるね。」
「ええ。でも、こうしてすぐ仲直りできるなら、悪くないです。」
「……それ、ちょっといいこと言ったね。」
◇ ◇ ◇
午後。
こたつの上には湯気の立つカップ。
私たちは向かい合って座り、
いつも通りのぬくもりに包まれていた。
「ねぇ、ユウヒ。」
「はい。」
「もし、またケンカしたらどうする?」
「その時は、こたつ会議を開きましょう。」
「こたつ会議?」
「お互い毛布の中で反省文を朗読します。」
「……それ絶対、眠くなって終わるやつ。」
「では、“反省寝落ち”という名目にしましょう。」
「……なんかもう、それでいいや。」
二人で笑いながら、
カップを軽く合わせた。
◇ ◇ ◇
外では雪がやんで、
うっすらと陽光が差している。
私は毛布にくるまりながら、ぽつりと呟いた。
「ねぇ、ユウヒ。」
「はい。」
「私ね、思うんだ。」
「何を、ですか?」
「“幸せ”って、特別なことじゃないんだって。」
「こたつがあって、君がいて、紅茶があって。
たぶん、それだけで人生完結してる。」
「僕も同じです。」
「ほんと?」
「ええ。僕にとって、あなたが“世界の中心”ですから。」
「……またそういうこと言う。」
「本音です。」
照れ笑い。
けれど、その言葉に嘘はない。
◇ ◇ ◇
こたつの中で、ユウヒがそっと私の手を握る。
薬指の指輪が、小さく光った。
「……真由。」
「ん。」
「これからも、たくさんケンカして、
たくさん笑いましょう。」
「うん。あと、たくさん寝よう。」
「それが真由の誓いですか?」
「うん。“愛も惰眠も永遠に”ってね。」
「……すばらしい信仰ですね。」
「でしょ?」
二人で見つめ合って笑った。
その笑い声が、
神殿の天井をやさしく揺らす。
どこかで、雪解けの音がした気がした。
◇ ◇ ◇
――こうして私の異世界生活は、
ベッドとこたつと、ひとりの神官に包まれて続いていく。
誰かが言ってた。
「聖女は世界を救うもの」って。
でも、私に言わせれば――
**“聖女は、布団の中で世界を癒やすもの”**だと思う。
今日も、明日も、
このぬくもりの中で。
「おやすみ、ユウヒ。」
「おやすみなさい、真由。」
世界のどこよりもあたたかい夜が、
静かに、優しく、二人を包んでいた。
◇◇◇
✨【完】
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