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後章
学園祭準備(愛しの先輩)
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休憩室の扉を後ろ手に閉めたひいなは、わずかに肩を落とした。
(まったく、面倒くさい先輩だな)
余裕ぶった笑顔の裏で、まだ心臓が速く跳ねている。
あんなに感情的に怒った彩里先輩は、初めて見た。
それほど、詩弦先輩のことを大事に想っているんだろう。
なんだかんだ言って、詩弦先輩もだ。
前までだったらさっきの話し合いで、きっと彩里先輩を責めてたに違いない。
いつのまにか、2人の先輩の距離は確実に近くなっていた。
「もう付き合っちゃえばいいのに――」
「ひいなちゃん?」
角を曲がって目の前に立っていたのは、蓮先輩だった。
大きな瞳を心配そうに揺らしている。
「え!?なんで?!」
ひいなは思わず立ち止まる。
(もしかして、さっきの会話、聞かれて――)
胸に冷たいものが走り、一瞬声が出なかった。
「具合、悪いの?」
蓮先輩が眉を下げてのぞき込んでくる。
「……へ?」
間抜けな声が出たあと、ハッと気づいた。
(そっか、休憩室から出てきたからか)
胸を撫で下ろし、ようやく息を整える。
どうやら会話の内容は聞かれていなかったようだ。
「全然、なんともないですよ」
ひいなは安心を隠すように、いつもの笑顔で答えた。
その声色は、どこか甘やかだった。
「そっか。ならよかった」
愛しの先輩はほっとしたように微笑む。その表情に、胸の奥がじんわり熱くなる。
気づけば、二人の手が自然に触れ合い、絡んでいた。
蓮先輩は驚く様子もなく、当たり前みたいに指を握り返してくる。
「行こっか、教室戻ろ」
「……はい!」
ひいなは蓮を見上げ、小さく答えた。
ただそれだけのやり取りが、胸の奥をくすぐるように愛しくて。
廊下を歩く足取りは、もう充分、軽くなっていた。
(まったく、面倒くさい先輩だな)
余裕ぶった笑顔の裏で、まだ心臓が速く跳ねている。
あんなに感情的に怒った彩里先輩は、初めて見た。
それほど、詩弦先輩のことを大事に想っているんだろう。
なんだかんだ言って、詩弦先輩もだ。
前までだったらさっきの話し合いで、きっと彩里先輩を責めてたに違いない。
いつのまにか、2人の先輩の距離は確実に近くなっていた。
「もう付き合っちゃえばいいのに――」
「ひいなちゃん?」
角を曲がって目の前に立っていたのは、蓮先輩だった。
大きな瞳を心配そうに揺らしている。
「え!?なんで?!」
ひいなは思わず立ち止まる。
(もしかして、さっきの会話、聞かれて――)
胸に冷たいものが走り、一瞬声が出なかった。
「具合、悪いの?」
蓮先輩が眉を下げてのぞき込んでくる。
「……へ?」
間抜けな声が出たあと、ハッと気づいた。
(そっか、休憩室から出てきたからか)
胸を撫で下ろし、ようやく息を整える。
どうやら会話の内容は聞かれていなかったようだ。
「全然、なんともないですよ」
ひいなは安心を隠すように、いつもの笑顔で答えた。
その声色は、どこか甘やかだった。
「そっか。ならよかった」
愛しの先輩はほっとしたように微笑む。その表情に、胸の奥がじんわり熱くなる。
気づけば、二人の手が自然に触れ合い、絡んでいた。
蓮先輩は驚く様子もなく、当たり前みたいに指を握り返してくる。
「行こっか、教室戻ろ」
「……はい!」
ひいなは蓮を見上げ、小さく答えた。
ただそれだけのやり取りが、胸の奥をくすぐるように愛しくて。
廊下を歩く足取りは、もう充分、軽くなっていた。
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