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5.惹かれていく

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あれから数日が経ったが、
ニケ様の言葉と真剣な表情が頭から離れない。
ニケ様は待つと言ってくださったが、いつまでも先延ばしする事はできないだろう。

「お嬢様、ニケ様がいらっしゃったようですよ。」


「ニケ様が?分かりました。向かいます。」


あれから数日しか経っておらず、返事は決まっていない。

客間に向かうと、私を見つけて顔がほころぶニケ様がいた。

思わずその表情にドキッとしてしまう。


「ニケ様、ごきげん麗しゅうございます。今日はその…どう言った件で…。」


「その、フィオナの顔を見たくって…。あ、これ綺麗な花を見つけたから良かったら。」

「まぁ、ありがとうございます。ブルスターですね!私、この花が大好きで…。ご存知でしたの?」


「良かった!フィオナが部屋や客間に飾っていたから好きなのかと思ったんだ。フィオナらしい可愛い花だね。」


「ありがとうございます。」

確かに、侯爵家にいた時に飾っていた。きっと、ゴードンは私の好きな花なんて知らないだろう。
ニケ様はこのような細かい所まで気がつく方なのだ。


「では、今日は少し寄っただけなのでこれで失礼するよ。」

「もう行かれるのですか?」


「また、寄らせてもらう。」


そうして、返事の催促などもせず帰っていった。



その日を境に、ニケ様は頻繁にこの伯爵家を訪れた。

ニケ様の話は興味深いものが多く、時には為になるような話、時には笑ってしまうような話…。話をする事が私はいつのまにか楽しみになっていた。







そうして、3ヶ月程経ったある日…。


「お嬢様、お嬢様。」

「なっなぁに?マリナ。」


「お嬢様ったら、ニケ様の事を考えてらしたのでしょう??何度呼んでも上の空でお返事してくださらないのですからっ!」

冗談めかしてマリナに言われる。


「か、考えてなんて……。」

「いますよね?」

「う……!」

図星だ。何度お会いしてもプロポーズの話題には触れてこられない。
正直、私はニケ様に惹かれている。
しかし、返事をするタイミングが無いのだ…。
ゴードンと離婚してからまだ4ヶ月ほどしか経っていないのに、品の無い女だと思われるだろうか…。
そもそもゴードンに惹かれた事は一度も無かった。
間違いなくこれが私の初恋だ。


「お嬢様、今日は何色のドレスにいたしましょうか?」


「今日は…。淡い青色のドレスが良いわ。なんだか、今日はニケ様がいらっしゃるような気がして…。」


「お嬢様の好きな花の色ですね。そうしましょう。」


その時、ドアをノックする音が響き、セバスチャンが姿を見せる。

「フィオナ様、ニケ様がいらっしゃいました。」

マリナが嬉しそうに私の顔を見るのだった。


すぐ、支度をして客間へ向かうと、いつもより少し気落ちしている様子のニケ様がいた。


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