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4.突然の
しおりを挟む突然のプロポーズに思わず固まる。
「あの、えっと…。」
何か言葉を述べなければいけないと返事に窮していると、
「だめだっっ!!」
私の父が叫んだ。
「お、お父様!ニケ様に何て事を…!」
相手は侯爵家で、我が家は伯爵家だ。
こちらに拒否権など無いし、失礼な態度を取れば、伯爵家の立場も危うくなってしまうかもしれない。
「ニケ様。分かっております。侯爵家様にこのような事を言うことが許されないと言う事が。しかし、フィオナは先日サンダーム家のゴードン様に手ひどく捨てられました。今に貴族の間で、フィオナは子どもができない女で追い出されたと噂されるでしょう…。娘がこのような目に合い、腹を立てぬ親などおりません…!」
「お父様…。」
そんな風に思っていてくれたなんて…。
「失礼ですが、私も同感でございます…。ニケ様と結婚すれば、きっとゴードン様と顔を合わせる事もあるでしょう…。これ以上娘を傷付けたくありません…。」
「お母様…。」
「御両親の言う事は、全くもってその通りだと思います。愚兄はフィオナ様に許されぬ事をしました。しかし…。私が必ず愚兄や世間の目から守ってみせます。」
「ニケ様…。どうして私なのでしょうか…。」
世間的にも夫を愛人に寝取られ、捨てられた惨めな女なのに。
「初めて兄の婚約者として紹介された時から心惹かれていたのだ。立ち振る舞いも、話し方も…。そして2人が結婚してからも、フィオナの実は強かな所や、使用人や両親への態度など、知れば知るほど心惹かれて止まなかった。しかし、兄の婚約者にそのような気持ちを抱いてはいけないと思い、自ら遠征に多く志願していたのだ…。」
「そ、そんな風に思ってくださっていたなんて…。」
……知らなかった。思わず顔を赤らめてしまい、両手で頬を包む。
「私は絶対に貴女を傷つけたりしない。誓う。こんな、弱味に付け込むような時に言って申し訳ない。しかし、絶対に諦めたくないんだ。どうか考えて欲しい。」
「ニケ様…。ありがとうございます…。」
侯爵家のニケ様が無理やり結婚を取り決めたら、伯爵家の私たちは従うしか無いのに、ニケ様はこうして私に決定を委ねてくださっている…。
両親も、ニケ様の真剣な様子に複雑そうな表情で私たちを見守っている。
「しかし、突然来てこのような事を言ってきっと困らせてしまっているだろうから、今日はここで帰らせて貰うよ。返事はいつまででも待つ。また、来る。」
そう言って、ニケ様は帰られた。
突然のプロポーズに頭が困惑してしまい、早々に自室に戻り自分のベッドに入って休むのだった…。
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