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3.突然の来訪者
しおりを挟むあれから2週間ほど経ったが、とても穏やかに過ごしている。
(でも、いつまでもこうしていられないわ…。お兄様の奥様も子どもを孕っていらっしゃるし、このままここにいるのも良くないわ。)
「ねぇマリナ?」
「はい、お嬢様。」
髪をとかして貰いながら話しかける。
「評判の良い修道院はどこかしら?」
「はい。…はい!?」
(い、痛いわマリナ…。髪を無意識に引っ張っているわ…。)
「だから修道院よ。私、修道女として生きていこうかしら。」
「早まってはいけませんお嬢様!!ゴードンなんかより…。いえゴードン様とは縁が無かっただけでそのように気を落とされるような事はあのっ!!」
「気を落としてなんかいないわ、大丈夫よ。ゴードンはどうでも良いわ。むしろゴードンから離れられて最高の気分だわ。侯爵家の皆様は素敵な人ばかりでそれだけは心残りですが…。」
「それならばなぜ…。」
「出戻りの娘がいるとなれば、この伯爵家に傷がついてしまうわ…。お父様やお兄様の出世に響いても嫌だし…。」
「お嬢様…。そのような事、旦那様もお兄様のアルト様も気になさりませんわ…。」
父と兄は優しい人なので、その通りだろう。しかし、世間の目はそんなに甘く無い。
その時、
「フィオナ様はいらっしゃいますか!?」
いつもは冷静な執事のセバスチャンが焦った声で私を呼びに来た。
「どうしたのですか?」
「フィオナ様に来客でございます。詳細は旦那様からあると思うので、急ぎお支度をよろしくお願いします。」
「わかりました!」
マリナが返事をして、急いで支度をした。
客間へ向かう。
すると、そこには少し苛立ったような顔つきの父と、心配そうな顔つきの母と、なんと、サンダーム侯爵家の次男、つまりゴードンの弟であるニケ様がいた。
「フィオナ…!久しぶりだね…!」
私を見つけソファから立ち上がったニケ様と目が合う。
「ニケ様…。お久しぶりです。どうされたのでしょうか…?
その、ニケ様はもうご存知でいらっしゃいますでしょう?」
ニケ様は、我が国の皇子の護衛騎士を任されている為、長らく侯爵家を留守にしていた。
「あぁ。遠征から帰ってきて兄に聞いて驚いたよ…。フィオナ、私の愚兄が本当に申し訳なかった…。私がいればこんな愚かな行いは阻止できたのだろうけど…。」
「そんな…。ニケ様が責任を感じられる事など何もありませんわ。」
「愚兄はとりあえず1発殴ってきたけれど、それくらいじゃ気が済まない。話を聞いて居ても立っても居られなくてここに来たんだ…。」
ニケ様はゴードンとは違い、責任感が強く聡明な方だ。ゴードンの弟と言っても私の1つ年上になる。
「まぁ、その為だけに…。お気遣い頂きありがとうございます。でも、自分でも驚くくらい落ち込んでいませんの。お気になさらないでください。」
本当に、これっぽっちも落ち込んでいない。むしろ、愚かなゴードンと離婚できて精々している。だから、出て行く時もこれ幸いと出てきた。
「その…。ここに来たのはその為だけではないんだ。」
「私、出て行く際に何かしでかしてしまいました…?」
ニケ様が姿勢を正す。
「違うんだ。その、突然で驚くだろうが…。フィオナが良ければ、私と結婚してくれないだろうか!!」
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