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シスコンはお互い様
しおりを挟むシャーロンは淑女としてあるまじき行為を
したかった。
今すぐに
嬉しいから叫びたい
嬉しいから走り出したい
そんな気持ちを必死に抑え込んで
ある場所を目指して廊下を歩いていた。
姉、サーシャリアがダグラス・リードン様と
出掛けるらしいのだ
だが喜びを顔に出してはならない
万が一を警戒して
「へー」とだけ言っておいた
良かったですわね!とか、お姉様頑張って!とか
前向きな言葉をかけると
シャーロンも行く?と聞かれかねない
行きません!と断っても
子供が遠慮なんて……とか言って結局連行されてしまう
お邪魔虫は嫌だ。
そして学園の裏庭に到着するとその場所にある大木の根の側に腰を下ろして「おあああっ」と小さく叫ぶ。姉が幸せを掴む為の
1歩を歩み始めたことが嬉しくてたまらないっ!!
「あああっ…!!」
お姉様の花嫁姿なんて綺麗に決まっている!!
ダグラス様がもし大事にしなかったら
お父様と共に乗り込んで再起不能にして差し上げますわっ!!!
お姉様の純白のドレス姿……
想像だけで泣けるわ
実際に目頭が熱くなった時だった
「誰だ?」
「?!」
あまり人が来ない場所だとに聞いたのに
人が居ることに驚き、咄嗟に身構える
しかも木の上から聞こえたから余計に怖い
あえて言わせて欲しい。
わたくし、オバケ怖いです
「シャー、ロン??」
「……あ、ルイス殿下」
名前を呼ばれて恐る恐る顔を上げたら
そこには見慣れた顔があり一気に安堵する
しかし、何でまた、木の上に……?
疑問が顔に出ていたのか、ルイス殿下が
木の上から降りてきて、服に着いた葉っぱを軽く払ってから
「木の上が1番ゆっくり出来るんだ」
「ああ……なるほど」
常に人に囲まれている人気者のルイス王子
お姉様も人気があるけどやはり結婚出来る異性の殿下の方が、ちょっと、ちょっとよ?ちょっとだけ姉より人気だ。
ちょっとだけね!!
「側近の方々が心配して居られるのでは無いですか?」
魔道士騎士養成所の敷地内ならともかく
いくら繋がってるとは言え、学園も中々広い。
「心配か……私もサーシャ程ではないが魔法が使えるし、剣にも覚えがあるからね
そこまでじゃないと思うよ」
私の質問にニッコリと笑った殿下を見て
一瞬だけドキッとしてしまう。
「シャーロンもこの場所を知ってたのか」
「ええ……」
「まさか、あの声が君だったとはね」
手のひらで口元をルイス殿下が隠すが
目元で笑っているのがバレバレである
仕方ないじゃない
「ちょっと、急いでいたものですから」
「急ぎ?」
そう、急いでいた。
お姉様が朝邸を出る時に
『あ、来週ダグラス・リードン様と出掛けます』って言ったから両親は固まり、私は部屋に閉じこもる間もなく馬車に揺られて学園に来たのだ
この興奮を家まで我慢など出来ないっ!!
「何かいい事があったのか?」
「ええ!!それはもう!素晴らしい事が!
うふふふふふ………あは!!アハハは!!」
手を胸の前で組み、踊り始めたシャーロン
を見て、ルイスは察する
「サーシャにいい事があったんだね」
「……え?なんで分かるんですか?」
「内緒」
「まさか、心を読まれた……」
「それは無いけど、まぁ、分かるよ
多分、僕以外の人でもさ」
ええ?!と驚き、何故?と首を傾げる
シャーロンを見ながらルイスは思った
サーシャの妹愛も激しいが
シャーロンも負けていはない
シスコンはお互い様である、と。
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