モン娘ファームへようこそ!

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サキュバスのミントさん

牧場長とミントさん佐竹さん家に向かう

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先日の「ご機嫌とり」が成功?し、なんとかミントの奴は「お見合い」に同意してくれた。

まぁ、最終的には同意してもしなくても、無理矢理、豚朗君の豚小屋に放り込むつもりだったんだが、それはこの際伏せておこう。

普通に考えたらアレの何処に「ご機嫌とり」要素があったのか? と思う程の大失敗なのだが、あの後、首輪とリードをつけて連れまわした所、犬プレイな様にえらく興奮してしまい、今後も定期的にこのプレイをしてくれるなら見合ってやってもいいよ。と言う事になったのだ。

態々四つんばいになってわんわん言いつつ付いてくるので、道行く人々の視線がビッシバッシ突き刺さってしかたがなかったあの状況、

定番の「ママーあれなぁに?」「シッ!見てはいけません!」的なやり取りに加え、マッポには職務質問されるし(モン娘の散歩です!で強引に乗り切った)道行く犬に出会えば「うわぁ、コイツ等マジやべぇ、ぜってぇ関わっちゃならねぇ、降参だぁー」とばかりに彼等はひっくり返って腹を見せたり、耳と尻尾を下げて萎縮してしまう。そんな有様だ。

俺にとってはまさしく拷問で、もうお前嫌がらせ目的でやってるだろ? と言いたくなる様な惨劇だった。
アレをまたやらされるのかと思うと、正直、戦慄しか走らないんだが、契約なのでやるしかない。

そんな2度と御免な雌犬散歩プレイだが、今まさにやらされている最中だ。

ミントの了解を得られた事を佐竹さんに連絡した所、次の満月にでもカップリングを試してみましょうと言う事になり、こうして満月に当る本日、このプレイに興じながら連れ立って来たワケだ。

こうしないと牧場から出ない! って言うんだぜ? 普通逆だろうが! って叫びたくなるけど、ドビッチ種であるサキュバスはこういった性癖に目覚め執着すること事態は珍しくない。

珍しくはないが、それが良いか悪いかはまた別の問題だ。
そんなもんに目覚めない方が飼い主としては良いに決まってる。

まぁ目覚めようが欲しがろうが、こんな切羽詰った状況でない限り、NO! と言えるんだが、いかんせん、現在家に居るメンツで問題なく繁殖に使える奴はコイツだけなので、ゴマをするしかないのである。

ついでに言えば前回の様に放し飼いにして暴れ回られても困るので、やむなしなのだ。

当のミントはと言えば、恍惚の表情ではぁはぁ言いながらプレイに興じている。
せめて四つんばいではなく、飛んでくれれば風船もってる感じになるから少しはマシなんだが・・・・

と、そんな風に意見具申した所「そんなんで満足できるか!うぉっらー!」とマジギレされた。
うぉっらー!の辺りにかなりの本気具合が見て取れたので、それ以上は止めておいた。

そんな羞恥プレイ(俺にとって)を続ける事小一時間。電車やバスを乗り継ぎ、佐竹さん家の前までやってきた。

佐竹さん家とは言うが、正確には敷地の入り口に立ったと言うべきか。

なにしろ民家を若干改築しただけの、名ばかり牧場である家とは違い、佐竹さん家はマジモンの牧場だ。

馬とか牛とかが大量にいる普通の牧場を連想していただければ分かりやすい。

ここは国の指定する一級ファームなので、敷地の中に入るだけならともかく、場所によってはかなり面倒な手続きや手順が必要だ。

相応のルールもあるし警備も厳重。そんな一級の名に恥じないセキュリティ体制をもった、まごうことなきモン娘ファームなのだ。

まずは守衛さんに取り次いで貰い、佐竹さんに来訪を告げよう。

「すみません。本日、豚朗君とのカップリングをお願いしてるミント・ティアーズとその飼い主ですが、牧場長へ取り次いで貰っても宜しいでしょうか?」

門の端にある詰め所に向かい、中に居たやけにパンチのある守衛さんにお願いしてみた。
もうそのパンチ具合は警備員と言うより門番と言う感じだ。スキンヘッドにドスの効いた眼光、道端で出合ったら一般人なら目を合わせずに即道を譲るレベルの強面だ。
佐竹さんとは旧知の間柄なので、ここには少なからず来た事があるが、この守衛さんに会ったのは初めてだな。

「あー、はいはい。聞いてますよ、少しお待ちくださいね。・・・と、モン娘さんはどこに?」

「あ、ここにいます。」

パンチのある強面に反して柔らかい対応の守衛さんだ。流石一級ファームの従業員。

彼の居る位置からは死角になっていて、四つん這いのミントが見えなかった様だ。
中の人にも見える様にグイっとリードを持ち上げてミントの面を引っ張り上げた。

「ああん! お許しください!!」

あっ、くっそ! 悦らせまいと必死に普通の散歩を装って来たのに、たったこれだけの動作で間抜けな声を出しやがった!!

お許しください! と言いつつ、もっとしてくださいの顔と声色ぢゃねーか!

「おい! もういいから! その格好を止めろ! ちゃんと立ってご挨拶しなさい!」

「ミント・ティアーズです。宜しくお願いします」

と、ちんちんのポーズと恍惚の表情で守衛さんに挨拶する馬鹿娘。

よぉしそう来たかぁ、いいぞぉ! 俺の調教鞭が光って唸るぜー!

「エクスカリバァァァァ!!」

ビトゥーブ!!(←ミントの尻にハリセンがクリティカルヒットした音)

「ぎゃーす!!尻がぁぁぁ!!」

調教鞭による渾身の一撃を尻に食らわせた所、ケツを押さえながら転げまわるミント。
M属性に目覚めた厄介者でも、そのM装甲を貫通するぐらいの一撃を叩き込めばダメージになる。今それが証明された。

「ミントさん。確認取れましたので中へどーぞー」

のた打ち回るミントへと普通に声をかける守衛さん。
あえてこの一連の挙動には触れない。そんな優しさを感じたが、単に関わりたくなかっただけかもしれない・・・・

「おら! さっさと来い! アホ娘!!」
「ぐえっ! タンマ!タンマ! 首絞まってるから!引っ張らないで!!」

そんなこんなで佐竹ファームの中へと歩を進めるのだった。


門を抜けて少し歩くと後ろから宅配便の車がやってきたので、端に避けると車は徐行しながらドンドコと進み、俺達が向かう母屋の道とは逆の別れ道へ進み、程なくして見えなくなった。

あっち側には事務所やら繁殖場やらの設備があるので、仕事関連の届け物だろう。
などとぼんやり考えながら歩き続けていると、モン娘達が収容されている畜舎が複数見えてきた。

佐竹ファームはモン娘が生み出す特殊資源の量産もしている牧場なので、各畜舎では様々なモン娘がお仕事に勤しんでいる事だろう。

あの中に入るには専用の服に着替え、消毒やらなにやら、徹底的に済ませないとならない。外部の人間を経由してどんな細菌やウイルスが入り込むかわからないので、畜舎や生産工程は非常に厳しく管理されているのだ。

たった1回、病気が蔓延しただけで数年かけて作り上げた全てが水泡に帰す。なんて事が本気でありえるので、それもしかたがない。これはモン娘ファームに限らず、普通の畜産牧場でも該当する共通のルールだ。

なので、自由に闊歩できるのは共有スペースや野外、住居部分のみとなる。

この畜舎で生産に励んでいる娘の一部を紹介すると、例えばアラクネ。上半身が女性で下半身が蜘蛛という定番のモン娘だ。

彼女達が紡ぎ出す蜘蛛の糸は、とんでもない強度と粘りと伸縮性を持ち、現在の人間の技術で同スペックの糸は再現不可能な事で知られているが、佐竹ファームで生産されているのはその中でも希少な10足種のアラクネが紡ぐ糸だ。

10足種とは、人間の女性の背中に8本の蜘蛛足が生え、でん部が蜘蛛の尻(腹)になったアラクネの派生系希少種だ。蜘蛛脚と人の足の合計が10本になる為に10足種と呼ばれている。
背中の脚とでん部のみにしか蜘蛛成分が無いので、シルエットは人間に近い。

固体サイズも大型になる通常種と違い、人間と大差ないサイズなので、紡ぐ糸もより細い物となり、繊細な加工に利用できる優れものだ。

他にもミノウシ娘の濃厚牛乳、ハーピーの羽毛&卵、等等、ここで取り扱ってるモン娘と資源の種類はかなりの種類&量になる。

この特殊資源の安定生産が佐竹ファームを一級たらしめる主だった要因だ。

1級認定されるには、

1・ブリーダー自身の資質がCランク以上である事。
2・20匹以上のモン娘を使役できる事。
3・国益に多大な貢献をしている事。

この3つをクリアしている事だ。

この採点基準で佐竹さんを評価すると、

1・ブリーダーランク・C
2・常時使役数・100匹以上
3・国益貢献・特殊資源の安定供給

と、こんな感じになる。

ブリーダーランクはギリギリのCランクだが、そのギリギリをぶっちぎる程の使役数で特殊資源の安定供給という莫大な国益を生み出しており、一級の名に連なる働きをしているのだ。

まぁ、分類的には並に該当するCランクのブリーダーが常時100匹以上のモン娘を使役できるワケがないので、俺の見立てでは少なく見積もってもAランク以上の実力を持つ実力派ブリーダーなのだが、彼のランクはここ10年、変動していない。

ブリーダーランクとは、文字通りブリーダーのランクだ。

モン娘の各種品評会での評価や仕事内容、当人の人間性等等、色々合わせてお役人が勝手に決める評価だが、こんな感じで正直アテにならない物だ。

究極的な話、最低条件を満たしてお役人に気に入られれば、新米ブリーダーでも最高ランクであるSSランクに、ほいっとなれる。

そんな、なんの自慢にもならないランクだが、困った事にブリーダーに関するアレコレは、あらゆる事にこのランク付けによる評価が影響するので、お役人に嫌われると言う事は、行動に制限が付く下っ端状態が延々続くという事である。

彼の性格を言うなら変態の一言に尽きるのだが、件の性癖を除けば真面目で気さくな、誰から見ても好感が持てる青年だ。

んが、その生真面目が過ぎて献金とか裏金とか、その類のゴマすりを良しとせず、ものすごい利益を得ているワリに態度がなっちゃいねぇ! と、お役人に嫌われてしまった。

その結果、実力があり、国益にも貢献しているにも関わらず、ランク(評価)は上がらない。そんな酷い状況に追い込まれたのが佐竹さんだ。

これだけのモン娘を束ね、全世界でも一握りしかいないモン娘由来の特殊資源を安定供給させる力を持つ佐竹さんが、一度お見合いさせるだけでこんな目(メス犬プレイの主人役)にあってる俺と同じCランクなのを考えれば、どれだけ理不尽かわかってもらえるだろう。

畜舎を遠目に見ながら、佐竹さんの境遇について軽い同情を覚えつつ歩いて行くと、程なくして佐竹さんの住まいである建物が見えて来た。

その建物は塗炭屋根の平屋で所々が錆びており、外壁も若干剥がれかかっているボロ家で、戦後の昭和初期のあばら家を連想させるほどに年季が入ってる。

俺と同ランクの同業者とは言え、桁違いの稼ぎを叩き出している男が住む場所とは到底思えないが、ここは正真正銘、佐竹邸だ。

佐竹さんは稼ぎの全てを、嫁さんであるエイチチの為だけに使い、自分は質素な生活を心がけている。それはもう病的な程に。

だがまぁ、豪華な家に招待されても庶民の俺からしたら居心地が悪い。
これはこれで落ち着く良い場所なのだ。

「佐竹さーん。来たぞー」

ドンドンと今にも外れそうなボロいドアを叩くが返答はない。
このボロ家はボロなのでチャイムなどが設置されていない。
ドアを叩くだけでは来訪が伝わらない可能性もある。

ノブを捻れば鍵はかかってなかったので、頭だけを覗かせて再度呼んでみた。

「佐竹さーん、おーい! いないのかーい!」

わりと大きめの声で叫んで見たが、やはり反応はない。
んが、薄暗い室内の奥の方、彼の自室からは薄明かりが漏れているし気配もあったので、

「なんだよ、居るぢゃねーか」

と、なにも考えず、勝手に上がらせてもらった。
思えばこの時、もう少し思考を巡らせてその可能性も考えるべきだった。

大した長さでもない距離を進んだ先の部屋で見つけた彼は、潜水艦のソナー要員みたいにヘッドフォンを装着し、PCモニターを凝視していた。

釣られてモニターを見れば、激しく絡み合う♂と♀。
当然♀は佐竹さんの汚嫁エイチチ。そして♂は宅配業者のおっさん。

そう! 宅配便が来た時点で、この可能性を考えなくてはいけなかったのだ!!

くっ! 俺とした事が、母屋であるこっちに向かわないからあの宅配便業者は大丈夫! と勝手に思い込んでしまった。痛恨のミスだ。

こんな昼ドラでありそうな宅配便業者との浮気シチュを、佐竹さんが利用しないワケがない!! エイチチがやらないワケがない!!

どうやら繁殖場を映してるモニターらしく、モン娘用のアレコレも背景に見て取れる。あの汚嫁が言葉巧みに宅配便のおっさんをあそこに連れ込んだのだろう。

その気になれば、その辺の木陰や建物の隅でも平気でやれるのに、わざわざモニターがある所に連れ込むなんて、旦那の趣味に理解があるのか、はたまた単に見せ付ける性癖があるのか・・・。

いずれにしても俺が持つ事は絶対にない哲学だ・・・。

あーもー、佐竹さんはモニターをガン見したまま心身共に漲ってるし、モニターの向こうでも汚嫁とおっさんがハッスルしてるし、どうすんだよこの状況、こうなるとあっちが終わるまでこっちもモニター前から動かねーぞ・・・

ったく、しょうがねぇ、終わるまでリビングで待たせてもらうか。

そうして狭い室内で振り返り、俺はようやくソレに気が付いた。

大人しいと思ったら、ミントの奴、首輪が締まったせいで失神してやがる。
白目を向いてだらしなく舌を垂らしてるので、激しい行為の末にアヘ落ちした後に見えなくも無い。

なんかずっと引きずってる感じだなぁと思ってたが、どうやらホントにここまで引きずって来てしまった様だ。

あー、どうしよう。それなりにおめかししてきたんだが、衣装がドロドロのボロボロだ・・・豚朗君が寛大な心の持ち主である事を祈るしかねぇなぁ。
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