追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

文字の大きさ
41 / 46

37話 投資の誘い

しおりを挟む
執務室の窓から、活気に満ちた街並みが見える。魔獣の襲来から一月が経ち、街は以前にも増して活気づいていた。新たな商人たちが押し寄せ、街は膨張の一途を辿っている。

「レオン、本日のスケジュールです」

ソフィアが一枚の紙を差し出す。彼女の仕事ぶりは完璧で、今や私の右腕として欠かせない存在となっていた。

「ご覧の通り、午前中は王都からいらしたヴィルヘルム様、午後は大陸東部のシュミット様との面談が……」

「他にも来ているんだろう?」

「はい。北方商業都市アイゼンベルクのクラウス商会、南方港湾都市メルヘンの海運組合、それに……」

俺は軽く目を閉じ、頭の中で計算を始める。魔獣の襲来後、この街の戦略的重要性が再認識された。それに伴い、各地の有力者たちが投資案件を持って押し寄せてきているわけだ。

「午前のヴィルヘルム氏との面談を一時間に短縮してくれ。その分、他の案件の概要を把握しておきたい」

「かしこまりました」

ソフィアが立ち去ろうとした時、ふと振り返る。

「......また徹夜でしたか?」

「ん? ああ、少しな」

「体調管理も効率の一つですよ」

彼女の言葉に、思わず苦笑いがこぼれる。効率を重視する俺に対する、さりげない気遣いだ。

「分かってる。今夜は早めに切り上げるよ」

その返事に満足したのか、ソフィアは微笑んで部屋を出て行った。

* * *

「つまり、王都と当地を結ぶ新規交易路の開発ですか」

「その通りだ」

マーカス・ヴィルヘルムは地図を広げながら説明を続ける。王都随一の商会の代表らしく、その計画は綿密に練られていた。

「この街の戦略的重要性は、今回の件で証明された。しかし、現状の交易路では効率が悪すぎる。そこで──」

「新たな経路を開発し、補給路としても活用する。なるほど」

地図上で示された経路を見る限り、確かに現状よりも大幅な効率化が見込める。しかし、そこにはいくつかの課題も見えた。

「山岳地帯の開発費用は?」

「その点は王国からの支援も──」

「甘いですね」

俺は冷静に指摘する。

「確かに、この計画自体は素晴らしい。しかし、王国の支援を前提とした収支計画は危険です。まして、これだけの大規模プロジェクトともなれば……」

ヴィルヘルムの表情が僅かに強張る。さすがの彼も、この指摘は予想していなかったようだ。

「では、君はどうすべきだと?」

「まずは小規模な商路から始める。並行して、各商会から出資を募り、段階的に拡大していく。王国の支援は、あくまでボーナスとして考えるべきです」

机の上の地図に向かって、俺は新たなルートを描き始めた。

「このルートなら、初期投資を最小限に抑えられる。利益が出始めたら、それを原資に拡張していく。その方が、リスクも分散できます」

ヴィルヘルムは感心したように頷く。

「なるほど。堅実な案だ。だが、それでは開発に時間が……」

「いいえ、むしろ早くなります」

俺は確信を持って言い切った。

「小規模から始めることで、問題点の洗い出しも容易になる。それに、実績を示せれば、追加の投資も集めやすくなる。結果として、全体の完成は早まるはずです」

部屋の中に、短い沈黙が流れる。

「分かった」

ヴィルヘルムが静かに頷く。

「君の案で進めよう。具体的な収支計画は……」

「ええ。ここから詰めていきましょう」

* * *

午後の商談も同じような調子だった。

ヨハン・シュミットは、大陸東部最大の商会の代表として、魔獣素材の独占契約を持ちかけてきた。北方商業都市からは、新たな市場開拓の提案。南方港湾都市からは、海運網の拡大案が示された。

それぞれの案件を精査し、取捨選択していく。時には断り、時には条件を付けての合意。全ては冷静な判断の下で進められていく。

「レオン、本日の商談記録です」

夕暮れ時、ソフィアが新たな書類を持ってきた。

「ご確認いただけますか?」

「ああ」

記録に目を通しながら、俺は密かに笑みを浮かべる。これほどまでに多くの商機が集まってくるとは。しかも、その全てが街の発展に寄与する案件ばかり。

(まさか、こんな形で夢が実現するとはな)

幼い頃に見た、父の苦悩。そこから学んだ教訓。全てが、今の自分を形作っている。

「そうだ」

ふと思い出したように、俺はソフィアに声をかける。

「今夜は早めに切り上げると約束しただろう」

「え? ああ、はい」

「なら、付き合ってくれないか。この案件の続きは、場所を変えて考えたい」

「場所を変えて、ですか?」

「ああ。街の新しいレストランだ。評判の良い店らしい」

ソフィアの頬が、僅かに赤く染まる。

「......分かりました」

夕陽に照らされた街並みを眺めながら、俺は深く息を吐いた。これが、自分の選んだ道。そして、これからも歩み続ける道。

かつての冒険者パーティーでの日々は、確かに無駄ではなかった。あの経験があったからこそ、今の自分がある。

「行きましょうか」

ソフィアの声に、俺は頷いた。窓の外では、新たな商船が港に入ってくる。この街は、まだまだ成長を続けていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...