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第三章 羅刹の鬼達
第107話 来客と嫌な予感
しおりを挟む◇ソウガ
「ふむ……、これはこれは、いやいやご立派な城ですねぇ……」
「嫌味か……? 荒神から比べたら3分の1以下の規模だぞ?」
「いえいえ、規模の問題ではありませんよ。シュウ殿は相変わらず物を見る目がないですねぇ……」
「グッ……、そっちも相変わらず性格が悪いな、ソウガ……」
嫌そうな顔でそう返してくるシュウ。
それに対して私は、言葉で返さずに笑顔で応える。
同期でもあり、友人でもあるシュウ。彼をからかうのは最早趣味になりつつある。
前にこの地に訪れた時は、こんな城など存在しなかった。
報告により、城らしきものを建設したと聞いていたが、らしきどころか城そのものだったことに正直驚いている。
城郭の出来自体は、まあ及第点といった所だが、この城は実に素晴らしい。
隅々まで行き渡る魔力は、恐らくこの城自体の防衛機構にも繋がっていると思われる。
詳細はわからないが、恐らく城内だけで言えば、荒神を超える防衛力を持っている可能性がある。
しかし、正直なところ、これはやり過ぎではないか、とも思う。
トーヤ殿には、確かにレイフの森の平定を任せると命が下っている。
さらに、この地の資材、人材は、平定する彼の自由にして良いが、代わりに軍事、防衛の戦力に関しては自力で調達するようにという条件もつけていた。
それは実質、この地の統治を任せると言い換えられるのだが、それにしても、この規模の城をこさえるのはどうなのだろうか……
恐らくだが、この城自体トーヤ殿の思惑から大きく外れた設計思想で築城された可能性が高い。
シュウによると、この城を築城したのは上級術士であるソク殿だという。
彼らオーク達にとって、トーヤ殿は救世主であるため、築城に力が入ったことは大いに予想できる。
オーク達にとって、既にトーヤ殿は王のような存在なのかもしれない。
(だからこそ、私の立場としては危険視すべき対象なのですがね……)
「おい」
「? なんでしょうかシュウ殿」
「また難しい顔してるぞ? 言っておくけどな、お前の心配なんて一切無用だぞ? トーヤ様は意外と馬鹿でお人好しだ。悩んだ分だけまた無駄に老けるぞ? ただでさえ俺と同期って言っても笑われるくらい、お前老けてるんだからな?」
「……大きなお世話です」
全く、この男は頭が悪い割に変に鋭いというか、敏いというか……
シュウとは長い付き合いだからこそ、彼の発言に偽りがないことも理解できる。
まあ、今の所はシュウの感性を信じましょうか。
「……ん? あれは……?」
ふと、窓から見える光景に目が奪われる。
あれは、ハーフエルフ……?
ハーフエルフの子供達に囲まれるようにして、複雑そうな顔をしている男、あれは……、まさか……
「ん、ああ、アイツか。アイツを気にするとは、流石だな。アイツは、キバ様やタイガ様、そしてお前に続く、俺の新しい目標の一人だ」
◇トーヤ
――――レイフ城・執務室
「お久しぶりです。トーヤ様」
「久しぶり……って程でもない気がしますが、遥々ようこそ、ソウガ殿」
ソウガと会うのは、ドグマの屋敷の件以来か?
確かにひと月以上は経っているかもしれないが、日々目まぐるしく過ごしているせいであまり実感がない。
「それにしても、まさかソウガ殿が直々に来るとは……」
荒神との連絡は、荒神所属の伝令役により頻繁に行われている。
バラクルやドグマの件、レイフの森北部との戦の件などは、全てその伝令を通じて荒神に伝達をしていた。
しかし、戦の件に関しては、俺に出ていた指令に対する一応の完了という話でもあるので、恐らく荒神から呼び出されると予想していたのだが……
「前にも言いましたけど近衛兵長……っていうか、今は最高責任者代理なんですよね? 平気なんですか?」
「否応なくそうされてしまいましたが、私などお飾りのようなものです問題ありませんよ」
お飾り……
それを言うならキバ様こそお飾りなんじゃ……?
「まあ、荒神に召集するという話もあったのですが、少々急を要していまして、私自ら参りました。それが一番早そうなので」
「……そういえば、いつもの伝令役の人とか、付き人とかいませんけど、まさか本当に一人で?」
「ええ、私が本気で走れば付いてこれる者はほとんどいませんので。報告を受けてから頑張って駆けて参りました」
…………ん?
そういえば、報告を出したのは早朝のはずじゃ……。
ちなみに今は昼過ぎ、で間違いない。
荒神までは、ここから馬で約4時間の距離があるので、報告が伝わったのは10時過ぎくらいだろう。
つまり、ソウガはここまで2時間ほどで駆け来たということになる。
「……ソウガ殿って、やっぱり化け物なんですね…………」
「いえいえ、私などタイガ様達に比べれば本当に大したことのない存在ですよ」
いやいや、謙遜もそこまで行くと嫌味に聞こえるぞ?
「……しかし、そんなに急いで来たということは、何か事情があるんですよね? 何があったんですか?」
「あった、というか、現在進行中で面倒なことがおきています。亜人領西部を平定に出ているキバ様達ですが、膠着状態になっているようで、未だ戻ってこれる状況ではないそうです」
おいおい、そんな長期間城を不在にしていいのか、魔王様。
ていうか、魔王クラスの戦力が出張っておいて膠着状態になるって、あり得るのか?
「当然、いいわけがありません。溜まりに溜まった仕事もありますし、できる限りお早い帰還が望まれます。トーヤ様の今後のについても話し合う必要がありますしね」
俺の内心を読み取って話を進めるソウガ。
心を読まれるのは慣れているので気にならないが、それはそれとして何か嫌な予感がしてきたぞ?
わざわざソウガが足を運んでまで俺に伝えたいこととは、もしかして……
「そこで、トーヤ様には、キバ様達の援軍に向かって欲しいのです」
ああ……、やっぱり……
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