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第1章 PLAYER1
クズ拾う死神 ③
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「ん? なんだ? お前ら遠慮せず食えよ。うめえぞ」
ミートパイを頬張りながら、それを呆れた目でみるユウキとサトリにベンは言った。
テーブルには彼が遠慮なく注文した料理が隙間なく並んでいる。羊肉のミートパイにベーコンと野菜を煮詰めたスープ、チーズや玉ねぎをを混ぜたものにパン粉でくるんで形を整えたものだというベジタリアン・ソーセージ、豚のレーバーと玉ねぎ穀物を練って作ったミートボール、干したレーズンや果物の皮の入ったパン。確かにどれも美味そうだ。だが、問題はそこではない。
「こんなにたくさんたのんで、大丈夫なんですかね?」
サトリが心配そうに耳打ちする。
「い、いざとなったら、トイレに行くと言って逃げるぞ」
ボソボソとサトリに囁く。
「おい、聞こえてるぞ。安心しろよ。ここは安くて美味いのが売りなんだ。ちゃんとお前らの財布がちょうど空っぽになるぐらい計算して頼んだからよ」
どこまで冗談なのだろうか。とりあえず今日稼いだ分はなくなる覚悟をした方が良さそうだ。
「ああもうっ」
やけぱっちにとりあえず手じかにあったミートパイを手にとると食らいつく。
「・・・美味い」
「だろ? この店は、アルビシオン島の西部にある島の郷土料理なんだ。俺の出身地」
満足そうに微笑んだ。
「あっ、ほんとだ美味しい」
ユウキにならってサトリが料理に口をつける。スープ、パン、ミートボールにソーセージいずれもなかなか美味しかった。
「・・・、 で? お前たちはなんでカレーに行きたいんだ?」
酒の入ったグラスを一気に飲み干して、ベンが唐突に切り出した。
「えっと・・・」
「俺たちにも色々事情があるんだ」
返答に困ったサトリに助けにもなってないような助け舟を出す。
「色々ね。まっ、この街にくる奴はだいたい色々ある。余計な詮索はしないがよ。お前たち、今日はどこまで行ってきた?」
「一層。それも入ってすぐのところだよ。迷路みたいになってる細い通りを散策した」
素人がいきなり、あまり奥に進むのは賢明ではないと相談した結果だ。増幅器なしではPSYの力をあてにし過ぎる訳にもいかない。
「一層? あんな壺よく見つけたな? もう一層の、とりわけ浅い場所はとりつくされて何も残ってないと思ってたんだがな。人を恐れて獣の類もほとんど見なくなった代わりに、金目のもんもなくなっちまった。最近は、大手チームでもルーキーを一層の深部か、二層の始めで研修するって聞いてるがね」
「そうなんですか?」
能天気な反応のサトリに、ベンはため息をつく。
「お前らほんとに何も知らないんだな。一層をうろちょろしてる分にはいいが、それじゃあ二層に入った瞬間死ぬぞ」
「そうなんです!だからベンさんみたいな人が協力してくれたら心強いなと。ねっ、ユウキさん?」
サトリが同意を求めて、ユウキの方を見る。
「・・・ああ。俺も自分たちだけで先を目指すことが無謀だとはわかってるんだ。だけど、カルテル所属して一からやってる時間もない。ベン・・・さんの様な、フリーで知識のある人間が一緒に行動してくれたら嬉しい」
ユウキにもそれぐらいのことはわかっていた。
「ベンでいい。そして何度頼まれても返事はNOだ。アルから俺が踏破組だったことぐらい聞いたんだろ? そしてチームが全滅して1人生き残ったってことも」
「ああ」
「洞窟は深く潜れば潜るほど人の世界から遠ざかっていく。アリスターは、俺たちのチームのリーダーはすげえ男だった。豊富な知識と、経験、四大カルテルのどこにも属さずに資金を集めてくる政治力、勇気もあって喧嘩も強いが、誰よりも冷静で引き際も心得てる。それに連なるメンバーも俺を含め全員が海底探窟のエキスパート。もう何年もチームから犠牲者を出してないことから『幸運』のアリスターなんて呼ばれてた」
ベンはそこで言葉を区切る。
「・・・そんなやつでも、死んじまった」
過去を思い出すような遠い目だった。
「俺はな、あの日誰もいなくなった世界で目を覚ました時、怖くなっちまったんだ。そして虚しくもなった。命をかけてでも大金が欲しいなら四層、三層を漁ればいい。生きていくためなら、一層や二層で十分だ。だけど、四層のその先、カレーを目指すことになんの意味がある」
「・・・・」
「お前たちがどうしてそこまでして洞窟を抜けたいかは詮索しない。だが、カレーを目指すってことがどういうことか、きちんと理解しておいたほうがいい。とにかく俺は、もう二度と4層へは入らないと決めている。すまねえがお前たちの力にはなれないな」
もともと、駄目もとだったのだ。その返答に大きな失望なかった。ただ、目の前の男に対して小さな興味が生まれた。
「ベン、あんたは何でカレーを目指そうと思ったんだ?」
「・・・」
ベンはその質問に答えなかった。代わりに麦酒を一気に飲むと、グラスをドンと机においた。
「ちょっと飲みすぎて余計なおしゃべりしちまったかな。こういう時には、さらに酒を飲むに限る。約束通り、ここの勘定は頼むぜ」
そう言って立ち上がると、酒場をはしごするつもりだろうか、ユウキ達に背を向けて歩き出す。しかし、一歩進んだところで何かを思い出したというように、こちらを振り返った。
「・・・、明日の朝。洞窟の入り口。ゲートの側だ」
「はっ?」「えっ?」
状況の飲み込めない勇気とサトリから素っ頓狂な声が上がる。
「今日は、ちと食い過ぎた。もらいすぎは良くねえわな」
ベンは照れを隠すように頭をかく。
「四層に潜ってカレーを目指す気は無いが、海底洞窟での生き残り方ぐらいは教えてやるよ」
その言葉を最後に、足早にその場をさるベンので中で、ユウキとサトリは顔を見合わせて喜んだ。
ミートパイを頬張りながら、それを呆れた目でみるユウキとサトリにベンは言った。
テーブルには彼が遠慮なく注文した料理が隙間なく並んでいる。羊肉のミートパイにベーコンと野菜を煮詰めたスープ、チーズや玉ねぎをを混ぜたものにパン粉でくるんで形を整えたものだというベジタリアン・ソーセージ、豚のレーバーと玉ねぎ穀物を練って作ったミートボール、干したレーズンや果物の皮の入ったパン。確かにどれも美味そうだ。だが、問題はそこではない。
「こんなにたくさんたのんで、大丈夫なんですかね?」
サトリが心配そうに耳打ちする。
「い、いざとなったら、トイレに行くと言って逃げるぞ」
ボソボソとサトリに囁く。
「おい、聞こえてるぞ。安心しろよ。ここは安くて美味いのが売りなんだ。ちゃんとお前らの財布がちょうど空っぽになるぐらい計算して頼んだからよ」
どこまで冗談なのだろうか。とりあえず今日稼いだ分はなくなる覚悟をした方が良さそうだ。
「ああもうっ」
やけぱっちにとりあえず手じかにあったミートパイを手にとると食らいつく。
「・・・美味い」
「だろ? この店は、アルビシオン島の西部にある島の郷土料理なんだ。俺の出身地」
満足そうに微笑んだ。
「あっ、ほんとだ美味しい」
ユウキにならってサトリが料理に口をつける。スープ、パン、ミートボールにソーセージいずれもなかなか美味しかった。
「・・・、 で? お前たちはなんでカレーに行きたいんだ?」
酒の入ったグラスを一気に飲み干して、ベンが唐突に切り出した。
「えっと・・・」
「俺たちにも色々事情があるんだ」
返答に困ったサトリに助けにもなってないような助け舟を出す。
「色々ね。まっ、この街にくる奴はだいたい色々ある。余計な詮索はしないがよ。お前たち、今日はどこまで行ってきた?」
「一層。それも入ってすぐのところだよ。迷路みたいになってる細い通りを散策した」
素人がいきなり、あまり奥に進むのは賢明ではないと相談した結果だ。増幅器なしではPSYの力をあてにし過ぎる訳にもいかない。
「一層? あんな壺よく見つけたな? もう一層の、とりわけ浅い場所はとりつくされて何も残ってないと思ってたんだがな。人を恐れて獣の類もほとんど見なくなった代わりに、金目のもんもなくなっちまった。最近は、大手チームでもルーキーを一層の深部か、二層の始めで研修するって聞いてるがね」
「そうなんですか?」
能天気な反応のサトリに、ベンはため息をつく。
「お前らほんとに何も知らないんだな。一層をうろちょろしてる分にはいいが、それじゃあ二層に入った瞬間死ぬぞ」
「そうなんです!だからベンさんみたいな人が協力してくれたら心強いなと。ねっ、ユウキさん?」
サトリが同意を求めて、ユウキの方を見る。
「・・・ああ。俺も自分たちだけで先を目指すことが無謀だとはわかってるんだ。だけど、カルテル所属して一からやってる時間もない。ベン・・・さんの様な、フリーで知識のある人間が一緒に行動してくれたら嬉しい」
ユウキにもそれぐらいのことはわかっていた。
「ベンでいい。そして何度頼まれても返事はNOだ。アルから俺が踏破組だったことぐらい聞いたんだろ? そしてチームが全滅して1人生き残ったってことも」
「ああ」
「洞窟は深く潜れば潜るほど人の世界から遠ざかっていく。アリスターは、俺たちのチームのリーダーはすげえ男だった。豊富な知識と、経験、四大カルテルのどこにも属さずに資金を集めてくる政治力、勇気もあって喧嘩も強いが、誰よりも冷静で引き際も心得てる。それに連なるメンバーも俺を含め全員が海底探窟のエキスパート。もう何年もチームから犠牲者を出してないことから『幸運』のアリスターなんて呼ばれてた」
ベンはそこで言葉を区切る。
「・・・そんなやつでも、死んじまった」
過去を思い出すような遠い目だった。
「俺はな、あの日誰もいなくなった世界で目を覚ました時、怖くなっちまったんだ。そして虚しくもなった。命をかけてでも大金が欲しいなら四層、三層を漁ればいい。生きていくためなら、一層や二層で十分だ。だけど、四層のその先、カレーを目指すことになんの意味がある」
「・・・・」
「お前たちがどうしてそこまでして洞窟を抜けたいかは詮索しない。だが、カレーを目指すってことがどういうことか、きちんと理解しておいたほうがいい。とにかく俺は、もう二度と4層へは入らないと決めている。すまねえがお前たちの力にはなれないな」
もともと、駄目もとだったのだ。その返答に大きな失望なかった。ただ、目の前の男に対して小さな興味が生まれた。
「ベン、あんたは何でカレーを目指そうと思ったんだ?」
「・・・」
ベンはその質問に答えなかった。代わりに麦酒を一気に飲むと、グラスをドンと机においた。
「ちょっと飲みすぎて余計なおしゃべりしちまったかな。こういう時には、さらに酒を飲むに限る。約束通り、ここの勘定は頼むぜ」
そう言って立ち上がると、酒場をはしごするつもりだろうか、ユウキ達に背を向けて歩き出す。しかし、一歩進んだところで何かを思い出したというように、こちらを振り返った。
「・・・、明日の朝。洞窟の入り口。ゲートの側だ」
「はっ?」「えっ?」
状況の飲み込めない勇気とサトリから素っ頓狂な声が上がる。
「今日は、ちと食い過ぎた。もらいすぎは良くねえわな」
ベンは照れを隠すように頭をかく。
「四層に潜ってカレーを目指す気は無いが、海底洞窟での生き残り方ぐらいは教えてやるよ」
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