偶像は神に祈る夢をみる

なめこ玉子

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一年後の結末 8

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自分の家の敷居をまたぐのに、気は重かった。
意気揚々と兄妹と会える人待ち望んでこのうちにやってきた彼女を、
僕はどれほど失望させただろう。

思えば僕も、五年ほど前にこの家にやってきたのだ。
期待と不安、双方が渦巻く中で姉が暖かく迎えてくれた日のことを、
今の今まで忘れていた。

姉にもまた僕以前に別れた兄妹がいたはずだ。
そんな中で僕を受けいれてくれたことを今更ながらに嬉しく感じた。
次は僕が、あの少女を受け入れてあげる番だ。

意を決して扉を開ける。扉はやけに重たかった。

「た、ただいま」
遠慮がちな声とともに部屋に上がる。居間からはまだ光が漏れていた。
バタバタと慌ただしい音がして、彼女がひょっこりと顔を出した。

「お、おかえりなさい、お兄様…」
消え入るような声で少女は言う。瞳には不安が浮かんでいる。

「まだ起きてたのか」
できるだけ優しい声で尋ねる。

「お兄様、なにか思いつめた顔で出ていったから」
あんなことがあったのに気遣いを向けてくれる彼女の優しさに胸が痛む。

「えっと、さっきはごめん!」
僕はショウに言われたとおり、しっかりと頭を下げて謝る。

「……」

なかなか返事は帰ってこなかった。
僕は頭を下げたまま、探るように少女の方に視線だけ向ける。

「!」
彼女の目にはいっぱいの涙が溜まっていた。
「えっとほんとにごめん。何も知らない君を勝手な思い込みで責めてしまった」
更に一層深く頭を下げた。

「…かった」
彼女の小さな唇から小さな声が漏れる。
「よかった。兄様に嫌われたんじゃなくて」

そうやってなく少女を途端に愛おしく感じた。
どこか姉を思わせる容姿がその気持の根底を支えている気がした。
だとすれば少女を寄越したの思い通りかもしれない。

この愛おしさが今はまだ虚栄だとしても僕らはこれから家族になる。

「はじめまして、僕はユウキといいます。ユウキ・G4-d013。今は夢見として142番の神様を担当させてもらってる」
そういって右手を差し出した。

「エ、エリカです。エリカ・G5-d003。第1アカデミー出身で、今は10年目です。今年から街のハイスクールに通うことになってます」
彼女はおずおずと僕の手をにぎる。

深く長い握手を交わしたあと、どちらからともなく和やかに笑った。

***

995年、その日は995年の4月2日だ。
姉さんが世界から完全にいなくなった日。そしてエリカと出会った日。
僕はこの日を決して忘れないと心に決めている。
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