偶像は神に祈る夢をみる

なめこ玉子

文字の大きさ
22 / 30

ミカガミシンヤの物語 5

しおりを挟む
寝覚めは最悪だった。昨日あんなものを見たのだ。
壊れた人形の表情が、まるで人間のそれに見えて頭から離れない。

あの、毛むくじゃらの生き物はなんだろうか?
人語を解し、人のように二本の足で地に立つそれは獣人と表現するのがしっくりときた。ここは本当に俺のいた世界のなれの果てなのか?

そんな疑問すら沸いた。

TVをつける。シバ神父が用意してくれた家はたいそうな豪邸で、
俺は完全に持て余していた。

リビング以外に5部屋もあるが、
俺は一番小さいこの部屋を選んで、ほとんどの時間をここで過ごしている。
このテレビもリビングにあったものを運び込んでいた。

TVをつけてニュースを見る。
探すのはもちろん昨日のあれだ。
チャンネルを回すとそれっぽい見出しに目が留まる。

連続殺人八件目。
警察、未だ犯人の見当もつかず。

事件現場とされる場所。
そして被害者とされる人間の顔写真。
どちらも見覚えがあるものだった。

いや、そこじゃない。俺はある事実に気が付き背筋が凍る。
『被害者』?人なのか?あれはやっぱり人なのか?

あの獣人の言葉がよみがえる。
『これは人間だよ。正しくは、この街で人間とされているもの』
あれはやっぱり人なのか?

同時に思う。今まであってきた人間にも、あれと同じ人間がいたのだろうか?
つまり、まるで機械仕掛けの人形のような…。

ハッと有ることに気づいて空間に情報デバイスを立ち上げる。
ユウキに習った通りに順を追って操作すると無事に電話が立ち上がる。

俺は迷わずコールボタンを押した。

「はい、もしもし」
電話に出た少年の声を聴いて俺はつばを飲み込んだ。

「ユウキか?」
「はい、そうですけど。何か用事ですか?」

「敬語」
「?」
「敬語はやめろ。友達だろ」
「あっと、何か用?」
彼は律義に言い直す。

「確かめたいことがあるんだ。この街の人間の中には機械みたいな体でできてるやつがいたりするのか?」

「?話の意味が」
ユウキの反応をみるに、彼はそれを認識していないらしい。

あのへんな生き物に担がれた?
そんな風にも考える。だが、何の為に?

「ユウキ、変な話かもしれないが答えてほしいんだ」
そこで一度言葉を切る。少しためらってそれでも言葉にした。
「君は前に君たちには感情がないって言ったよね。それはもしかして、君たちの体は機械でできているってことなのか?」

「……」
答えを待つ少しの沈黙がやけに長く感じる。
それから電話越しにユウキがクスクスと笑う声が聞こえてきた。

「何を言うかと思えば、僕たちの体はちゃんと有機物でできてるよ」

俺は安堵の息をつく。
「変なこと聞いて悪かった。また後でな」
それだけ言って、電話を切った。

獣人は『この街の全部がそうってわけじゃない』とも言っていた。
ユウキの言葉を信じるなら少なくとも、彼はじゃない。

じゃあ、ユウキの妹は?シバ神父、リサはどうだろう?

俺は?

背筋が凍って考えるのを拒絶する。
だが、確かめないわけにはいけない。

この突拍子のない事実を見過ごして平穏に暮らすことなどできようもない。
気がくるって狂気に押しつぶされる前に、
俺はナイフを探して手に取る。

その刃を自分の指に押し当てると、血が滲みだした。
その光景に安堵する。俺はじゃない。

安堵と共に漠然とした疑問がわく。
この街はなんなんだ?本当に俺たちの世界の延長線上にあるのか?

これまで普通すぎるぐらいに普通に見えたこの街が、
いびつな人工物にさえ見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...