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ミカガミシンヤの物語 4
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裏通りは人気が全くなくて、夜の闇だけが潜む。
意外なことかもしれないが俺は、
この町に来て護衛をつけられたことがない。
この世界の人間はあれだけ俺を神様だなんだと持ち上げるのにだ。
シバ神父に一度尋ねてみたことがある。
「この街の誰が神様を傷つけられるでしょうか?」とのことだ。
馴染みがない街で通り過ぎる夜道は、少し不気味だった。
それでも俺の心持は明るいことには違いがない。
この街の人間はちゃんと心がある。そう思えたからだ。
永い眠りから覚めてはじめて、一人じゃない気がした。
同時に彼らが自分たちを感情のない人間だという気持ちが、
ますますわからなくなる。
人にあんなことを思い込ませることができる教会の支配力を不気味に感じる。
ユウキに友達になろうと提案したのは、
少しでも彼に自分の自由意思を感じてほしかったからだ。
ただの思い付きだったが、
この世界に友人ができるのは自分にとっても悪くない話だ。
街灯が行く先を照らす。久々に表れた光に俺は安堵の息を漏らす。
同時に視界の端に、何かが映り込む。
「…人?」
最初は倒れている人に見えた。そして次に死体だと思った。
実際にそれは人の形をしていた。ただし、頭にあたる部分は存在しない。
まるでもぎ取られた様だった
「よくできてるだろ。まるで人間みたいだ」
街灯に照らされる死体のようなものの更に向こう、闇の中から声がして、
心臓が鼓動をあげる。
闇からはぬるりと、フードを深くかぶった小さな子供ほどの生き物が姿を現す。
「実際に、生きてるのかも。僕にはわかんないけどね」
生き物は毛におおわれた腕で何かをつかんでいる。
あきらかにこの体から引きはがされた頭に見えた。
「死んでるのか?」
バカげた質問だ。だが俺はそれでもそう尋ねたかった。
「そうだね。まっ、これが仮に生きていたのだとすればだけど」
生き物は頭をそっと、体のそばに置く。
「あんたはどう思う?」
街灯に照らされて、こちらを向くそれの風貌が改めてはっきりと見えた。
子供ぐらいの背丈、毛におおわれた顔。
まるでファンタジー小説の獣人のようないでたちだ。
「あんた、最近目覚めた神様ってやつだろ?」
あっけにおられる俺に向けられる『神様』の言葉には、
尊敬のかけらもこもっていない。
「あんたにはこれがどうみえるんだ?」
続けざまに尋ねられて、俺はようやくその物体をまじまじと見ることになった。
一見人のように見える。いや、完璧に人なのだ。
ただ、そのもぎとられた頭からは血の一滴すら滴っていなかった。
代わりに、傷口から覗いているのは何かのパーツのようなもの。
あたりにも似たような金属片が散らばっている。
「なんだそれは?精巧な機械仕掛けの人形か何かか?」
「なるほど、そうみえるか」
生き物はふむふむと頷いた。
「だけどこれは人間だよ。正しくは、この街で人間とされているもの」
赤い目が不気味に光る。
俺の脳裏にユウキの言葉がよぎる。僕たちには感情がない、そう語る彼の表情が。
「安心しなよ。この街にいる全部がそうってわけなじゃい。ただこの街にはこういう人間もいるのさ」
「見透かすような物言いだな?」
心を読まれたようで驚く。
「こんな耳だからね。この街の情報はよくはいってくるんだ。僕はなんだって知っている」
そうやってそれがフードの下からのぞかせる耳はウサギのように長かった。
「なあ、親愛なる神様よ」
それは挑発するように言った。
「覚えておくといい。この街には、こんな風にいなくなったって一向にかまわない代替品のような人間が、山ほどいるってことをさ」
赤い目が再び不気味に微笑んだかと思うと、
それはその人間らしきものを引きずりながら再び闇の中に消えていった。
意外なことかもしれないが俺は、
この町に来て護衛をつけられたことがない。
この世界の人間はあれだけ俺を神様だなんだと持ち上げるのにだ。
シバ神父に一度尋ねてみたことがある。
「この街の誰が神様を傷つけられるでしょうか?」とのことだ。
馴染みがない街で通り過ぎる夜道は、少し不気味だった。
それでも俺の心持は明るいことには違いがない。
この街の人間はちゃんと心がある。そう思えたからだ。
永い眠りから覚めてはじめて、一人じゃない気がした。
同時に彼らが自分たちを感情のない人間だという気持ちが、
ますますわからなくなる。
人にあんなことを思い込ませることができる教会の支配力を不気味に感じる。
ユウキに友達になろうと提案したのは、
少しでも彼に自分の自由意思を感じてほしかったからだ。
ただの思い付きだったが、
この世界に友人ができるのは自分にとっても悪くない話だ。
街灯が行く先を照らす。久々に表れた光に俺は安堵の息を漏らす。
同時に視界の端に、何かが映り込む。
「…人?」
最初は倒れている人に見えた。そして次に死体だと思った。
実際にそれは人の形をしていた。ただし、頭にあたる部分は存在しない。
まるでもぎ取られた様だった
「よくできてるだろ。まるで人間みたいだ」
街灯に照らされる死体のようなものの更に向こう、闇の中から声がして、
心臓が鼓動をあげる。
闇からはぬるりと、フードを深くかぶった小さな子供ほどの生き物が姿を現す。
「実際に、生きてるのかも。僕にはわかんないけどね」
生き物は毛におおわれた腕で何かをつかんでいる。
あきらかにこの体から引きはがされた頭に見えた。
「死んでるのか?」
バカげた質問だ。だが俺はそれでもそう尋ねたかった。
「そうだね。まっ、これが仮に生きていたのだとすればだけど」
生き物は頭をそっと、体のそばに置く。
「あんたはどう思う?」
街灯に照らされて、こちらを向くそれの風貌が改めてはっきりと見えた。
子供ぐらいの背丈、毛におおわれた顔。
まるでファンタジー小説の獣人のようないでたちだ。
「あんた、最近目覚めた神様ってやつだろ?」
あっけにおられる俺に向けられる『神様』の言葉には、
尊敬のかけらもこもっていない。
「あんたにはこれがどうみえるんだ?」
続けざまに尋ねられて、俺はようやくその物体をまじまじと見ることになった。
一見人のように見える。いや、完璧に人なのだ。
ただ、そのもぎとられた頭からは血の一滴すら滴っていなかった。
代わりに、傷口から覗いているのは何かのパーツのようなもの。
あたりにも似たような金属片が散らばっている。
「なんだそれは?精巧な機械仕掛けの人形か何かか?」
「なるほど、そうみえるか」
生き物はふむふむと頷いた。
「だけどこれは人間だよ。正しくは、この街で人間とされているもの」
赤い目が不気味に光る。
俺の脳裏にユウキの言葉がよぎる。僕たちには感情がない、そう語る彼の表情が。
「安心しなよ。この街にいる全部がそうってわけなじゃい。ただこの街にはこういう人間もいるのさ」
「見透かすような物言いだな?」
心を読まれたようで驚く。
「こんな耳だからね。この街の情報はよくはいってくるんだ。僕はなんだって知っている」
そうやってそれがフードの下からのぞかせる耳はウサギのように長かった。
「なあ、親愛なる神様よ」
それは挑発するように言った。
「覚えておくといい。この街には、こんな風にいなくなったって一向にかまわない代替品のような人間が、山ほどいるってことをさ」
赤い目が再び不気味に微笑んだかと思うと、
それはその人間らしきものを引きずりながら再び闇の中に消えていった。
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