28 / 30
めでたしめでたし 3
しおりを挟む
「まだ終わらないのか?」
零番宮玉座の間、その玉座に腰掛けながらも俺はいらだっていた。
「焦る必要はないさ。ここまではちゃんと上手くいっただろ?」
苛立ちをぶつけられた相手は、
ひょうひょうとした態度で返す。
実際ここまではこのデミの言った通りになった。
モグラのと名乗るこの紅目、長耳のデミと
その配下と思われる数人のデミたちを率いて、
この零番宮に押し掛けたのは一週間ほど前だ。
たった十人に満たない人数でのクーデターが
成功するはずがないと反対したが結果は逆だった。
彼の言う通り、ここの者たちは皆俺の姿を確認するや否や、
無抵抗でこの零番宮をあっさり明け渡したのである。
それはこの部屋の隅におとなしく腰掛ける天子と呼ばれる
あの偉そうな少女も例外ではない。
彼女は所謂人質だった。
「だが、もう一週間だぞ」
「ここには膨大な量のデータが蓄積されている。全てを人力で調べるのには時間がかかるのさ」
「どうだか」
吐き捨てるように言う。
こいつはこいつでどこまで信頼していいものかわからない。
「勘違いしてもらって困るよ。我々は君の部下じゃない。僕たちには僕たちの目的がある。君には君のね。それぞれの目的のために互いに利用し、協力し合う、それが約束だろう?」
「あの、調べ物があるのでしたら、私を通して彼女にお願いすればすぐにでも…」
大人しく座っていた彼女が控えめに口を開いた。
その年相応な少女の表情は依然ここで会った時とは別人のように見える。
「だ、そうだけど、どうする?」
モグラはにやにやと笑った。
「…いや、いい。引き続きお前たちで調べてくれ」
不幸にも今の俺にはこの街のどんな人間よりも、
デミたちのほうが幾分か信頼がおけた。
「安心してくれ、手は抜かないよ。君の目的は君の目的でキチンと叶えてあげるさ」
彼はそんな俺の感情を見透かして、満足そうに微笑む。
実際すべてこいつの思い通りなのだろう。
俺を協力者にするために、こいつはあんなもの俺に見せたのだ。
だが、いいように利用されてでも俺はこいつの提案を受け入れざるを得なかった。
モグラの言葉が真実ならどんな手段でもそれは成し遂げなければならない。
彼女は今もこの世界のどこかで眠っている。
俺がそうであったように、彼女もまた結晶体の中に閉じこもって生きている。
彼女に会いたかった。もう一度彼女に触れたかった。
「早くしてくれ」
その言葉を肯定するように首をすくめるデミの紅い目は
いつものように怪しく光る。
この世界がどんなに仮初の虚構であると教えられたとしても、
彼女がまだこの世界のどこかに存在しているのなら、
俺にはそれだけで生きるのに十分な理由だった。
零番宮玉座の間、その玉座に腰掛けながらも俺はいらだっていた。
「焦る必要はないさ。ここまではちゃんと上手くいっただろ?」
苛立ちをぶつけられた相手は、
ひょうひょうとした態度で返す。
実際ここまではこのデミの言った通りになった。
モグラのと名乗るこの紅目、長耳のデミと
その配下と思われる数人のデミたちを率いて、
この零番宮に押し掛けたのは一週間ほど前だ。
たった十人に満たない人数でのクーデターが
成功するはずがないと反対したが結果は逆だった。
彼の言う通り、ここの者たちは皆俺の姿を確認するや否や、
無抵抗でこの零番宮をあっさり明け渡したのである。
それはこの部屋の隅におとなしく腰掛ける天子と呼ばれる
あの偉そうな少女も例外ではない。
彼女は所謂人質だった。
「だが、もう一週間だぞ」
「ここには膨大な量のデータが蓄積されている。全てを人力で調べるのには時間がかかるのさ」
「どうだか」
吐き捨てるように言う。
こいつはこいつでどこまで信頼していいものかわからない。
「勘違いしてもらって困るよ。我々は君の部下じゃない。僕たちには僕たちの目的がある。君には君のね。それぞれの目的のために互いに利用し、協力し合う、それが約束だろう?」
「あの、調べ物があるのでしたら、私を通して彼女にお願いすればすぐにでも…」
大人しく座っていた彼女が控えめに口を開いた。
その年相応な少女の表情は依然ここで会った時とは別人のように見える。
「だ、そうだけど、どうする?」
モグラはにやにやと笑った。
「…いや、いい。引き続きお前たちで調べてくれ」
不幸にも今の俺にはこの街のどんな人間よりも、
デミたちのほうが幾分か信頼がおけた。
「安心してくれ、手は抜かないよ。君の目的は君の目的でキチンと叶えてあげるさ」
彼はそんな俺の感情を見透かして、満足そうに微笑む。
実際すべてこいつの思い通りなのだろう。
俺を協力者にするために、こいつはあんなもの俺に見せたのだ。
だが、いいように利用されてでも俺はこいつの提案を受け入れざるを得なかった。
モグラの言葉が真実ならどんな手段でもそれは成し遂げなければならない。
彼女は今もこの世界のどこかで眠っている。
俺がそうであったように、彼女もまた結晶体の中に閉じこもって生きている。
彼女に会いたかった。もう一度彼女に触れたかった。
「早くしてくれ」
その言葉を肯定するように首をすくめるデミの紅い目は
いつものように怪しく光る。
この世界がどんなに仮初の虚構であると教えられたとしても、
彼女がまだこの世界のどこかに存在しているのなら、
俺にはそれだけで生きるのに十分な理由だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる