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第1章 ダンジョン編

デススパイダーの糸

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51層の攻略が完了したことを知った冒険者ギルドでドヨメキが走った。

「さすが勇者パーティーだな。昨日のミスをもう取り返した」

「おい、違うぞ。クリアしたのは腰ぎんちゃくの方だ。それもたった2名で攻略している」

「どういうことだ」

そこに俺と楓が51層から戻ってきた。

ギルド担当のお姉さんが近寄り

「51層クリアおめでとうございます。」

「香澄さんだったかな、俺たちに相性の良いボスだったので今日クリアしてきたよ」

「やっと名前覚えてくれたのですか?」

「今まで目立つようなクリア報告はあいつらがやってただろ。話す機会もなかったしな」

「それよりも、ドロップ品の買い取りですよ」

周りから、「本当に買い取りはじまってるんだな」等の声が聞こえる。

俺はアイテムボックスから魔石やドロップ品をカウンターに並べると
彼女は、一つ一つ鑑定で確認しながら、折り畳みコンテナに分けて入れていく。

「キラースパイダーの糸、初めて見ますね。」

「あの蜘蛛、キラースパイダーって言うんだ。きつい毒を持ってたぞ。俺が持ってる毒消しは効いてくれた」

「MAPの公開はしていただけますか?」

「いいぞ。狩場の申請はさせてもらうぞ。」

「わかりました」

「その毒消しポーションってギルドに売って貰えますか?」

「無理だな。素材もそんなに在庫がない。48層でしか手に入らない」

「レシピの提供は?」

「藤田達はもう葉山の人間だ。葉山に聞いてくれ」

「了解しました」

「それでは、今日納品分はそのまま全部葉山さんにもっていけばよろしいですか」

「急いで持って行ってくれるか?糸の件で藤田と相談したい」

「了解しました。買い取り値段も決まってないの、私が行って値段の交渉もしてきます」

「頼んだよ」


俺と楓は葉山工房に向かった。

そこには藤田がいた。

「もう、住み家からの出荷作業は終わったのか?」

「午前中には終わりました」

「51層でよさげな素材があったぞ。もう少しで香澄ちゃんが持ってくる」

「楽しみですね」

そこに香澄ちゃんが台車を押しながら工房に来た。

「お待たせしました」

香澄ちゃんと受け取り専門の社員が納品書と品物を確認していく。

藤田は熊の毛皮をスルーさせて、蜘蛛の糸を早速手にしている。

「早川、来てくれ」

織物担当の早川さんが奥から急いで駆け付けた。

「うわーきれいな糸」

「詳細をみてみろ凄い効果がたかいぞ」

「防刃性、防汚性、防臭性、汚物分解、温度調整、摩擦(極小)インナーや裏地にピッタリだね」

「摩擦(極小)があるから手と足には難しそうだけど、摩擦(極大)と合わせれば使えそうだ」

「そうですね使い心地を見ながら今日中にでも試作品作ってみます。」

「急がなくていいぞ、明日は俺たち休むし、明後日は面接だからな。それよりもこの前貰った毒消しが欲しいな」

「今朝、あいつらが来て毒消しポーションを出せと言ってきたけど、その蜘蛛に強い毒性があるのか?」

「ああ、今日4回さされたな。息ができなくなるから神経性の毒だな。それで渡したのか?」

「1本200万円と言ってやったよ。そしたら引き下がったよ」

「適正価格なら10万円ってとこだな」

「素材は後10本分はあったよ」

「明々後日、48層で取ってくるよ。毒消しは作っておいてくれ」

「MPポーションも今日2本使ったので貰えないかしら」

「はいよ」

「それから、立花さんが家まで来てくれって」

「了解」

俺と楓は装備を装着したまま住み家に戻る。

冒険者の帯刀は許されている。しかし、冒険者の犯罪の罪は重い。

特に冒険者ではない人間に対する暴力の罪は重い。

いくら相手から喧嘩を売られてもだ。

冒険者は自分の身を守るために、外出する際には動画を回しっぱなしにする。

相手が冒険者だと分かっていて暴力を振るってきた場合は、自己防衛が許されている。

まあ、外で出歩く場合は帯刀して俺は冒険者だと自己主張をしておく。

武器を持っている相手に喧嘩を売ってくるような人間は少ない。

勇者パーティーの連中は酒を飲んではトラブルをよく起こしていたが、スポンサーが処理をしていたようだ。

我が家に着くと立花さんが建築業者と打ち合わせしている。

「こんばんわ」

「お疲れ様です」

「改装でも入れてくれるの?」

「大家さんに増築の話をしに行ったら、買い取って欲しいと話があったので買い取りました。
それで、ここには十文字クランのクランハウスが立ちます。
隣には、葉山の寮かできます。」

「クランハウス!!」

「そうです。葉山さんは冒険者のことあまりわかってないので私が提案しました。」

「ひと昔前に流行った、ライトノベルみたいだな」

「私の愛読書です。」

「それよりも中に入っていいか?」

「ダメですよ。もう荷物はホテルに送りました」

「じゃあ、俺たちの服は?」

「あーーー、急いでホテルに行きましょう。時間はまだ何とか間に合います。」

停めてあった黒塗りの大型ワゴン車に乗せられてホテルに向かった。
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