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さて、反省しようか。
あの後、散々弄ばれて、クタクタになるどころか湯あたりして、再び二日酔いのようになるところだった。
セルフィーユは感じるところは全て知っていると豪語しているだけあるか、凛花のいいところを簡単に探り当てて、何度も穿ち果てさせるのだ。鳴かされ続けて涙さえ出そうになる程攻められて、一体何度達したことか。
後ろからでは物足りず、前を向かせて何度も口付けながら、凛花のいいところを当て続ける。べッドで押し倒されるよりずっとセルフィーユを近くに感じて、果てるまで交わり続けた。
実際果てた。
「凛花、これもいかがですか。美味しいですよ」
セルフィーユは胡麻を擂るように、多種類の色取り取りな果物が乗った皿を差し出してくる。どこのベルサイユの食堂?と問いたくなるような、豪華な長机に、美しい柄の派手な食器やグラス類の並ぶ部屋に通されて、凛花はもぐもぐと肉を頬張った。
まだお肉食べてるから果物いらない。
結局果てた後、お腹が空きすぎてぐるぐる鳴ったまま気を失いそうになったわけである。くったりしすぎた凛花に、セルフィーユは本気で焦ったようで、急いで食事の用意をしてくれた。
その食事がまた豪華で、誰がそれ全部食べるんですかね?と言う量で閉口したわけだが。
食堂の豪華な長机の真ん中を陣取って、対面式で食事をすることになり、セルフィーユは自分が食べるより、凛花がもぐもぐ食すのを見守っている。
豪華絢爛なお料理は種類がたくさん。もりもり食べすぎてはお腹がぽっこりしてしまう。
用意された服は手伝いのいらない服だったが、ウエストが締まったスカートがふんわりしたドレスなので、食べすぎたらウエストがはち切れてしまうかもしれない。それは避けたい。
食事を運んでくるのは一人の執事のような男性だが、黒の燕尾服のような、尾が長い服を着ていた。セルフィーユ以外に初めて見た人なのだが、目が悪いのか黒の鉢巻のような細い布で目元を隠し、後ろで結んでいた。髪の毛も真っ黒で背中まである毛をまとめている。全身真っ黒な方だ。
その男性が料理を運んできてくれる。目隠しをしているのに、見えているのか場所を覚えているのか、躊躇なく机に皿を音も立てずに置いた。
「美味しいですか?凛花」
「美味しいです」
セルフィーユは食べ物を口にしないまま、ただただ凛花の食事を見守るつもりだ。もうくったりしないから、セルフィーユも食べて欲しい。
セルフィーユは普段はまるで耳がしな垂れた子犬のようだった。獣のように牙をむくのは、いつでも襲うときだけである。今は全く別人のように、凛花の空腹具合を心配している。
「お口に合って良かったです。どれもあなたが好きなものを用意させましたが、時間が経っていますから好みが変わっていないか心配しました」
セルフィーユは安堵の笑みを向けてきたが、凛花はふと首を傾げた。
「時間が経ってるって、どれくらい経ってるんですか?」
その問いに、セルフィーユは微かに表情を曇らせた。セルフィーユの言うラキティスと言う人がいなくなったであろう、それから長く時間が経ったのだろうが、こちらに連れてこられただけで、詳しい話は聞いていない。
セルフィーユは悲しげにして瞼を下ろすと、ゆっくりとその長いまつ毛を上げて、小さく微笑んだ。
「数え切れないほど長い月日ですよ」
長い銀の髪がするりとたゆたう。それが哀愁を漂わせた。
食事を終えると、結局元の部屋に戻されてしまった。しかもセルフィーユは凛花を歩かせることなく、一瞬で場所と場所を移動してしまうので、あの食堂がどこにあるか分からない。
「はあ、困ったなあ」
あんな風に悲しげに笑われては、深く追求しにくい。その儚げな仕草はまるで映画のワンシーンのよう。何のエフェクト。セルフィーユの周囲だけ空気が変わったかのように、絵になる一コマだった。
いやあ、美人だよね。その辺歩いていたら、間違いなく勢いよく振り向くレベル。いるんだなあ、男性であんな美人。かと言って女性にも見えない。何せ身長あるし、意外にガタイがいい。
とりあえずお腹がいっぱいになったので落ち着いたが、さてこれから一体どうしたものか。
セルフィーユは移動してこの部屋に来たのに、なぜか戻りは扉から出て行った。謎だ。去り際しっかり人の唇にセルフィーユのそれを合わせて、「あとでまた来ますね」と獣の表情で言った。
ここに来てどれくらい経っているのか分からないが、いるよりセルフィーユに弄ばれている時間の方が長い気がする。考えると頰がほてってくるようだ。
子犬のように可愛くなるくせに、脱ぎ出したら止まらない。
「お風呂でだって、お風呂でだってっ」
いつの間にか腹ばいにされ、広げられた足の間にセルフィーユの雄々しい分身が入り込むのを凛花は感じていた。
セルフィーユが打ち付ける音が湯殿に響く。それだけでなく、セルフィーユと繋がっているところから、ぐちゅぐちゅといやらしい音が溢れているのが耳に入った。
花蜜は溢れて太ももに流れ、滴り落ちるほどセルフィーユの硬く太い楔が凛花の洞房を刺激し、擦り続けたのだ。
深く突き刺され続けて花弁は開ききってしまった。凛花の洞房はセルフィーユの形を覚え、咥えたまま離そうとしない。
「うわああっ、流されすぎ!」
凛花は頭を抑えると、もんどり打つようにベッドに飛び込んだ。飛び込んだがすぐに飛び起きた。このベッドにもその記憶が新しい。
「大体人違いだからね。誰よ。ラキティスさんって。いなくなっちゃったとして、身代わりはダメでしょ!?」
その人と自分は余程顔が似ているのだろうか。ずっと似た人をセルフィーユは探していたに違いない。そうして凛花を見て、そのラキティスに似た凛花をここに連れてきた。
「しっくりくるね」
凛花はベッドからソファーに座り直して、やはりもう一度立ち上がるとクローゼットに入ったスーツに着替え直す。
「防御力の低い服を着てるから悪いんだよ。私のスーツはパンツスーツ」
着慣れたスーツに足を突っ込みながら、凛花ははっとして片足を突っ込んだまま急いで鞄に手を伸ばした。忘れていたよ、携帯。スマフォ。私の電話!
「イエス、圏外!」
スマフォを見れば圏外で、全くネットも通じない。一縷の望みは一瞬で絶える。凛花は座り込んで頭を抱えた。
いやー、どうしようかな。海外だとして連絡もつけられないね。
考えたくないが、ここは夢ではない。お風呂も入ってお腹もいっぱい。元気に動けばさすがに夢ではないと考え始める。ならばここはどこだと言うのか。そしてあのセルフィーユの不思議な魔法はどう説明つけるのか。
「冷静になろうよ、凛花」
一人呟いて凛花は立ち上がった。食堂には他の人間がいたわけだし、他にも誰かがいるだろう。シェフやベッドメイキングの人もいるはずである。この部屋のベッドも綺麗になっていたのだから、誰か部屋の掃除をする人がいるだろう。あれだけ色んなことされても綺麗になってるしね。
「家探し。あわよくば外に出る!」
そう決心して、凛花は鞄を片手に再び廊下へ出ることにした。
長い廊下はどの階も同じ。
階段を降りると廊下になり、そこが一階かと思えばまた別の場所に階段がある。螺旋階段を降りると左に向かっているようにも思える。方向が分からなくなり、再び廊下を歩いて螺旋階段を降りる。不思議な作りで、先ほどいた階が何階だったかも分からなくなった。
結構下りてきたが螺旋状の階段だったため階数が分かりにくい。部屋に戻れと言われても、もう戻れない気がする。
きょろきょろと周囲を見回したが、誰もいない。前見た不思議な丸い鳥みたいなモンスターの姿もなかった。やっと辿り着いた広い場所。おそらくエントランスには何もなく、ホテルのカウンターのようなものもない。そして、エントランスには大きな扉があった。扉の雰囲気から外に出られる扉だと思われる。しかし、玄関扉は観音開きだが、高さとサイズが普通の家とは違った。
「これ、開けられるのかな…」
あんぐりと口を開けながら見上げた扉は、凛花の身長の三倍、いや四倍は軽くある。飾りの石細工が豪華な扉は、果たして一人で開けられる重さなのだろうか。
「えいやっ」
気合いを入れて扉を押すと、ギギギ、と大仰な音を立てて扉がゆっくりと開いた。重さはあるが力を入れれば何とか開くようだ。自分一人が通れるくらい開けて、そっと隙間を覗くと、目の前は広い石畳の踊り場のような場所になっていた。階段が直線上にあり、降りられるようになっている。
踊り場の先は一本道の石畳がずっと先まで続いていた。庭園のように見えるが、先には門も何もない。一本道の石畳は黄色い花に囲まれており、それがずっと先まで続いている。遠目に湖が見え、更に奥は山になった。標高が高いのか、山の上に作った建物みたいである。
凛花はハイヒールで階段を降りると、その石畳の一本道へ足を踏み入れた。
「すごいなー。綺麗な道ー」
黄色の花は何の種類か、タンポポのような背丈の花が一面咲き誇っている。
実家の近くで良く見た、菜の花畑のようだ。懐かしい色を見て、ほんのり寂しさも感じる。最近実家に帰っていないのを思い出した。
「ずっと忙しかったからなあ」
暇になったし一度は帰ろうかと思うが、その前にどうやって帰るか本気で考える。
階段を歩いていた感じ人気は全くなかった。黄色の花畑を少し進んで建物を振り返ると、凛花は、うわっ、と驚嘆の声をあげた。
ホテルかと思ったら、お城だった。
山を背景に巨大な城が立ちはだかっている。そう見えたのは、まるで山に行く道を遮るように城だけが立っていたからだ。周囲には囲む柵や壁がなく、山の上にそのまま移動したように、ぽつねんと城だけがあった。周囲は黄色の花で囲まれて、何とも不思議な作りをしている。
部屋のベランダから見たのでは分からなかったが、城は巨大で、至る所が塔のようになりとんがった屋根を持っている。この広さならば人がかなりいるのではないだろうか。お掃除だけでも何人必要か考えてしまう。
しかし人気はなく、城の外も花畑があるだけで、どうにも奇妙な雰囲気がした。
「街とかもないのかなあ」
湖のそばに行けば何かあるだろうか。ここから見える湖は湖畔が見えない。若干山になっているようで、湖のほとりは隠れて見えなかった。
「凛花!」
とりあえず歩いてみようと進んだ矢先、後ろから届く声に肩をびくりと上げる。セルフィーユがいつの間にか真後ろにいて、凛花は一瞬飛び上がりそうになった。扉の開く音すらしなかったので、セルフィーユは一瞬で外に来たに違いない。
「何か、ありましたか??部屋が気に入りませんか??」
勢いよくそう言われて、つい後ずさる。セルフィーユは憂い顔で焦ったように凛花に腕を伸ばした。
「いえ、あの。そう、湖見たいなって。窓から見えたので」
「湖、ですか」
セルフィーユは、明らかに安堵の表情を見せた。そしてすぐに微笑むと、ゆるりと細目にする。
うわ。威力。
何の威力って、それはもう、美形の威力ですよ。どうしよう、綺麗すぎて直視できないんですけれど。
セルフィーユは凛花の腰にするりと腕を回すと、いきなり抱き上げた。お姫様抱っこである。
「うわっ!」
そしていつの間にか現れた白い馬の背に凛花を乗せた。その後ろをさっと乗って馬の腹を蹴り上げる。
「この方があなたは好きでしたから」
移動できるのにどうして馬を使うのかと思ったら、どうやらラキティスさんは馬に乗るのが好きだったらしい。馬の背は結構高めで、走り出すと風を切った。ナイトウェアだったらかなり冷えただろう。スーツを着ていたので風を受けてもそこまで寒くはなく、広大な花畑を走る馬の背はすこぶる気持ちがいい。
「綺麗ですね」
「あなたが好きだった花ですよ」
セルフィーユは耳元で囁くように言った。あくまでラキティスイコール自分らしい。
ラキティスさんをさぞかし大切にしていたのだろう。セルフィーユは凛花が部屋からいなくなる度、急いで探しにくる。まるであの部屋を出たことにすぐ気付くように。
「この辺りがあなたのお気に入りでした」
セルフィーユは馬の脚を止めると、凛花を促した。視線の先は湖で、山なりの花畑から一望できる。
「わああ、きれいーっ」
ターコイズブルーの湖は意外に広く、遠目に見える山際まで広がっている。湖を挟むように山が連なっているようで、湖の先には川があるのかもしれない。
「まだ雪が残っていますから、少し冷えるでしょう」
言って、セルフィーユは馬から降りて自分のマントを取ると、凛花を馬から下ろし、その肩にマントを被せた。マントはセルフィーユの背に合っているので結構長い。凛花が羽織ると地面に引きずってしまうので、凛花はすぐに持ち上げた。黄色の花の花粉が白のマントについたら絶対とれなくなる。
「ふふ。大丈夫ですよ。花粉がついても気にしないでください」
セルフィーユは朗らかに笑んでくる。そうして、愛しそうに凛花の頰を撫でて額に口付けた。
「あ、あわわ」
「汚れなど大したことではありませんよ。あなたはそうやっていつも気にして、変わりないですね」
緩やかな笑みは、他でもないラキティスさんに向ける笑顔だろう。自分にではない。
「あの、私はラキティスって名前でもないですし、その人でもないです」
夢ではないのならば早々に帰らなければならない。早めに誤解を説いて、帰り道を聞く方がいい気がした。だからはっきり言った。自分はあなたの求めているラキティスではないと。
「いいえ、あなたは私の知っているあなたですよ」
しかしセルフィーユは目線を逸らすことなく、はっきりとそう言った。
「ずっと探していたのです。あなたがいなくなってどれくらい経ったことか。どこかにいると探し続けて、やっとあの地で会えたのです。間違いなどではありません。凛花。あなたは私が探していた、大切な人です」
セルフィーユは凛花の頰に触れると、壊れ物に触れるように優しく撫でて、ゆっくりと凛花を包み込んだ。
「あなたは私だけのものです。もう離したりはしません」
セルフィーユの言葉は、儚くも力強い声音を持っていた。
あの後、散々弄ばれて、クタクタになるどころか湯あたりして、再び二日酔いのようになるところだった。
セルフィーユは感じるところは全て知っていると豪語しているだけあるか、凛花のいいところを簡単に探り当てて、何度も穿ち果てさせるのだ。鳴かされ続けて涙さえ出そうになる程攻められて、一体何度達したことか。
後ろからでは物足りず、前を向かせて何度も口付けながら、凛花のいいところを当て続ける。べッドで押し倒されるよりずっとセルフィーユを近くに感じて、果てるまで交わり続けた。
実際果てた。
「凛花、これもいかがですか。美味しいですよ」
セルフィーユは胡麻を擂るように、多種類の色取り取りな果物が乗った皿を差し出してくる。どこのベルサイユの食堂?と問いたくなるような、豪華な長机に、美しい柄の派手な食器やグラス類の並ぶ部屋に通されて、凛花はもぐもぐと肉を頬張った。
まだお肉食べてるから果物いらない。
結局果てた後、お腹が空きすぎてぐるぐる鳴ったまま気を失いそうになったわけである。くったりしすぎた凛花に、セルフィーユは本気で焦ったようで、急いで食事の用意をしてくれた。
その食事がまた豪華で、誰がそれ全部食べるんですかね?と言う量で閉口したわけだが。
食堂の豪華な長机の真ん中を陣取って、対面式で食事をすることになり、セルフィーユは自分が食べるより、凛花がもぐもぐ食すのを見守っている。
豪華絢爛なお料理は種類がたくさん。もりもり食べすぎてはお腹がぽっこりしてしまう。
用意された服は手伝いのいらない服だったが、ウエストが締まったスカートがふんわりしたドレスなので、食べすぎたらウエストがはち切れてしまうかもしれない。それは避けたい。
食事を運んでくるのは一人の執事のような男性だが、黒の燕尾服のような、尾が長い服を着ていた。セルフィーユ以外に初めて見た人なのだが、目が悪いのか黒の鉢巻のような細い布で目元を隠し、後ろで結んでいた。髪の毛も真っ黒で背中まである毛をまとめている。全身真っ黒な方だ。
その男性が料理を運んできてくれる。目隠しをしているのに、見えているのか場所を覚えているのか、躊躇なく机に皿を音も立てずに置いた。
「美味しいですか?凛花」
「美味しいです」
セルフィーユは食べ物を口にしないまま、ただただ凛花の食事を見守るつもりだ。もうくったりしないから、セルフィーユも食べて欲しい。
セルフィーユは普段はまるで耳がしな垂れた子犬のようだった。獣のように牙をむくのは、いつでも襲うときだけである。今は全く別人のように、凛花の空腹具合を心配している。
「お口に合って良かったです。どれもあなたが好きなものを用意させましたが、時間が経っていますから好みが変わっていないか心配しました」
セルフィーユは安堵の笑みを向けてきたが、凛花はふと首を傾げた。
「時間が経ってるって、どれくらい経ってるんですか?」
その問いに、セルフィーユは微かに表情を曇らせた。セルフィーユの言うラキティスと言う人がいなくなったであろう、それから長く時間が経ったのだろうが、こちらに連れてこられただけで、詳しい話は聞いていない。
セルフィーユは悲しげにして瞼を下ろすと、ゆっくりとその長いまつ毛を上げて、小さく微笑んだ。
「数え切れないほど長い月日ですよ」
長い銀の髪がするりとたゆたう。それが哀愁を漂わせた。
食事を終えると、結局元の部屋に戻されてしまった。しかもセルフィーユは凛花を歩かせることなく、一瞬で場所と場所を移動してしまうので、あの食堂がどこにあるか分からない。
「はあ、困ったなあ」
あんな風に悲しげに笑われては、深く追求しにくい。その儚げな仕草はまるで映画のワンシーンのよう。何のエフェクト。セルフィーユの周囲だけ空気が変わったかのように、絵になる一コマだった。
いやあ、美人だよね。その辺歩いていたら、間違いなく勢いよく振り向くレベル。いるんだなあ、男性であんな美人。かと言って女性にも見えない。何せ身長あるし、意外にガタイがいい。
とりあえずお腹がいっぱいになったので落ち着いたが、さてこれから一体どうしたものか。
セルフィーユは移動してこの部屋に来たのに、なぜか戻りは扉から出て行った。謎だ。去り際しっかり人の唇にセルフィーユのそれを合わせて、「あとでまた来ますね」と獣の表情で言った。
ここに来てどれくらい経っているのか分からないが、いるよりセルフィーユに弄ばれている時間の方が長い気がする。考えると頰がほてってくるようだ。
子犬のように可愛くなるくせに、脱ぎ出したら止まらない。
「お風呂でだって、お風呂でだってっ」
いつの間にか腹ばいにされ、広げられた足の間にセルフィーユの雄々しい分身が入り込むのを凛花は感じていた。
セルフィーユが打ち付ける音が湯殿に響く。それだけでなく、セルフィーユと繋がっているところから、ぐちゅぐちゅといやらしい音が溢れているのが耳に入った。
花蜜は溢れて太ももに流れ、滴り落ちるほどセルフィーユの硬く太い楔が凛花の洞房を刺激し、擦り続けたのだ。
深く突き刺され続けて花弁は開ききってしまった。凛花の洞房はセルフィーユの形を覚え、咥えたまま離そうとしない。
「うわああっ、流されすぎ!」
凛花は頭を抑えると、もんどり打つようにベッドに飛び込んだ。飛び込んだがすぐに飛び起きた。このベッドにもその記憶が新しい。
「大体人違いだからね。誰よ。ラキティスさんって。いなくなっちゃったとして、身代わりはダメでしょ!?」
その人と自分は余程顔が似ているのだろうか。ずっと似た人をセルフィーユは探していたに違いない。そうして凛花を見て、そのラキティスに似た凛花をここに連れてきた。
「しっくりくるね」
凛花はベッドからソファーに座り直して、やはりもう一度立ち上がるとクローゼットに入ったスーツに着替え直す。
「防御力の低い服を着てるから悪いんだよ。私のスーツはパンツスーツ」
着慣れたスーツに足を突っ込みながら、凛花ははっとして片足を突っ込んだまま急いで鞄に手を伸ばした。忘れていたよ、携帯。スマフォ。私の電話!
「イエス、圏外!」
スマフォを見れば圏外で、全くネットも通じない。一縷の望みは一瞬で絶える。凛花は座り込んで頭を抱えた。
いやー、どうしようかな。海外だとして連絡もつけられないね。
考えたくないが、ここは夢ではない。お風呂も入ってお腹もいっぱい。元気に動けばさすがに夢ではないと考え始める。ならばここはどこだと言うのか。そしてあのセルフィーユの不思議な魔法はどう説明つけるのか。
「冷静になろうよ、凛花」
一人呟いて凛花は立ち上がった。食堂には他の人間がいたわけだし、他にも誰かがいるだろう。シェフやベッドメイキングの人もいるはずである。この部屋のベッドも綺麗になっていたのだから、誰か部屋の掃除をする人がいるだろう。あれだけ色んなことされても綺麗になってるしね。
「家探し。あわよくば外に出る!」
そう決心して、凛花は鞄を片手に再び廊下へ出ることにした。
長い廊下はどの階も同じ。
階段を降りると廊下になり、そこが一階かと思えばまた別の場所に階段がある。螺旋階段を降りると左に向かっているようにも思える。方向が分からなくなり、再び廊下を歩いて螺旋階段を降りる。不思議な作りで、先ほどいた階が何階だったかも分からなくなった。
結構下りてきたが螺旋状の階段だったため階数が分かりにくい。部屋に戻れと言われても、もう戻れない気がする。
きょろきょろと周囲を見回したが、誰もいない。前見た不思議な丸い鳥みたいなモンスターの姿もなかった。やっと辿り着いた広い場所。おそらくエントランスには何もなく、ホテルのカウンターのようなものもない。そして、エントランスには大きな扉があった。扉の雰囲気から外に出られる扉だと思われる。しかし、玄関扉は観音開きだが、高さとサイズが普通の家とは違った。
「これ、開けられるのかな…」
あんぐりと口を開けながら見上げた扉は、凛花の身長の三倍、いや四倍は軽くある。飾りの石細工が豪華な扉は、果たして一人で開けられる重さなのだろうか。
「えいやっ」
気合いを入れて扉を押すと、ギギギ、と大仰な音を立てて扉がゆっくりと開いた。重さはあるが力を入れれば何とか開くようだ。自分一人が通れるくらい開けて、そっと隙間を覗くと、目の前は広い石畳の踊り場のような場所になっていた。階段が直線上にあり、降りられるようになっている。
踊り場の先は一本道の石畳がずっと先まで続いていた。庭園のように見えるが、先には門も何もない。一本道の石畳は黄色い花に囲まれており、それがずっと先まで続いている。遠目に湖が見え、更に奥は山になった。標高が高いのか、山の上に作った建物みたいである。
凛花はハイヒールで階段を降りると、その石畳の一本道へ足を踏み入れた。
「すごいなー。綺麗な道ー」
黄色の花は何の種類か、タンポポのような背丈の花が一面咲き誇っている。
実家の近くで良く見た、菜の花畑のようだ。懐かしい色を見て、ほんのり寂しさも感じる。最近実家に帰っていないのを思い出した。
「ずっと忙しかったからなあ」
暇になったし一度は帰ろうかと思うが、その前にどうやって帰るか本気で考える。
階段を歩いていた感じ人気は全くなかった。黄色の花畑を少し進んで建物を振り返ると、凛花は、うわっ、と驚嘆の声をあげた。
ホテルかと思ったら、お城だった。
山を背景に巨大な城が立ちはだかっている。そう見えたのは、まるで山に行く道を遮るように城だけが立っていたからだ。周囲には囲む柵や壁がなく、山の上にそのまま移動したように、ぽつねんと城だけがあった。周囲は黄色の花で囲まれて、何とも不思議な作りをしている。
部屋のベランダから見たのでは分からなかったが、城は巨大で、至る所が塔のようになりとんがった屋根を持っている。この広さならば人がかなりいるのではないだろうか。お掃除だけでも何人必要か考えてしまう。
しかし人気はなく、城の外も花畑があるだけで、どうにも奇妙な雰囲気がした。
「街とかもないのかなあ」
湖のそばに行けば何かあるだろうか。ここから見える湖は湖畔が見えない。若干山になっているようで、湖のほとりは隠れて見えなかった。
「凛花!」
とりあえず歩いてみようと進んだ矢先、後ろから届く声に肩をびくりと上げる。セルフィーユがいつの間にか真後ろにいて、凛花は一瞬飛び上がりそうになった。扉の開く音すらしなかったので、セルフィーユは一瞬で外に来たに違いない。
「何か、ありましたか??部屋が気に入りませんか??」
勢いよくそう言われて、つい後ずさる。セルフィーユは憂い顔で焦ったように凛花に腕を伸ばした。
「いえ、あの。そう、湖見たいなって。窓から見えたので」
「湖、ですか」
セルフィーユは、明らかに安堵の表情を見せた。そしてすぐに微笑むと、ゆるりと細目にする。
うわ。威力。
何の威力って、それはもう、美形の威力ですよ。どうしよう、綺麗すぎて直視できないんですけれど。
セルフィーユは凛花の腰にするりと腕を回すと、いきなり抱き上げた。お姫様抱っこである。
「うわっ!」
そしていつの間にか現れた白い馬の背に凛花を乗せた。その後ろをさっと乗って馬の腹を蹴り上げる。
「この方があなたは好きでしたから」
移動できるのにどうして馬を使うのかと思ったら、どうやらラキティスさんは馬に乗るのが好きだったらしい。馬の背は結構高めで、走り出すと風を切った。ナイトウェアだったらかなり冷えただろう。スーツを着ていたので風を受けてもそこまで寒くはなく、広大な花畑を走る馬の背はすこぶる気持ちがいい。
「綺麗ですね」
「あなたが好きだった花ですよ」
セルフィーユは耳元で囁くように言った。あくまでラキティスイコール自分らしい。
ラキティスさんをさぞかし大切にしていたのだろう。セルフィーユは凛花が部屋からいなくなる度、急いで探しにくる。まるであの部屋を出たことにすぐ気付くように。
「この辺りがあなたのお気に入りでした」
セルフィーユは馬の脚を止めると、凛花を促した。視線の先は湖で、山なりの花畑から一望できる。
「わああ、きれいーっ」
ターコイズブルーの湖は意外に広く、遠目に見える山際まで広がっている。湖を挟むように山が連なっているようで、湖の先には川があるのかもしれない。
「まだ雪が残っていますから、少し冷えるでしょう」
言って、セルフィーユは馬から降りて自分のマントを取ると、凛花を馬から下ろし、その肩にマントを被せた。マントはセルフィーユの背に合っているので結構長い。凛花が羽織ると地面に引きずってしまうので、凛花はすぐに持ち上げた。黄色の花の花粉が白のマントについたら絶対とれなくなる。
「ふふ。大丈夫ですよ。花粉がついても気にしないでください」
セルフィーユは朗らかに笑んでくる。そうして、愛しそうに凛花の頰を撫でて額に口付けた。
「あ、あわわ」
「汚れなど大したことではありませんよ。あなたはそうやっていつも気にして、変わりないですね」
緩やかな笑みは、他でもないラキティスさんに向ける笑顔だろう。自分にではない。
「あの、私はラキティスって名前でもないですし、その人でもないです」
夢ではないのならば早々に帰らなければならない。早めに誤解を説いて、帰り道を聞く方がいい気がした。だからはっきり言った。自分はあなたの求めているラキティスではないと。
「いいえ、あなたは私の知っているあなたですよ」
しかしセルフィーユは目線を逸らすことなく、はっきりとそう言った。
「ずっと探していたのです。あなたがいなくなってどれくらい経ったことか。どこかにいると探し続けて、やっとあの地で会えたのです。間違いなどではありません。凛花。あなたは私が探していた、大切な人です」
セルフィーユは凛花の頰に触れると、壊れ物に触れるように優しく撫でて、ゆっくりと凛花を包み込んだ。
「あなたは私だけのものです。もう離したりはしません」
セルフィーユの言葉は、儚くも力強い声音を持っていた。
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