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第48章 魔法戦士の帰還
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冬の気配がじわりと街を包みはじめた頃、
俺たちのもとへ一つの知らせが届いた。
――リオンが、戦士の村での修行を終えて戻ってくるらしい。
あいつが旅立ってから、気づけば一年。
僧侶だったリオンが、「戦士になりたい」と言って旅立ったあの日が
つい昨日のことのようだ。
その日、俺たちは街の入り口でリオンの帰りを待っていた。
吐く息が白くなるほど、冬はすぐそこまで来ている。
やがて、一台の馬車がゆっくりと近づいてくる。
荷台から降り立った影を見て、俺は目を見開いた。
「……リオン?」
そこにいたのは、僧侶のローブではなく、戦士の服装を身にまとったリオン。
腰には大剣。
体はひと回り大きくなり、服の上からでも分かる厚い筋肉。
日に焼けた顔は引き締まり、精悍な雰囲気さえ漂わせている。
だが、その穏やかな笑みは、昔のままだった。
「ただいま、みんな。」
「リオン!!」
俺とレオとルナは、思わず駆け寄った。
再会の喜びが一気に胸に広がる。
そのとき、ふと馬車の中からもう一人、影が現れた。
「……ん?誰だ?」
どこか見覚えのある女戦士だった。
堂々とした立ち姿、鋭い眼差し――
戦士の村で会った、あの女戦士……サオリだ。
俺たちが状況を飲み込めずに固まっていると、
リオンが少し照れながら言った。
「紹介する。俺の妻の……サオリだ。」
「「「えええええええ!?」」」
俺たち三人の声が、見事に重なった。
リオンが“魔法戦士として戻ってきた”という噂は、
あっという間にギルド中に広がり、
その夜は自然と祝宴が開かれた。
ギルドの大広間には料理と酒が並び、冒険者たちがリオンを囲んでいる。
冒険者の転職は珍しい。
特に、僧侶から戦士への転職はほぼ前例がないらしい。
「僧侶から戦士って、どれだけ大変だったんだ?」
「魔法も剣も使えるのか?見せてくれよ!」
「どんな修行してたんだ?」
本来なら、話題はリオンの武勇伝で持ちきりになるはずだった。
――はずだったのだが。
「どうやってあんな美人を落としたんだ!?」
「出会いは!?どっちが告白した!?」
「お前、戦士の村に何しに行ってたんだよ!?」
見事に話題の中心は“嫁さん”に持っていかれていた。
一方、サオリのほうはというと――
レイナさん、ミカ、ハルカに囲まれ、完全に女子会状態だ。
「リオンさんのどこがよかったの?」
ミカが遠慮なく聞く。
サオリは少し照れながら話し始めた。
「私は、ずっと……力強くて、男らしい戦士が好きだった。。。
でも、リオンはまったく違ったタイプだった。
普段は優しくて、おっとりしていて……正直、私のタイプではなかった。」
「タイプじゃなかったのぉ!」
ミカが即ツッコミを入れる。
「でも、いざ戦いとなると……勇敢な戦士になる。
勇ましくて、判断も早くて……村でも一、二を争うほどだ。
その落差に……心が動かされてしまって。」
サオリは戸惑いながら、そう答えた。
「ギャップ萌えだーーー!!」
ミカが叫ぶと、女子会ブースは大盛り上がりだった。
***
リオンとサオリは、
アレクス・レイナ夫婦が住む家の近くに新居を借りた。
ご近所同士、すぐに打ち解けたらしい。
さらにサオリは、アレクスが設立した“冒険者養成所”で、
戦士クラスの講師として働くことになった。
最初こそ「女だから」と侮っていた生徒たちも、
初日の訓練であっという間に彼女にねじ伏せられ、
以降は誰も逆らわなくなったという。
こうして――
リオンは魔法戦士として、そして夫として、
新たな日々をこの街で歩み始めた。
俺たちのもとへ一つの知らせが届いた。
――リオンが、戦士の村での修行を終えて戻ってくるらしい。
あいつが旅立ってから、気づけば一年。
僧侶だったリオンが、「戦士になりたい」と言って旅立ったあの日が
つい昨日のことのようだ。
その日、俺たちは街の入り口でリオンの帰りを待っていた。
吐く息が白くなるほど、冬はすぐそこまで来ている。
やがて、一台の馬車がゆっくりと近づいてくる。
荷台から降り立った影を見て、俺は目を見開いた。
「……リオン?」
そこにいたのは、僧侶のローブではなく、戦士の服装を身にまとったリオン。
腰には大剣。
体はひと回り大きくなり、服の上からでも分かる厚い筋肉。
日に焼けた顔は引き締まり、精悍な雰囲気さえ漂わせている。
だが、その穏やかな笑みは、昔のままだった。
「ただいま、みんな。」
「リオン!!」
俺とレオとルナは、思わず駆け寄った。
再会の喜びが一気に胸に広がる。
そのとき、ふと馬車の中からもう一人、影が現れた。
「……ん?誰だ?」
どこか見覚えのある女戦士だった。
堂々とした立ち姿、鋭い眼差し――
戦士の村で会った、あの女戦士……サオリだ。
俺たちが状況を飲み込めずに固まっていると、
リオンが少し照れながら言った。
「紹介する。俺の妻の……サオリだ。」
「「「えええええええ!?」」」
俺たち三人の声が、見事に重なった。
リオンが“魔法戦士として戻ってきた”という噂は、
あっという間にギルド中に広がり、
その夜は自然と祝宴が開かれた。
ギルドの大広間には料理と酒が並び、冒険者たちがリオンを囲んでいる。
冒険者の転職は珍しい。
特に、僧侶から戦士への転職はほぼ前例がないらしい。
「僧侶から戦士って、どれだけ大変だったんだ?」
「魔法も剣も使えるのか?見せてくれよ!」
「どんな修行してたんだ?」
本来なら、話題はリオンの武勇伝で持ちきりになるはずだった。
――はずだったのだが。
「どうやってあんな美人を落としたんだ!?」
「出会いは!?どっちが告白した!?」
「お前、戦士の村に何しに行ってたんだよ!?」
見事に話題の中心は“嫁さん”に持っていかれていた。
一方、サオリのほうはというと――
レイナさん、ミカ、ハルカに囲まれ、完全に女子会状態だ。
「リオンさんのどこがよかったの?」
ミカが遠慮なく聞く。
サオリは少し照れながら話し始めた。
「私は、ずっと……力強くて、男らしい戦士が好きだった。。。
でも、リオンはまったく違ったタイプだった。
普段は優しくて、おっとりしていて……正直、私のタイプではなかった。」
「タイプじゃなかったのぉ!」
ミカが即ツッコミを入れる。
「でも、いざ戦いとなると……勇敢な戦士になる。
勇ましくて、判断も早くて……村でも一、二を争うほどだ。
その落差に……心が動かされてしまって。」
サオリは戸惑いながら、そう答えた。
「ギャップ萌えだーーー!!」
ミカが叫ぶと、女子会ブースは大盛り上がりだった。
***
リオンとサオリは、
アレクス・レイナ夫婦が住む家の近くに新居を借りた。
ご近所同士、すぐに打ち解けたらしい。
さらにサオリは、アレクスが設立した“冒険者養成所”で、
戦士クラスの講師として働くことになった。
最初こそ「女だから」と侮っていた生徒たちも、
初日の訓練であっという間に彼女にねじ伏せられ、
以降は誰も逆らわなくなったという。
こうして――
リオンは魔法戦士として、そして夫として、
新たな日々をこの街で歩み始めた。
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