SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~

しばたろう

文字の大きさ
53 / 61

最終章1 世界の最後

しおりを挟む
その日、この世界が――見つかった。

夏が近づくある日のことだった。
俺たちパーティは、アレクスに呼び出された。

応接室にいたのは、
アレクス。
その隣にレイナさん。
そしてギルド長。

普段なら穏やかな笑みを浮かべているアレクスの顔は、今日はひどく硬い。
何かを覚悟している――そんな目だった。

アレクスは重たい口を開く。

「今日、集まってもらったのは……
 外の世界から来た君たちに、知らせねばならないことがあるからだ。」

広間の空気がひやりと冷える。

「この世界は、今まで君たちをかくまってきた。
 本来いるはずのない君たちを
 ……理由はわからないが、深く追及せず、守り続けてきた。
 だが――それがついに“気づかれた”。」

息が止まるような静寂。

「……誰に気づかれたか。どう言えば伝わるだろうか……?」

アレクスは視線を揺らし、覚悟を決めたように言った。

「いうなれば、“神”だ。
 この世界をつかさどる存在が、君たちの存在を“許していない”。」

アレクスを含め、この世界の住民は、それが“わかる”のだという。

「近いうちに……君たちは、この世界に留まれなくなる。
 すまない。俺たちには、それを止める力はない。」

レオたちが驚きの声を上げる中、俺だけは静かだった。

(……やっぱり、そういうことか。
 こんな奇跡が、永遠に続くはずがない。)

俺は元の世界で倒れたとき、あのままなら死んでいた。
だが――誰かが、命を一時的にここへ“退避”させた。

そんな“例外”は、神……あるいはこの世界の“システム管理者”に、
いずれ修正される。

(俺たちは……もともと、ここにいてはいけない存在だったんだ。)

胸の奥で、何かが静かに落ちた。

気づけば、俺は立ち上がっていた。

「マイト?」
アレクスが驚いた声を漏らす。

俺は三人を見渡し、深く息を吸い込む。

「……いつ、別れが来てもおかしくない。
 だからまず言わせてほしい。」

部屋の空気が張りつめる。

「アレクスさん。レイナさん。
 そして、この世界の皆さんに。
 俺たちを守ってくれて、本当にありがとう。
 どうなるかわからないけど……決して忘れない。」

アレクスが微笑んだ。

「……ありがとう、マイト。
 どんな時でも、お前はお前だ。」

その横でレオが拳を握る。

「なあ……正直いまの話、よくわかってねぇ。
 けどよ、どこに行くことになろうが、俺たちは仲間だろ?
 そういう気がしてならねぇんだ。
 だから、大丈夫だ。」

リオンもルナも静かにうなずいた。

その後、俺たちは仲間にも事情を話し、
しばらくギルドに身を寄せることにした。

宿に戻り、荷物をまとめていると――

コン、コン。

部屋のドアをノックする音。

(レオか……?)

そう思ってドアを開けた瞬間。

そこに立っていたのは――

制服姿のキララだった。

一瞬、息が止まった。

「兄さん、迎えに来たよ。」

キララは微笑んでいた。
昔、最後に見たときのままの姿で。

「キララ……どうして、ここに?」

そう言いかけたところまでは――覚えている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

婚約者の番

ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...