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16:赤き森の王
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ああ、やっとだ。
わたしの愛おしい××。やっと君はわたしのものになるんだ。
一体、どれほどの歳月を耐えてきただろう? もう覚えてはいないけれど、きっと気が遠くなるほど長かったに違いない。
だって、わたしはこんなにも飢えているのだから。
何処にいるんだい? 何処に行ったら、その可愛らしい姿をわたしに見せてくれる?
彼は、大地を見渡した。
ほんの少し前に現れた、太陽のように、月のように瞬く、でも儚い煌めきは、またすぐに消えてしまう。でも、彼は落胆なんてしなかった。
それは、確固たる確信があったから。
ふふ。かくれんぼは嫌いじゃない。君を待っていた途方もない時間に比べれば、君を見つけるための時間は瞬きをする程の時間だろう。
あの憎い泥棒猫に君を奪われて、わたしがどれ程耐えてきたか。
―――でも、もう関係ない。君はわたしの腕の中だ。奪われる事なんて、あるわけがない。
さぁ、何処にいるんだい? わたしの愛おしい××。出ておいでよ。早く、わたしにその姿を見せておくれ?
とうに明かりに使っていたロウソクが切れてしまった真夜中に、『バーキニリ』は目を覚ました。
目に入るのは、普段と同じ。閑散とした部屋の風景。先程まで見ていた、胸を高揚させるものではない。
(うたた寝を……していたようだな)
一抹の寂しさを覚えた。自分は夢にまで見ているのに、あちらは全く自分の事も思い出しはしていないだろうと思って。
まだ寝ぼけている頭を、振って叩き起こす。それと一緒に感傷も叩き出す。
「………」
随分と、長いうたた寝だったようだ。ロウソクの炎は、火種さえ残らず燃え尽きている。彼の部屋に差す光は、月明かりだけだった。
「××」
何と無く、名を呼びたかった。
しかし、口から出てきたのは、別の単語。それが何とも神経を逆なでる。
「赦さぬ」
その一言は、この世のあらゆる負の感情が込められた。
憎い。恨めしい。妬ましい。怒り。嫉妬。憎悪――。
憎い――――――――――っ!!!
赦してなるものか。
―――わたしのものを横からかすめ奪ったコソ泥を。
―――愛しき名さえ口にする事を縛ったこの禁忌を。
生まれるは憎悪。湧き起るは憤怒。
嗚呼、早く。
早くこの腕に抱きしめたい。
わたしの―――。
わたしの愛おしい××。やっと君はわたしのものになるんだ。
一体、どれほどの歳月を耐えてきただろう? もう覚えてはいないけれど、きっと気が遠くなるほど長かったに違いない。
だって、わたしはこんなにも飢えているのだから。
何処にいるんだい? 何処に行ったら、その可愛らしい姿をわたしに見せてくれる?
彼は、大地を見渡した。
ほんの少し前に現れた、太陽のように、月のように瞬く、でも儚い煌めきは、またすぐに消えてしまう。でも、彼は落胆なんてしなかった。
それは、確固たる確信があったから。
ふふ。かくれんぼは嫌いじゃない。君を待っていた途方もない時間に比べれば、君を見つけるための時間は瞬きをする程の時間だろう。
あの憎い泥棒猫に君を奪われて、わたしがどれ程耐えてきたか。
―――でも、もう関係ない。君はわたしの腕の中だ。奪われる事なんて、あるわけがない。
さぁ、何処にいるんだい? わたしの愛おしい××。出ておいでよ。早く、わたしにその姿を見せておくれ?
とうに明かりに使っていたロウソクが切れてしまった真夜中に、『バーキニリ』は目を覚ました。
目に入るのは、普段と同じ。閑散とした部屋の風景。先程まで見ていた、胸を高揚させるものではない。
(うたた寝を……していたようだな)
一抹の寂しさを覚えた。自分は夢にまで見ているのに、あちらは全く自分の事も思い出しはしていないだろうと思って。
まだ寝ぼけている頭を、振って叩き起こす。それと一緒に感傷も叩き出す。
「………」
随分と、長いうたた寝だったようだ。ロウソクの炎は、火種さえ残らず燃え尽きている。彼の部屋に差す光は、月明かりだけだった。
「××」
何と無く、名を呼びたかった。
しかし、口から出てきたのは、別の単語。それが何とも神経を逆なでる。
「赦さぬ」
その一言は、この世のあらゆる負の感情が込められた。
憎い。恨めしい。妬ましい。怒り。嫉妬。憎悪――。
憎い――――――――――っ!!!
赦してなるものか。
―――わたしのものを横からかすめ奪ったコソ泥を。
―――愛しき名さえ口にする事を縛ったこの禁忌を。
生まれるは憎悪。湧き起るは憤怒。
嗚呼、早く。
早くこの腕に抱きしめたい。
わたしの―――。
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